2008年04月27日

●CO2排出量削減の足を引っ張るHPCコンピューティングセンター?

・「伊藤洋一のビジネス・トレンド」というPodcastを毎週電車の中で聞いていますが、第134回 (4/21/'08)で面白い解説をしていました。

・伊藤洋一さんによると、例えばITで紙を減らせると言ったようにITは環境問題を助けてくれるというイメージを抱いていたが、実はものすごく電力食いで、CO2排出量に影響を与えるものである。    

・現在国内電力消費の増加は工場ではなく、家庭、Office、店舗で起こっていて、PC、サーバー、ネットワーク機器といったITによる電力消費量によるものである。2006年に国内電力消費量の5%を占め(CO2排出換算で2800万トン。乗用車800万台相当とか)、これが2025年にはITの電力消費は全電力消費の20%になる。つまり2006年に約500億KW、2025年には約2,000億KWというのがITによる電力消費量。

京都議定書では日本は2008年-2012年の5年間の平均で基準年の1990年の6%のCO2排出の削減が目標になっているので、ITの電力消費増加によっては京都議定書の目標すら達成できなくなるというような解説でした。これからはいろいろな場でITの電力消費の課題が取り上げられていきそうな雲行きです。

・電力消費の点から優れているのはPCならノートPC、サーバーでは旧製品よりは低電力消費を積極的に設計に取り入れている新製品ですが、これからはネットワーク機器やストレージはもとより、コンピューター・センター全体についても乾いたゾーキンを絞るように工場並みに緻密で徹底したエネルギー管理が要求されていくことになるのではないでしょうか。

・こうした社会ニーズに対応して、4月23日に米国IBMが発表したインターネット-スケール・データ・センター向けの新システム IBM System x iDataPlexはサーバーからデータ・センターまでの課題に対する解の一つと言えるでしょう。

iDataPlexについての詳しい仕様などはこれから発表されていくと思われますが、電力大食いのWeb 2.0向けデータセンター市場とHPCのコンピューター・センター市場の二つをターゲットにしているようです。どちらもこれからのクラウド・コンピューティングに密接に関係しているところです。

iDataPlexの特徴を見ると、1Uサーバーと比較して最大40%の電力を節約でき(計算上)、ラックの水冷リアドア熱交換機(IBM Rear Door Heat eXchanger)を使うと空調による冷却不要、床面積当たり最大5倍の計算能力を詰め込むことができる等とあります。iDataPlexは受注生産によるソリューションで、受注内容毎に工場でまとめ上げられ、プラグをさせば働く状態で出荷されるようです。HPCのコンピューター・センター市場でのiDataPlexについては英文ブローシャで紹介されています。



個人的には、ついせんだってわが家のCO2排出量を大きく減らしました。家庭の都合で二台必要としていたハイオク・ガソリン車を、その必要性が薄くなったこともあってエイヤッとトヨタ プリウス1台に統合。長年のドイツ車ユーザーからの転向でしたが、試しに乗ってみたら違和感をさほど感じなかったのが最大の理由。一週間経ってもまだ燃料計がフル・スケールのままというのはなんと言ってもよい気分です。

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2008年04月22日

● Cellスピードチャレンジ 2008の審査結果

Cellスピードチャレンジ実行委員会から、Cellスピードチャレンジ 2008の審査結果がホームページで公開されています。

・このコンテストは規定課題部門(課題が「連立一次方程式の求解」)と、自由課題部門とに分かれていて、規定課題は学生のみの参加ですが、自由課題の方は学生以外も参加できるとしています。

・それぞれ上位3チームが入賞していますが、東京工業大学小長谷研究室が規定課題で第1位、自由課題で第2位と、完全優勝は逸したもののすばらしい成績です。

・3月に小長谷先生と、さる会合で雑談をしていたときにCell/B.E.のLINPACK性能はすごいとしきりに強調されていましたが、このことだったようです。

・規定の「連立一次方程式の求解」の得点は、実行時間に応じて加点する方法が用いられ、全チームの得点が公表されています。
規定課題部門の上位入賞チームは、

第1位 92 点  東京工業大学小長谷研究室
第2位 48 点  TenForks       
第3位 43 点  redb           

と、1位の小長谷研究室の得点が2位のTenForksの得点と大差です。これはおそらくCell/B.E.がプログラミングによって大きな性能を引き出せるということを示していて、たいへん工夫(苦労)しがいのあるプロセッサーと言えます。そうした点では、ベクトル・プロセッサーが世の中に出始めた頃といくぶん似ている状況なのかもしれません。
自由課題部門の上位入賞

第1位:チーム Mitochondria
「Cell Broadband Engine に対する重力多体問題計算の最適化」
第2位:チーム 東京工業大学小長谷研究室
「Cell BE プログラムの最適化手法の提案」
第3位:チーム itotlabo
「Cell を用いたクラスタシステムによる計算機合成ホログラムの高速化」
となっています。

IBMのCell/B.E.のロードマップでは、倍精度浮動小数点演算の性能が大幅に向上する計画になっているので、これからが大変楽しみなプロセッサーと言えます。

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2008年04月14日

●5.0GHzに達したPOWER6プロセッサーと水冷クラスター・スパコン Power 575

先週IBMが発表し、5月上旬(米国)に出荷されるIBM Power SystemsのハイエンドSMPサーバー Power 595には5.0GHzPOWER6プロセッサーが64コア搭載されます。

・昨年から出荷されている IBM System p 570改めIBM Power 570では、4.7GHzのPOWER6だったので、POWER6のクロックは着実に上がっている印象です。

・POWER6はコア当たり1クロックで4個の浮動小数点演算を行なうので、5GHzの場合の1コアの理論ピーク性能は4 FLO*5GHz =20GFLOPSとなります(FLO:Floating point Operation、FLOPS: Floating point Operations Per Second)。

64コアのIBM Power 595の場合の理論ピーク性能は、64*20 GFLOPS (1,280 GFLOPS)となります。IBMが発表しているLINPACK HPC性能(April 8, 2008)を見ると1,028 GFLOPSと、1 TFLOPSを超えました。ついに1ラック 1 TFLOPSのSMPサーバーの時代になったわけです。

p575 new・1ラック当たりのHPC性能で言えば、「水冷クラスター・スーパーコンピューター」として同時に発表されたIBM Power 575が圧倒的です。これは昨年の11月にSC07で展示されていたシステム(写真)ですが、きちんと約5ヶ月後に製品として発表されたわけです。

水冷クラスター Power 575に積むPOWER6は4.7GHzのプロセッサーですが、これを2Uのユニットに32コア詰め込んでいます。これだけで理論ピーク性能は 4FLO*4.7GHz*32コアの601.6 GFLOPS、LINPACK HPC性能が466.9 GFLOPSとなりますが、1ラックには14ユニット入るので、1ラックの理論ピーク性能は14*601.6 GFLOPS (8.4 TFLOPS)となります。水冷に回帰したというのは冷却効率からやむを得ないという面もあるでしょうが、HPCでますます無視できなくなってきたグリーン・テクノロジー(省エネ)を促進するという積極的な一面もうかがわれます。

・ちなみにやはり先週おこなわれた日立「SR16000」スーパーコンピューターの発表では、4.7GHzのPOWER6を積む水冷モデル「L2」に加えて、3.5GHzのPOWER6による空冷モデル「L1」を提供するとしています(共に16プロセッサー/ノード(最初16コアと書いたのは誤りでした。私の大ポカで、正しくは16プロセッサー=32コアです。(訂正:4月22日))。これが水冷と空冷の冷却能力の差かもしれません。

・ラック当たりの理論ピーク性能で水冷クラスター Power 575の上となると、13.9 TFLOPS/ラックIBM Blue Gene/Pになります。72ラックで1 PetaFLOPSの理論ピーク性能というのがBlue Gene/Pです。こちらはゆうゆう空冷です。

・ここでHPCでは忘れてならないベクトル・プロセッサー、たとえば最新のNEC SX-9と比較してみます。SX-9ではベクトルユニットのパイプライン部は3.2GHzで動作し、プロセッサーあたり102.4GFLOPSのピーク性能となっています。POWER6(5GHz)のコア当たり20.0GFLOPSという性能ですらいかにも小さく見えてしまいます。

・しかし、102.4GFLOPSの性能というのはプロセッサー内の8個のベクトルユニットの合計値なので、1ベクトルユニットあたりの性能12.8 GFLOPSというのがアーキテクチャの基本性能(1コアの性能)に相当すると言えなくもありません。そうすると12.8 GFLOPS(SX-9) 対 20.0GFLOPS(595)です。またラック当たりの性能で見ると水冷クラスター Power 575の8.4 TFLOPSに対して、SX-9のシングル・ノード システムは1.6TFLOPSですから、5倍以上の違いになります。

・ベクトル・レジスターとキャシュの性能差、メモリー・バンド幅の差ということがよく言われますが、このようにスカラー・プロセッサー・システムの演算性能の上昇傾向が続きベクトル・プロセッサーというアーキテクチャの優位性はさらに影が薄くなってきた感じです。ベクトル・プロセッサーによる大ヒットが、例えば次世代スーパーコンピューター・プロジェクトで可能かどうかも興味深いところです。

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2008年04月06日

●クラウド・コンピューティングとHPC

去年の秋からクラウド・コンピューティングという雲が世界のあちこちから湧き上がっています。IBMがクラウド・コンピューティングに積極的なせいかもしれません。

・さしずめ紅雲は中国最初の無錫(Wuxi)のクラウド・コンピューティング・センター設立 (今年2月1日発表)、エメラルド雲がアイルランドのダブリンにヨーロッパのクラウド・コンピューティング拠点設立 (今年3月19日発表)、白雲がベトナムの科学技術省(MoST)とのパイロット・プログラム(昨年の11月13日発表)といったところでしょうか。

・最近ではアメリカのジョージア工科大とオハイオ大とIBMとで、Critical Enterprise Cloud Computing Services (CECCS) を設立する(今年3月26日発表)など、今後もさらに続きそうです。

・そのさきがけが青雲(藍色雲?)のIBMのBlue Cloudイニシャティブの発表でした(昨年の11月15日)。

・青雲の志というと英語でアンビシャスになりますが、そういう意気込みがこれには感じられます。Blue Cloudイニシャティブの発表によれば、IBMアルマデン研究所のクラウド・インフラストラクチャ -- Xen、PowerVM Virtualized Linux OS image、Hadoop Parallel Workload schedulingが含まれる予定 -- がベースになり、それにIBM Tivoliがサポートされるとなっています。Web 2.0のアプリケーションを開発できる環境が短期にできあがり、スケールアウトしているインフラの複雑な管理とコスト増を削減する助けになるものだと言っています。

・それに先だって昨年10月8日に、GoogleとIBMがワシントン大学を舞台に協力するAcademic Cluster Computing Initiativeの発表はまだ記憶に新しいものです。ユーチューブにあるAcademic Cluster Computing Initiativeの内容を見ると、ワシントン大学の卒業生でGoogleのシニア・ソフトウェア・エンジニアのクリストフ・ビシグリア(まだ20代か)がワシントン大学の学生にインタビューしたところ、数千台規模のクラスターと数テラバイトのディスクへとスケール・アウトしつつある最新のシステムがもたらすものに対して非常に優秀な学生ですらきちんとしたイメージがつかめていない。そこでオープンソースの技術を使用して並列プログラムのソフトウェア開発をするためには何を準備すべきか考えたというようなことを話していました。

・これを見ると、このプロジェクトに関心を抱いたIBMがBladeCenterなどのサーバーを大量に提供するなどして一肌脱いだというのがもともとの話のようです。大発表も初めはGoogleの一社員のこんな活動から始まったというのは、なかなかまねができないところかもしれません。

星雲のシミュレーションをしている学生などがインタビューを受けていますが、これがとても生き生きしています。クリストフも全米の大学生がこのワシントン大学のクラウド・コンピューティング環境にアクセスするようになることが目標と抱負を語っているのがまたいいです。

・クラウド・コンピューティングの概念についてはいろいろ紹介されているのでそちらを見ていただくとして、Blue Cloudの発表等からHPC風に言い換えると、IBMでの起源は超並列コンピューターのIBM SP1やチェスのDeep Blue、Blue Geneスーパーコンピューター、メインフレームのSysplexテクノロジー、そしてGrid Computingの経験と実績に裏打ちされ超並列計算プログラム開発や実行、資源の管理を簡単にできるようにするインフラ環境を提供することにあるとも言えます。

・したがってワシントン大学やジョージア工科大の例のようにHPC分野が大学・研究機関向けクラウド・コンピューティングの対象分野になるのは自然なことでしょう。

・中小規模のデータセンターから大学の大規模計算センター、さらにはGoogleなどの超大型データセンターまで、動的にコンピューター資源を割り当てる仮想化技術が進み、インターネットからユーザーが必要なサービスを必要なだけアクセスできるクラウド・コンピューティング環境へ今の環境が置き換わっていくのはあんがい早い気がします。

・加えてこれがエネルギー消費を減らすグリーン・テクノロジー・モデルに該当するという重要さもあります。

日本からも早く梅雲が湧き起こらないと、これからもHPC分野のソフトウェア開発面で差をつけられそうですが、どうなんでしょうか。

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2008年03月26日

● 「T2Kシンポジウムつくば2008」が4/7に筑波大で開催

・筑波大学計算科学研究センターで4月7日(月)に「T2Kシンポジウムつくば2008」が開催されます。

・詳細についてはシンポジウムホームページに掲載されてます。
   http://www.ccs.tsukuba.ac.jp/workshop/t2k-sympo2008/
  申し込み締め切りは来週の3月31日(月)です。

・同シンポジウムの案内によると、「筑波大学では2008年6月より、超並列クラスタ型の次期スーパーコンピュータの運用を開始します。本システムは、単に筑波大学内での利用に留まらず、全国共同利用に供され、つくば地区を始めとする様々な大学・研究機関からの利用を予定しています。本シンポジウムでは、次期スーパーコンピュータの概要・運用体制・利用方法・研究展開等に関するアナウンスと、本システムを有効利用するための各種議論を行います。」とのことです。


4月初め、筑波はさぞかし春爛漫の景色に満ちているのでしょうが、花粉はどうでしょう・・

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2008年03月24日

●HPCの教育

・「スパコン使いこなせ 神大が研究者養成講座」という神戸新聞の記事によると神戸大の「第一回シミュレーション・スクール」が3月17日から5日間の合宿形式でおこなわれ、神戸大のほか愛媛大、金沢大、九州大の院生計約60人が参加したそうです。
・詳しい中味はわかりませんが合宿形式とあるので相当ハードな内容で、参加者には大きな刺激になったと思います。参加者のレベルも様々で、主催者側も苦労されたと想像できますが、有意義な試みだと思います。

日本のHPCの将来がこのところ心もとなく感じるようになってきた(?)こともあって、2/28に開催された多圏地球COEの「HPC教育に関するワークショップ」に出席したばかりですが、これは最近のHPC教育の試みについて知るよい機会になりました。
 
・このワークショップは、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻において,2003年度から開始された 「多圏地球COE」の中で、特に2004年度から開講した「並列プログラミング」など先端的な計算機環境利用のためのHPC(High-Performance Computing)教育に関するものです。

・3月末で終了するCOEですが、ここでのHPC教育はこれまでに無いチャレンジングな試みとして広く注目を集めるとともに,大きな効果をあげてきたと先のホームページで紹介されています。

。ワークショップでは、中島研吾先生(東大・理・地球惑星)が まとめと課題と題して「並列計算プログラミング」「先端計算機演習」について、古村孝志先生(東大・地震研)が「先端計算地球科学」についてそれぞれフランクでわかりやすく話されていました。

・D1の院生をターゲットにしたせいか講義も充実した内容で、このHPC教育にどれだけ力をかけて高いレベルを維持してきたのか、努力のあとがうかがわれます。

・カリキュラム内容を狭い範囲に限定せず、中島先生が強調するSMASH(Science, Modeling, Algorithm, Software, Hardware)をカバーすることを念頭に、アプリケーション中心という方針のもと優れたソース・コードを読む能力を身につけさせることにも重点を置くなど、より実践的かつ幅広い視野に立った丁寧な教育がうかがわれて、いろいろと共感できる内容でした。

・講義のボリュームが多すぎたかもしれないとか、はじめの予想に比べて講義の受講者数が少なかった、ターゲットのD1よりM1の院生が多かったためレベル設定がしにくかった等々運営面で難しい点もあったようです。

・そうはいっても、受講者の大石さん(受講時にD3)と松村さん(D3)のHPC分野の研究発表については、招待講演者のMarques氏(LBNL)も感心していたので、少なくとも少数の受講生は確実に高いレベルに達していたと思います。

・COEのHPC教育のカリキュラム内容が充実していただけに、e-ラーニングなどを利用して全国的な規模で講義や実習が出来たらいいなと思いましたが、冒頭の神戸の例を見ても、縦割りプロジェクトが普通という現状では、一朝一夕にはできないのでしょう。

上の例は大学の若手研究者(または研究者候補)を対象にしたHPC教育のアプローチですが、アプローチの両極としては
A) HPCを基礎から時間をかけてたたき込んでいくアプローチと
B) HPCのおもしろさや有用さを短期間に感じとらせ、後は本人やグループの努力にまかせるアプローチ、のふたつの方法が考えられます。「多圏地球COE」のカリキュラムは1)に近く、「シミュレーション・スクール」はもっと2)に近いように見えます。

・ 私個人のコンピュータ教育を受けた経験 ― (1) 院生時代には実験三昧、大型計算機センターにはほとんど近づかなかった。(2) それが日本IBMの新入社員教育でアセンブラー中心に連続16ヶ月ほど(技術教育だけではないが約3,000時間)詰込み教育に曝された。(3) その後On the Job Trainingと称する実務経験で先輩の指導を1-2年受けて、いちおう専門家の卵としての業務をすることを許された― から言えば、A)を最初におこない、その後でB)に入るのが自然な流れに思えます。ただこれは専門家育成を目的とする教育ですから、大学にはもっと柔軟な形があってもいいとは思います。

・HPCでよく言われる課題のひとつに、PCやワークステーション、あるいは小型SMPサーバーを使用したシミュレーションで満足している大多数のユーザー層のボトムアップ (HPCのスキルと使用システムの両面で)というのがあります。ただ、画一的なボトムアップの必要性は小さいのではないでしょうか。

・いまスーパーコンピューターを対象に、大学や研究機関でのHPCの活性化と成果を拡大することを重視するのであれば、まず研究者が自分の研究にHPCを応用できる可能性を発見できるようなHPC教育を行ない、次にはそうした中から実際にHPCに取り組む活動的な研究者が並列プログラミング、チューニングといった具体的なインプリメンテーションへと進めるように、SMASH全体について総合的に指導・支援できる、層の厚いプロフェッショナル(研究者レベル)が控えているというような、大学や研究機関を横断して存在するバーチュアルなHPC教育・指導システムが今の時代に合致していると思います。

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2008年03月15日

● 今週のセミナーから

・めっきり春らしくなってきましたが、このところの花粉症に加え、後半には治療した歯が痛み初め最低の週でしたが、どうやら復旧に向かっています。

・「ペタ超級のアプリケーション開発に向けて」の理研シンポジウムは、そんなことからやむなく欠席。

・火曜日に開催されたCell/B.E. 実践活用セミナーの方は、Terra SoftのKaiさんの米国らしい活動的な雰囲気を感じさせるよい講演でしたし、他の国内の三人の講師もそれぞれ特長を発揮したよい内容の講演でした。講師・参加者間のコミュニケーションも多かったし、総じてよいセミナーだったです。

講演資料Webサイトからダウンロードできるので、セル・プロセッサーのHPCへの応用に興味のある方は特にご推薦です。

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2008年03月10日

●2007年度 理研シンポジウム−ペタ超級のアプリケーション開発に向けて

・「ペタ超級のアプリケーション開発に向けて」をテーマにした2007年度 理研シンポジウムが今週の木・午後〜金に理研 和光本所で開催されます。

・プログラムと講演のアブストラクトも理研シンポジウムのWebサイトに掲載されていました。

・一日目は理研RSCCの報告や国内講師による講演、ベンチマーク・コンテストの表彰など。

・二日目が、次世代スーパーコンピュータプロジェクトや海外講師の招待講演、懇親会など。懇親会は当初の予定から二日目へ変更になっています。


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2008年02月24日

● TACCのRangerがフル稼働、NSFに納入

・稼働が当初の予定よりも遅れていたテキサス大学オースティン校Texas Advanced Computing Center (TACC)のRangerシステムが2月4日にフル稼働に入り、2月22日(金)にNSFに納入されるとTACCが2月22日(金)に発表しています。

理論ピーク性能は当初の仕様どうりの504 TFLOPSです。最新のTop500スーパーコンピューター・リストのピーク性能だけから言えば、LLNLのBlue Gene/Lに次ぐ2位に該当しますが、internetnews.comの記事PlayStation3ユーザーが集まって作られているFolding@Homeをいれたとすれば第3位と面白い表現をしています。

・記事では約15,000 CPU(正確には62,976 コア)を1タスクが占有するというよりは、ユーザーがプログラムを書き換えてより高い性能を引き出せるようになるまでは高々1,000 CPU程度を使うタスクが複数個走ることになると、当たり前とはいえ、書き換えをするというペタスケールへ向けての着実なスタンスが見受けられます。

・このシステム開発と4年間の運用コストについては$59M (約64億円)のNSFのアワード(NSF Track2 HPC)でまかなわれ、NSFのTeraGridの最大ノードになります。

・そのためか、90%のマシンタイムはTeraGridのユーザーによって使用され、TACCは10%のみです。TACCの分が少なさそうに見えますが、先のinternetnews.comの記事ではRangerを使用するためのウェイティング・リストは3ヶ月になるだろうと言っているので、むしろ好条件なのでしょう。

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2008年02月13日

● Cell/B.E. 実践活用セミナー 3月11日開催

Cell/B.E. 実践活用セミナーが3月11日(火)午後に日本IBMの箱崎事業所で開催されます。

・詳しくは、「Cell/B.E. 実践活用セミナー」案内ページにありますが、日本IBM、アルゴグラフィックス、フィックスターズに加えて米国のTerra Soft Solutionsの4社による講演があります。

・いずれもCell Broadband Engine (Cell/B.E.)の分野で積極的に活動を続けている4人の講師によるセミナーなので、その内容は期待できます。

・SC07での縁もあることから私もTerra Soft SolutionsのCEO カイ・スターツさんを講師にお願いしたりしたのですが、忙しいスケジュールをぬって快く来日してくれることになり、ほっとひと安心。

ということなどもあって、我田引水になりますがセミナーの内容は期待できます!

Cell/B.E.というと、毎年2月にサンフランシスコで開かれる半導体回路国際会議ISSCCで最新テクノロジーの発表をするものという記憶がありますが、今年もやってくれました。

・PCWatchの「後藤弘茂のWeekly海外ニュース」
 ISSCCに次世代Cell B.E. 45nm版が登場
 〜6GHz動作、電力を30%以上削減


で、IBM発表の内容について実に詳細でわかりやすく紹介されています。


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2008年02月11日

● 脳の研究とHPC

・ 日本の脳科学研究は世界のトップを走っていると聞いたことはあるものの、専門家でもない私にとって、脳科学はまったく未知の分野です。

・とはいえ、脳については養老孟司著の「脳の見方」(ちくま文庫1997.11.20 第11版、養老孟司著、筑摩書房 (1986.10.20))と「からだの見方」(ちくま文庫 1995.7.5 第3版、養老孟司著、筑摩書房 (1988.7))を読んで鮮烈な印象を受けた記憶があります。( )内は最初の発行日(文庫以外)です。ところで養老先生の書かれたものは今のベストセラーよりもこの頃の方が私にはずっと面白く感じられます。たとえば視覚系についての考えはその最たるものですが、著者は異なるものの、ほぼ20年後に書かれた「進化しすぎた脳」でも、どこか共通した考えが感じられるのは私の脳がそう解釈したいからなのでしょうか。

・ 「進化しすぎた脳」(ブルーバックス B-1538 2007.11.8 第9版、池谷裕二著、講談社)はこの連休にたまたま駅前の三省堂書店で買って読みました。専門家でない私には情報量がやや多く、すべて消化しきれたわけではないですが、2003年頃のアメリカ留学中にニューヨークの日本人高校生8人を相手にした脳科学講義ということもあってでしょうか、知的活気にあふれた第一章から四章までの講義と高校生との質疑応答がなかなかいい雰囲気です。やはり異環境で挑んだ30代前半の試みというのはとびっきりの勢いを持っています。

・「進化しすぎた脳」から思ったのは、脳の物理モデル・シミュレーションにそろそろ力を入れていい時期になってきたのではないかということです。たぶん脳科学の専門家ほど脳はコンピューター・シミュレーションには複雑過ぎると思われているでしょうから、ブレークするためには最初から異分野の専門家との協力が必要かも知れません。

・ スイスのBlue Brain Projectでは、Blue Geneの巨大なコンピュータ・パワーを前提に、実際の神経細胞をもとにしたNeocortical column(NCC)(大脳新皮質カラム)のシミュレーションに挑戦し、昨年11月に第1フェーズを完了しています。

・ 最先端を走っていると言われている日本の脳科学研究がベースにあれば、こうした先端的なシミュレーション分野でも日本ならではの優れた研究成果がでる可能性は高いと個人的には思っています。

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2008年02月03日

● 4.2GHzのPOWER6搭載エントリーUNIXサ―バー登場

IBMは昨年
4.7GHz POWER6搭載の中型UNIXサーバー IBM System p 570 (最大16プロセッサー・コア)、そして
4.0GHz POWER6搭載のブレード・サーバー IBM BladeCenter JS22 (4プロセッサー・コア) を発表しています。
それに続いて先週、
4.2GHz POWER6搭載エントリーUNIXサ―バー IBM System p520 (最大4プロセッサー・コア)とp550 (最大8プロセッサー・コア)を発表しました。

・IBM System pのベンチマーク・データも更新されていました。IBMのWebサイトには類似のベンチマーク性能情報があちこちにあるものの、目当てのものになかなかたどりつけないきらいがあるのですが、ここのpdfにはp520とp550のSPEC2006LINPACK HPCの性能が黄色でマーキングされて載っています。

日立製作所も同じ日に、POWER6プロセッサーを搭載したエントリーモデル「EP8000 550」、「EP8000 520」を新たにラインアップに追加という発表をしています。

・そういえば、T2K仕様で日立製作所が東京大学に納入する1万5232プロセッサー・コア構成のLinuxクラスター・システムについて開発責任者 深川部長のたいへん興味深いインタビュー記事がITproに載っています。予想どうりとはいえ、熱設計、信頼性確保、3,800個を越えるクアッドコアOpteronプロセッサーの調達の三点が難関だったそうです。


このようすだと1月にフル・プロダクションを予定していた、AMDの先客でもあるテキサス Rangerも15,744個のクアッドコアOpteronプロセッサーを調達できたことでしょう。
予定通りに進捗が進んでいればそろそろTACCから何かRangerについての発表があってもよいころですが。


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2008年01月29日

●赤の広場にBlue Gene/Pがやってくる

・モスクワ大学にIBM Blue Gene/Pが決まり、4月に入るそうです。応用分野はナノテクノロジー、材料科学そしてライフサイエンスといわば定番といったところです。

・IBMのプレスリリース 「Blue Gene coming to Red Square」に出ていました。

・システムは2ラック(8,192プロセッサー)という小さな構成ですが性能は27.8TFLOPSとTop500リストの50位以内に入る性能で、こんなものを米国政府がロシアに輸出を認めるということは一昔前には考えられなかったことでした。

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2008年01月26日

●IBM、Intel、CiscoがHPCセンターをオープン

IBM、Intel、 CiscoがフランスのモンペリエにあるIBMのHPC施設を拡大する形でヨーロッパにHPCセンターをオープンしました。

IBMのプレスリリースによると、このHPCセンターではIBMのx86系サーバー System x と BladeCenterをベースに、Cisco社がInfiniBand と Ethernetテクノロジーを担当、Intel社がマルチコア・プロセッサーとHPCアプリケーション・スキルを担当して、総合的なテストベッドを提供するそうです。

コンピューター・メーカー製の大型スーパーコンピューター、例えばIBM System pサーバーの大規模クラスター・システムであれば、サーバー、インターコネクト・スイッチからOSまで全てメーカーであるIBMが把握し、検証もできているわけです。

しかしx86ベースのLinuxクラスターでは、別々の企業なり開発グループがしのぎを削って開発した製品の中からハードウェア、ソフトウェア、OSを自分の判断で選んでシステムを完成させるスタイルが基本です。まさにOff-the-Shelfと言われる由縁ですが、こうなると組み合わせの数だけでも大変な量になり、その製品も短期間でモデル・チェンジ、バージョン・アップによって変化し続けています。

そうした状況の中、任意に組み合わせたシステム構成が正しく動くかどうか簡単にわかるものでもないし、どこにも答えは書いてありません。

そのため、なんのトラブルもなしに高い性能を発揮できるHPCクラスター・システムを完成させるには相当な専門知識と検証経験が必要になろうことは容易に想像できます。

そこでモンペリエのHPCセンターの目的としては、部門ユーザーのような中小規模のHPCユーザーのためにクラスター・システムのセットアップやオペレーションを簡単化して、Linuxクラスターの大きさを決めたり、検証したり、さらにFluentのようなコア・アプリケーションのベンチマークまでもできるようにするとあります。このように、HPCセンターはさしせまっての現実の要請に応えるために設立されたように受け取れます。



中小規模の研究室の中にHPC向けのLinuxクラスターの専門知識と検証経験を備えた人がいるケースは極めてまれだと思います。
中小規模のユーザーまでもがHPCの利益を広く享受できていくためには、こうしたHPCセンターの重要性がいっそう増していくと思います。


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2008年01月25日

●理研シンポジウム「ペタ超級のアプリケーション開発に向けて」

「ペタ超級のアプリケーション開発に向けて」と題した理研シンポジウム (平成20年3月13日(木)〜14日(金)、和光市の理化学研究所 鈴木梅太郎ホール)の開催が案内されています。

いま申込み受付中ですが、この案内によると今年も恒例のベンチマーク・コンテスト(内容についてはまだ準備中となっています)が行われるようです。


Cell/B.E.プロセッサーを使用したHimenoBMTの応募が出たりすると面白いのですが。HimenoBMTをするにはPS3の持つ256MBのメモリーではメモリー不足になるだろうとも聞いたりしているので、やはり2GBを備えたIBMのCell/B.E. ブレード・サーバー QS21を使わないと難しい?

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