2009年11月06日
● Blogを仮(?)移転します
・SC09が目前になったこともあり、Blogを仮移転することにしました。しばらく書いてみてみて、もしよさそうならそのまま続け、都合が悪ければこちらに戻るということにします (軟弱!)。
・というのも今まではThinkPadとiMacをその時の気分で使い分けて書いていたのが年初にiPhoneが加わったことで、ThinkPad→iPhoneという状態になってしまいました。そうなるとiPhoneからTwitterだけでなくblogも送りたくなります。
・SC09にはずっと持ち歩いていたThinkPadのかわりに、iPhone + ホテル室内を無線LAN化するためのAirMac Expressの軽装備で行くつもりですので、今が移転のタイミングです (空港の荷物検査でいちいちPCを出し入れする手間も省けるし)。
・そこで、iPhoneアプリもあり簡単にiPhoneからblogが送れるWordpressに今のblogをそっくりコピーして、取りあえず転居することにしました。
・blog転居先は、http://cheerhpc.wordpress.com/、タイトルは同じCheer! High Performance Computing です。
・さて、これでSC09期間中もblogが送れるはずですが。
・というのも今まではThinkPadとiMacをその時の気分で使い分けて書いていたのが年初にiPhoneが加わったことで、ThinkPad→iPhoneという状態になってしまいました。そうなるとiPhoneからTwitterだけでなくblogも送りたくなります。
・SC09にはずっと持ち歩いていたThinkPadのかわりに、iPhone + ホテル室内を無線LAN化するためのAirMac Expressの軽装備で行くつもりですので、今が移転のタイミングです (空港の荷物検査でいちいちPCを出し入れする手間も省けるし)。
・そこで、iPhoneアプリもあり簡単にiPhoneからblogが送れるWordpressに今のblogをそっくりコピーして、取りあえず転居することにしました。
・blog転居先は、http://cheerhpc.wordpress.com/、タイトルは同じCheer! High Performance Computing です。
・さて、これでSC09期間中もblogが送れるはずですが。
2009年10月26日
● SC09まで3週間
・SC09まであと3週間ほどですが、予告編ビデオ(SC08で見せられたものと同じ?)を見ると開催地のオレゴン州Portlandは、たいへんきれいなところのようです。
・先日開催された「次世代スーパーコンピューティング・シンポジウム2009」のポスターセッションの優秀な内容で選ばれた今年の理研レポータがどんな報告をするのか楽しみです。
・賞と言えば、IEEE Computer SocietyがSeymour Cray AwardとFernbach Awardを10月15日に発表しています。2009 Seymour Cray Awardはご存知のとおりNIIの三浦謙一教授に決定ですが、2009 Fernbach Awardはab-initio 分子動力学シミュレーションに革命的な高速化をもたらしたCPMDコードの頭文字になっているCar教授とParrinello教授が受賞します。二人ともIBM Researchの研究者でしたので、だいぶ前に日本IBMが招待講演会をした記憶があります。
・さてSC09の目玉のひとつ、エグゼビションでは今年も国内企業からは、ベストシステムズ、富士通、日立、NEC、大学からは、筑波大計算科学センター、京大高等教育研究開発推進センター、同志社大、北大、北陸先端科技大 (JAIST)、関西大、九大、奈良先端科技大(NAIST)、埼玉工大、埼玉大、T2K Open Supercomputer Alliance、東大、東北大、東工大、研究機関からは、産総研(AIST)、GRAPEプロジェクト、ITBL、海洋研究開発機構 (JAMSTEC)、日本原子力研究開発機構 (JAEA)、宇宙航空研究開発機構 (JAXA)、国立情報学研究所 (NII)、情報通信研究機構 (NICT)、高度情報科学技術研究機構 (RIST)、理化学研究所 (RIKEN)の全部で28団体が参加登録しています。SC08より多少減ったようですが、それでもほぼ例年並みの参加数です。
・過去の例から推測すると、IBMはBlue Watersで使用するPOWER7プロセッサー搭載の水冷クラスター・システムを展示してもよいタイミングですし、富士通は国内外で次世代スーパーコンピューターに使用するSPARC64 VIIIfxチップをすでに発表展示していますから、もしかするとSC09では一段階つっこんだ展示を計画しているかのもしれません。
・とは言え、一番関心が集まる展示ブースはなんといってもFermiの発表をしたばかりのNVIDIAのブースでしょう。SC08ではTeslaを見るために初日大変混雑していました。二年続けて黒山の人だかりになるブースというのはなかなか見られないことです。
・先日開催された「次世代スーパーコンピューティング・シンポジウム2009」のポスターセッションの優秀な内容で選ばれた今年の理研レポータがどんな報告をするのか楽しみです。
・賞と言えば、IEEE Computer SocietyがSeymour Cray AwardとFernbach Awardを10月15日に発表しています。2009 Seymour Cray Awardはご存知のとおりNIIの三浦謙一教授に決定ですが、2009 Fernbach Awardはab-initio 分子動力学シミュレーションに革命的な高速化をもたらしたCPMDコードの頭文字になっているCar教授とParrinello教授が受賞します。二人ともIBM Researchの研究者でしたので、だいぶ前に日本IBMが招待講演会をした記憶があります。
・さてSC09の目玉のひとつ、エグゼビションでは今年も国内企業からは、ベストシステムズ、富士通、日立、NEC、大学からは、筑波大計算科学センター、京大高等教育研究開発推進センター、同志社大、北大、北陸先端科技大 (JAIST)、関西大、九大、奈良先端科技大(NAIST)、埼玉工大、埼玉大、T2K Open Supercomputer Alliance、東大、東北大、東工大、研究機関からは、産総研(AIST)、GRAPEプロジェクト、ITBL、海洋研究開発機構 (JAMSTEC)、日本原子力研究開発機構 (JAEA)、宇宙航空研究開発機構 (JAXA)、国立情報学研究所 (NII)、情報通信研究機構 (NICT)、高度情報科学技術研究機構 (RIST)、理化学研究所 (RIKEN)の全部で28団体が参加登録しています。SC08より多少減ったようですが、それでもほぼ例年並みの参加数です。
・過去の例から推測すると、IBMはBlue Watersで使用するPOWER7プロセッサー搭載の水冷クラスター・システムを展示してもよいタイミングですし、富士通は国内外で次世代スーパーコンピューターに使用するSPARC64 VIIIfxチップをすでに発表展示していますから、もしかするとSC09では一段階つっこんだ展示を計画しているかのもしれません。
・とは言え、一番関心が集まる展示ブースはなんといってもFermiの発表をしたばかりのNVIDIAのブースでしょう。SC08ではTeslaを見るために初日大変混雑していました。二年続けて黒山の人だかりになるブースというのはなかなか見られないことです。
2009年10月19日
● HPC プログラミング
・ここしばらく書く機会が増えたせいか、老眼化のせいか、blogまでなかなか行き着かなくなっていますが、教科書作りはたぶんそんな甘いものではないでしょう。

・という自戒と敬意を表しつつ、日本IBMの長い仲間だった寒川光氏(芝浦工大教授)始め4人の共著者がこの8月にオーム社から初版を出された「HPCプログラミング」を読んでみました。
・はじめに学部学生用の入門教科書とうたってはいますがこれはかなりの謙遜で、HPCの現場で経験を積んできた研究者や技術者がHPCプログラミングの知識を整理するために、うってつけな内容と見ました。
・第一執筆者の寒川さんが長年日本IBMで構造解析を中心に数値計算の高速化アルゴリズムの応用や研究を実践してきたことが強く反映されているのでしょう、なかなか実戦的な教科書になっています。
・著者らが「HPCプログラミングが一般的なプログラミングと異なるところはコンピューターの内部まで考慮して、速く実行されるプログラミングにする部分である」と定義し、具体的な説明を一貫できているのは、やはり全員の深い経験あってのものでしょう (たとえばFFTの章の著者は、FFTがライフワークと宣言する高橋大介先生(筑波大))。
・ベクトル・コンピューター全盛時にはこうした内容は溢れるほどあったような気がしますが、現在のパラレル・コンピューター時代の教科書にまず必要なのは、階層メモリー構造やSSE命令なども意識したHPCプログラミングですから、その点でもたいへんタイムリーでおもしろい内容になっています。
・演習問題の最後にFortranによる二種類のアルゴリズムによるFFT計算の性能結果が載っていますがThinkPad T400で、370 MFLOPSと1,032 MFLOPS!
T400はキャンペーンで購入して家族がインターネットやワープロなどに使っていますが、まさかこんなに速いとは。

・という自戒と敬意を表しつつ、日本IBMの長い仲間だった寒川光氏(芝浦工大教授)始め4人の共著者がこの8月にオーム社から初版を出された「HPCプログラミング」を読んでみました。
・はじめに学部学生用の入門教科書とうたってはいますがこれはかなりの謙遜で、HPCの現場で経験を積んできた研究者や技術者がHPCプログラミングの知識を整理するために、うってつけな内容と見ました。
・第一執筆者の寒川さんが長年日本IBMで構造解析を中心に数値計算の高速化アルゴリズムの応用や研究を実践してきたことが強く反映されているのでしょう、なかなか実戦的な教科書になっています。
・著者らが「HPCプログラミングが一般的なプログラミングと異なるところはコンピューターの内部まで考慮して、速く実行されるプログラミングにする部分である」と定義し、具体的な説明を一貫できているのは、やはり全員の深い経験あってのものでしょう (たとえばFFTの章の著者は、FFTがライフワークと宣言する高橋大介先生(筑波大))。
・ベクトル・コンピューター全盛時にはこうした内容は溢れるほどあったような気がしますが、現在のパラレル・コンピューター時代の教科書にまず必要なのは、階層メモリー構造やSSE命令なども意識したHPCプログラミングですから、その点でもたいへんタイムリーでおもしろい内容になっています。
・演習問題の最後にFortranによる二種類のアルゴリズムによるFFT計算の性能結果が載っていますがThinkPad T400で、370 MFLOPSと1,032 MFLOPS!
T400はキャンペーンで購入して家族がインターネットやワープロなどに使っていますが、まさかこんなに速いとは。
2009年09月14日
● 三浦謙一教授 今年のCray Awardを受賞
・国立情報学研究所の三浦謙一教授がHPCシステムへの革新的な貢献を讃える今年のCray Awardを受賞した、と同研究所のホームページが伝えています。
三浦教授がIEEE(米国電気電子学会)Computer Society Seymour Cray Computer Engineering Awardを受賞しました。
・三浦教授といえば、1970年代にイリノイ大学で、かのILLIAC IVの研究開発に携わったという伝説的な話がよく知られていますが、日本人で2006年の渡辺貞氏に続いての受賞はたいへんな快挙です。
・SC09のサイトにはまだ反映されていませんでしたが、11月のSC09の授賞講演が今から楽しみです。おめでとうございます。
三浦教授がIEEE(米国電気電子学会)Computer Society Seymour Cray Computer Engineering Awardを受賞しました。
・三浦教授といえば、1970年代にイリノイ大学で、かのILLIAC IVの研究開発に携わったという伝説的な話がよく知られていますが、日本人で2006年の渡辺貞氏に続いての受賞はたいへんな快挙です。
・SC09のサイトにはまだ反映されていませんでしたが、11月のSC09の授賞講演が今から楽しみです。おめでとうございます。
2009年09月13日
● NOAAの170億円弱の気象・気候予測用スーパーコンピューター稼働
・ NOAAの名で知られている米国海洋大気庁が、「気象・気候予測のために、9年計画で$180M (約160〜170億円弱)をかけてIBMの最新スーパーコンピューターを導入してきましたが、その最終フェーズにあたるIBM Power 575 システム (69.7 TFLOPS)が稼働を初めました。」という発表をしています。
→ NOAA’s Powerful New Supercomputers Boost U.S. Weather Forecasts
・ IBM Power 575 システムというのは、水冷のPOWER6を搭載したクラスターで、SC07(2007年11月)の会場で初めて展示デビューしたため、このblogでも紹介しています。
・日本では水冷システムは絶対(!)好かれないということをよく聞きましたが、現実には水冷のよさがますます再評価されているのが現状で、Blue Gene/Pですら水冷機能をラック上部に導入しました(ドイツのJUGENEスーパーコンピューター)。日本の次世代スーパーコンピューターにしてもプロセッサーを水冷し、ばらつきが少ない動作範囲に納めることで、信頼性や寿命の改善をはかる設計になっています。
・まあNOAAのPower 575のシステム性能69.7 TFLOPSというのは、最新のTop500でいうと60位台ですからそれほど目立つ性能ではありません。驚くのは、気象・気候予測の著名なセンターがこの水冷POWER6プロセッサーを搭載したPower 575を使用していることです。
・Top500を見ても、英国のECMWF(ヨーロッパ中期予報センター) が156TFLOPS機を2システム、ドイツ気候計算センター(DKRZ)が152TFLOPS機、米国NCEP(National Center for Environmental Protection)が94TFLOPS機と79TFLOPS機、アメリカ大気研究センター(NCAR)が92 TFLOPS機、英国の気象局、すこしとばして、カナダのEnvironment Canadaが27TFLOPS機、そしてインドのNational Center for Medium Range Weather Forecastが24TFLOPS機。
・以前には日本製のベクトル・スーパーコンピューターを導入していたセンターもこの中にあったと記憶していますが、現在ではPower575が気象・気候シミュレーションの分野のブランド商品になってしまったようです。別の言い方をすれば、Power575がこの分野での差別化をきちんと行った結果、国際的な成功をおさめたということでしょうか。
・日本のスーパーコンピューターが海外でふたたび活躍するためには、こうした差別化と、国内市場の声だけに依存しない先見性のある開発戦略が欠かせないでしょうね。
最近どこかの国内記事にBlue GeneやRoadrunnerはFortranもCも使えないといったようなことがいろいろ書かれていて思わずのけぞってしまいました。競争相手の強みを正しく理解するのが差別化に成功する第一歩なんですが、外野もいろいろということでしょうか。
→ NOAA’s Powerful New Supercomputers Boost U.S. Weather Forecasts
・ IBM Power 575 システムというのは、水冷のPOWER6を搭載したクラスターで、SC07(2007年11月)の会場で初めて展示デビューしたため、このblogでも紹介しています。
・日本では水冷システムは絶対(!)好かれないということをよく聞きましたが、現実には水冷のよさがますます再評価されているのが現状で、Blue Gene/Pですら水冷機能をラック上部に導入しました(ドイツのJUGENEスーパーコンピューター)。日本の次世代スーパーコンピューターにしてもプロセッサーを水冷し、ばらつきが少ない動作範囲に納めることで、信頼性や寿命の改善をはかる設計になっています。
・まあNOAAのPower 575のシステム性能69.7 TFLOPSというのは、最新のTop500でいうと60位台ですからそれほど目立つ性能ではありません。驚くのは、気象・気候予測の著名なセンターがこの水冷POWER6プロセッサーを搭載したPower 575を使用していることです。
・Top500を見ても、英国のECMWF(ヨーロッパ中期予報センター) が156TFLOPS機を2システム、ドイツ気候計算センター(DKRZ)が152TFLOPS機、米国NCEP(National Center for Environmental Protection)が94TFLOPS機と79TFLOPS機、アメリカ大気研究センター(NCAR)が92 TFLOPS機、英国の気象局、すこしとばして、カナダのEnvironment Canadaが27TFLOPS機、そしてインドのNational Center for Medium Range Weather Forecastが24TFLOPS機。
・以前には日本製のベクトル・スーパーコンピューターを導入していたセンターもこの中にあったと記憶していますが、現在ではPower575が気象・気候シミュレーションの分野のブランド商品になってしまったようです。別の言い方をすれば、Power575がこの分野での差別化をきちんと行った結果、国際的な成功をおさめたということでしょうか。
・日本のスーパーコンピューターが海外でふたたび活躍するためには、こうした差別化と、国内市場の声だけに依存しない先見性のある開発戦略が欠かせないでしょうね。
最近どこかの国内記事にBlue GeneやRoadrunnerはFortranもCも使えないといったようなことがいろいろ書かれていて思わずのけぞってしまいました。競争相手の強みを正しく理解するのが差別化に成功する第一歩なんですが、外野もいろいろということでしょうか。
2009年09月02日
● SC09まで2ヵ月半
・8/30の選挙日は志賀高原の温泉地にいて(もちろん期日前投票ずみ)、帰りは八ツ場ダム予定地を通ってきたわけですが、
3GSで撮ってきた左の写真のように巨大な橋やトンネルといった建設中の大型構造物が目に入ってきました。百聞は一見にしかずで、後戻りなどとても想像できないくらいのインパクトがありましたが・・。
・余談はさておき、ポートランドでのSC09まであと二ヶ月半、去年はGPU旋風が吹いていましたが、今年はそれも落ち着いたようです。論文やポスターセッションでGPU関連発表が目立つものの、招待講演、マスター・ワークス、パネル・ディスカッション、Birds-of-a-Featherといったところではさほど取り上げられておらず、HPCのメジャーと言える位置には至っていないというのが現状でしょうか。
・GPUについてのBirds-of-a-Featherが「Art of Performance Tuning for CUDA and Manycore Architectures」と、Tuningがアートになっているのは昔に帰ったようで、なつかしいというかご愛嬌です。
・ポスターセッションには過激に「GPUs: TeraFLOPS or TeraFLAWED?」という発表もあります。FLAWEDというのは欠陥のことですから、超高速それとも超エラー多発?といった意味でしょうか。このあたりが現行GPU製品の未解決課題だということがうかがわれます。
・ 個人的にも喜ばしいのは、今年のマスターワークスやゴードン・ベル賞候補に、やっとライフサイエンス系が目立つようになってきたことです。マスターワークスでは、以前紹介したKlaus Schulten教授による豚インフルエンザウィルスののマルチスケール・シミュレーションなど16個中7個がライフサイエンス分野からの講演、そして
・ゴードン・ベル賞最終候補には脳のシミュレーションをLLNLの Dawn Blue Gene/Pでおこなった「The Cat is Out of the Bag: Cortical Simulations with 10^9 Neurons, 10^13 Synapses」など9件中4件がライフサイエス分野での計算事例です。
・その9件のゴードン・ベル賞最終候補ですが、プラットホーム別に見ると
- IBM Blue Gene: LLNL(1)、ANL(1), Renssalaer Polytechnic University(1), IBM(2); ( )は件数です
- Cray XT5 (Jaguar): ORNL(2), ANL(1),
- GPU: 長崎大、理研その他(1)
- Anton: D.E. Shaw Research(1)
とBlue Geneを使用したものが5件と過半数を占めています。
・上述のように、日本からは「42 TFlops Hierarchical N-body Simulations on GPUs with Applications in both Astrophysics and Turbulence」が最終候補に残っています。この論文では費用対性能の高さをアッピールしています。
・最後のAntonはmolecular dynamics (MD)専用機です。
去年は日本勢が多数出展・参加していましたが、今年も同じくらいでしょうか。インフルエンザとあわせてこれも気になるところです。
3GSで撮ってきた左の写真のように巨大な橋やトンネルといった建設中の大型構造物が目に入ってきました。百聞は一見にしかずで、後戻りなどとても想像できないくらいのインパクトがありましたが・・。・余談はさておき、ポートランドでのSC09まであと二ヶ月半、去年はGPU旋風が吹いていましたが、今年はそれも落ち着いたようです。論文やポスターセッションでGPU関連発表が目立つものの、招待講演、マスター・ワークス、パネル・ディスカッション、Birds-of-a-Featherといったところではさほど取り上げられておらず、HPCのメジャーと言える位置には至っていないというのが現状でしょうか。
・GPUについてのBirds-of-a-Featherが「Art of Performance Tuning for CUDA and Manycore Architectures」と、Tuningがアートになっているのは昔に帰ったようで、なつかしいというかご愛嬌です。
・ポスターセッションには過激に「GPUs: TeraFLOPS or TeraFLAWED?」という発表もあります。FLAWEDというのは欠陥のことですから、超高速それとも超エラー多発?といった意味でしょうか。このあたりが現行GPU製品の未解決課題だということがうかがわれます。
・ 個人的にも喜ばしいのは、今年のマスターワークスやゴードン・ベル賞候補に、やっとライフサイエンス系が目立つようになってきたことです。マスターワークスでは、以前紹介したKlaus Schulten教授による豚インフルエンザウィルスののマルチスケール・シミュレーションなど16個中7個がライフサイエンス分野からの講演、そして
・ゴードン・ベル賞最終候補には脳のシミュレーションをLLNLの Dawn Blue Gene/Pでおこなった「The Cat is Out of the Bag: Cortical Simulations with 10^9 Neurons, 10^13 Synapses」など9件中4件がライフサイエス分野での計算事例です。
・その9件のゴードン・ベル賞最終候補ですが、プラットホーム別に見ると
- IBM Blue Gene: LLNL(1)、ANL(1), Renssalaer Polytechnic University(1), IBM(2); ( )は件数です
- Cray XT5 (Jaguar): ORNL(2), ANL(1),
- GPU: 長崎大、理研その他(1)
- Anton: D.E. Shaw Research(1)
とBlue Geneを使用したものが5件と過半数を占めています。
・上述のように、日本からは「42 TFlops Hierarchical N-body Simulations on GPUs with Applications in both Astrophysics and Turbulence」が最終候補に残っています。この論文では費用対性能の高さをアッピールしています。
・最後のAntonはmolecular dynamics (MD)専用機です。
去年は日本勢が多数出展・参加していましたが、今年も同じくらいでしょうか。インフルエンザとあわせてこれも気になるところです。
2009年07月30日
● Blue WatersとPower7
久々にNCSAのBlue Watersプロジェクトの話題になりますが、2010年完成予定の建屋の建設も着々進んでいるようです。この2階建てで24MW受電の建屋には、Blue Waters本体だけでなく、その水冷設備や50人のスタッフ用のスペースなどを備えています (Behind Blue Waters, volume 3 ビデオ)。
このBlue Watersプロジェクトは、広範囲の科学技術アプリケーションにわたり持続性能で1PetaFLOPS達成というのを目標にしていますから、ピーク性能は数Peta〜10PetaFLOPS程度と予想されます。サービス開始は2011年です。
これからもわかるように、Blue Watersは10PetaFLOPSの実効性能を目指す日本の次世代スーパーコンピューター・プロジェクトと直接競合するものではありません。(そちらの競争相手の本命はLLNL/IBMのセコイア。)
さてIBMが開発しているこのBlue Watersシステムの注目点は、POWER7プロセッサーで実現される計算性能だけではなく、DARPAのHigh Productivity Computing Systems (HPCS) 計画で得られたIBMのPERCSテクノロジーを備えた最初の実用システムだということです。PERCSはProductive, Easy-to-use, Reliable Computing Systemの略です。
NCSAではPERCSテクノロジーによりBlue Watersは現在の汎用スーパーコンピューターの百倍も強力なのにもかかわらず、非常に簡単に使える(プログラミングできる)とうたっています。この点が大きな特色です。これについてはBehind Blue Waters, volume 4ビデオからもうかがえます。
POWER7の方についても少しづつ情報が出始めているようですが、Blue Watersでは、
・POWER7を20万コア以上使用、
・コア当たり2GB以上のメモリー、SMP当たりでは32GB以上のメモリー搭載
・16コア以上のSMP
・ネットワークはintegrated network interconnectにより遅延が大幅に減りバンド幅が増える。またRDMAテクノロジーでI/O付の計算と通信とをオーバーラップできる
・500 Petaバイトのアーカイバル・ディスク。10 Petaバイト以上のユーザー・ディスク スペース
・ファイルシステムはIBMのGeneral Parallel File System (GPFS) と High Performance Storage System (HPSS)とをGPFS-HPSS Interface (GHI) ソフトウェアで結合したもの。中間システムBlue Print(IBM POWER575+ クラスター)でテストを開始、
と、いたって正攻法によるアプローチに見えます。
POWER7プロセッサーについては、8月末にスタンフォード大で開催されるIEEEのHot Chips conferenceでもう少し詳しい話がなされるようですが、
・45 ナノチップでIBMのイーストフイッシュキル工場が製造
・出荷は2010年上半期の予定で、その時点では4,6,8コア
・コア当たり4スレッド
・クロック数は不明だが、いくつかのバリエーションを持つ
・DDR3メインメモリーをサポート
とThe RegisterのIBM lifts the veil on Power7 chipsでは伝えています。
11月のSC09では、Blue Waters、POWER7、セコイア、日本の次世代スーパーコンピューター、こういった大物が進捗などをいっせいに発表してくれると久々に盛り上がると思うのですが。
このBlue Watersプロジェクトは、広範囲の科学技術アプリケーションにわたり持続性能で1PetaFLOPS達成というのを目標にしていますから、ピーク性能は数Peta〜10PetaFLOPS程度と予想されます。サービス開始は2011年です。
これからもわかるように、Blue Watersは10PetaFLOPSの実効性能を目指す日本の次世代スーパーコンピューター・プロジェクトと直接競合するものではありません。(そちらの競争相手の本命はLLNL/IBMのセコイア。)
さてIBMが開発しているこのBlue Watersシステムの注目点は、POWER7プロセッサーで実現される計算性能だけではなく、DARPAのHigh Productivity Computing Systems (HPCS) 計画で得られたIBMのPERCSテクノロジーを備えた最初の実用システムだということです。PERCSはProductive, Easy-to-use, Reliable Computing Systemの略です。
NCSAではPERCSテクノロジーによりBlue Watersは現在の汎用スーパーコンピューターの百倍も強力なのにもかかわらず、非常に簡単に使える(プログラミングできる)とうたっています。この点が大きな特色です。これについてはBehind Blue Waters, volume 4ビデオからもうかがえます。
POWER7の方についても少しづつ情報が出始めているようですが、Blue Watersでは、
・POWER7を20万コア以上使用、
・コア当たり2GB以上のメモリー、SMP当たりでは32GB以上のメモリー搭載
・16コア以上のSMP
・ネットワークはintegrated network interconnectにより遅延が大幅に減りバンド幅が増える。またRDMAテクノロジーでI/O付の計算と通信とをオーバーラップできる
・500 Petaバイトのアーカイバル・ディスク。10 Petaバイト以上のユーザー・ディスク スペース
・ファイルシステムはIBMのGeneral Parallel File System (GPFS) と High Performance Storage System (HPSS)とをGPFS-HPSS Interface (GHI) ソフトウェアで結合したもの。中間システムBlue Print(IBM POWER575+ クラスター)でテストを開始、
と、いたって正攻法によるアプローチに見えます。
POWER7プロセッサーについては、8月末にスタンフォード大で開催されるIEEEのHot Chips conferenceでもう少し詳しい話がなされるようですが、
・45 ナノチップでIBMのイーストフイッシュキル工場が製造
・出荷は2010年上半期の予定で、その時点では4,6,8コア
・コア当たり4スレッド
・クロック数は不明だが、いくつかのバリエーションを持つ
・DDR3メインメモリーをサポート
とThe RegisterのIBM lifts the veil on Power7 chipsでは伝えています。
11月のSC09では、Blue Waters、POWER7、セコイア、日本の次世代スーパーコンピューター、こういった大物が進捗などをいっせいに発表してくれると久々に盛り上がると思うのですが。
2009年07月04日
TOP500の私家版辛目サプライズTOP5
2009年6月版のTOP500スーパーコンピューター・リストですが、TOP10やTOP20といった上位陣にはサプライズというかワクワク感はありませんでした。
しかし、つらつら全体をながめてみると辛いサプライズというか、いくつかショッキングなデータもあります。
以下は私家版の辛目サプライズTOP5。
5位: 今回の500位の性能は半年前の274位の性能。
下位半分近くが半年でランク外に去るほどHPCの底上げが持続して続いています。今回の500位はLINPACK性能 17TFLOPS (インテル Woodcrest 3,528コアのブレード・クラスター)。このため日本国内の民間企業スーパーコンピューター・サイトはすべてTOP500リストのランク外に去りました。
4位: 日本は地球シミュレータ(リニュー機)の22位が最高。
いま日本はTOP10ではなくTOP50クラスでの競争にまで落ちています。
ここで各国の最高性能機の順位とLINPACK性能値を見ると、
USA 1位(1.1 PFLOPS/Roadrunner)
独 3位(826 TFLOPS/JUGENE(BGP))
サウジ 14位(185 TF/BGP)
中国 15位 (181 TF/Dawning)
カナダ 16位 (169 TF/iDataplex)
インド 18位(133 TF/HP)
仏 20位(123 TF/SGI)
日本 22位 (122 TF/ES(SX-9/E))
スイス 24位 (118 TF/XT5)
英 25位 (116 TF/p575) (ただし25位のECMWFにはp575が2台あるので実質は12位くらいの能力がある)
思考実験的に、T2Kの総性能を1箇所のセンターに集中させた場合を考えても200TFLOPS強なのでTOP500の12位程度です。これが世界の中の実態ということがわかります。
3位: 日本の台数シェアはたったの2.4% (12台)に減少。
米国(291台)は別格として英(44台)、独(29台)、仏(23台)、中国(21台)より少なく、かつての米国に次ぐスーパーコンピューター利用国という日本のプレゼンスは今やかたなし。(性能累計値では中国より日本がまだ大きい・・)。
こうした状況が続くとなるといろいろな面で非常にまずいと思うのですが。
2位: ベクトル専用機は前回同様、TOP500中に1台のみ。
この1台は今年3月にリニューした地球シミュレーター(NEC SX-9/E))です。2年前は4システム、4年前は7システムのベクトル専用機がランクインしてました。ベクトル機のイメージが強いCrayも今やTOP500のシステムはすべてOpteron搭載機で、TOP500というスーパーコンピューターの世界ではベクトル・アーキテクチャはほぼ絶滅したかに見えます。世界で唯一ベクトル専用機で頑張っているNECの開発・販売戦略が気になります。
1位: TOP500中63%が企業内のシステムであるにもかかわらず、日本の企業サイトはなんと今回0台!。
去年ランクインしていた4社はすべて17TFLOPS未満だったためランクアウトになりましたが、他方17TFLOPS以上の新規または性能拡大が民間企業でなかったことになります。
日本に12台の公的スーパーコンピューター・サイトがあるならば18台の企業スーパーコンピューター・サイトが存在するというのがTOP500の平均値です。そうなると日本の合計台数は30台となりドイツと同規模になります。文部科学省は、産業界の研究開発にスーパーコンピューティングが役だたせられるよう一生懸命ですが、残念ながら日本は先進工業国の中でとても変わったスーパーコンピューター利用分布になりました。
経済産業省などはこの状況をどうとらえているのでしょうか。
さてさて、以前は日本のはるか後ろにいたヨーロッパですが、いま比較的新しいメーカーがHPCに積極的で、HPCwireのブログによるとBull (仏), T-Platforms (露), Eurotech (伊)の三社がそれぞれ独自のペタスケールまで拡張できるハイエンドのHPCシステムに取り組んでいると報じています。
ともあれ、地球シミュレータ・ショックをてこに米国が根気強くHPCを立て直したように、HPCが企業のR&Dのために広く役ただせられるようにするとともに、スーパーコンピューター関連産業が高い競争力を持つ輸出産業になるよう、ここは総合的で強い長期戦略を持って日本の影響力を回復させる必要があるでしょうね。
しかし、つらつら全体をながめてみると辛いサプライズというか、いくつかショッキングなデータもあります。
以下は私家版の辛目サプライズTOP5。
5位: 今回の500位の性能は半年前の274位の性能。
下位半分近くが半年でランク外に去るほどHPCの底上げが持続して続いています。今回の500位はLINPACK性能 17TFLOPS (インテル Woodcrest 3,528コアのブレード・クラスター)。このため日本国内の民間企業スーパーコンピューター・サイトはすべてTOP500リストのランク外に去りました。
4位: 日本は地球シミュレータ(リニュー機)の22位が最高。
いま日本はTOP10ではなくTOP50クラスでの競争にまで落ちています。
ここで各国の最高性能機の順位とLINPACK性能値を見ると、
USA 1位(1.1 PFLOPS/Roadrunner)
独 3位(826 TFLOPS/JUGENE(BGP))
サウジ 14位(185 TF/BGP)
中国 15位 (181 TF/Dawning)
カナダ 16位 (169 TF/iDataplex)
インド 18位(133 TF/HP)
仏 20位(123 TF/SGI)
日本 22位 (122 TF/ES(SX-9/E))
スイス 24位 (118 TF/XT5)
英 25位 (116 TF/p575) (ただし25位のECMWFにはp575が2台あるので実質は12位くらいの能力がある)
思考実験的に、T2Kの総性能を1箇所のセンターに集中させた場合を考えても200TFLOPS強なのでTOP500の12位程度です。これが世界の中の実態ということがわかります。
3位: 日本の台数シェアはたったの2.4% (12台)に減少。
米国(291台)は別格として英(44台)、独(29台)、仏(23台)、中国(21台)より少なく、かつての米国に次ぐスーパーコンピューター利用国という日本のプレゼンスは今やかたなし。(性能累計値では中国より日本がまだ大きい・・)。
こうした状況が続くとなるといろいろな面で非常にまずいと思うのですが。
2位: ベクトル専用機は前回同様、TOP500中に1台のみ。
この1台は今年3月にリニューした地球シミュレーター(NEC SX-9/E))です。2年前は4システム、4年前は7システムのベクトル専用機がランクインしてました。ベクトル機のイメージが強いCrayも今やTOP500のシステムはすべてOpteron搭載機で、TOP500というスーパーコンピューターの世界ではベクトル・アーキテクチャはほぼ絶滅したかに見えます。世界で唯一ベクトル専用機で頑張っているNECの開発・販売戦略が気になります。
1位: TOP500中63%が企業内のシステムであるにもかかわらず、日本の企業サイトはなんと今回0台!。
去年ランクインしていた4社はすべて17TFLOPS未満だったためランクアウトになりましたが、他方17TFLOPS以上の新規または性能拡大が民間企業でなかったことになります。
日本に12台の公的スーパーコンピューター・サイトがあるならば18台の企業スーパーコンピューター・サイトが存在するというのがTOP500の平均値です。そうなると日本の合計台数は30台となりドイツと同規模になります。文部科学省は、産業界の研究開発にスーパーコンピューティングが役だたせられるよう一生懸命ですが、残念ながら日本は先進工業国の中でとても変わったスーパーコンピューター利用分布になりました。
経済産業省などはこの状況をどうとらえているのでしょうか。
さてさて、以前は日本のはるか後ろにいたヨーロッパですが、いま比較的新しいメーカーがHPCに積極的で、HPCwireのブログによるとBull (仏), T-Platforms (露), Eurotech (伊)の三社がそれぞれ独自のペタスケールまで拡張できるハイエンドのHPCシステムに取り組んでいると報じています。
ともあれ、地球シミュレータ・ショックをてこに米国が根気強くHPCを立て直したように、HPCが企業のR&Dのために広く役ただせられるようにするとともに、スーパーコンピューター関連産業が高い競争力を持つ輸出産業になるよう、ここは総合的で強い長期戦略を持って日本の影響力を回復させる必要があるでしょうね。
2009年06月12日
● インフルエンザとスーパーコンピューティング (2)
・ 新型インフルエンザ (A/H1N1)警戒水準が上限の6に上げられました。WHO事務局長のご託宣という印象が強くて、私には科学的な説得力といったものが伝わってきませんでした。地震の震度発表などと比較するとわかりますが、気象庁長官が自分の判断で震度7と決定しましたーという発表をするわけがないし、その必要もないわけで、感染症医療分野の科学的未熟さ度合いを感じます。
・ もう少し何とかならないかというのが実感ですが、インフルエンザウィルスの変異とか伝染の進み具合をHPCを駆使して予想する研究は行われていて、その例が前に紹介したIBMのProject Checkmateなどです。さらに今回、イリノイ大学のKlaus Schulten教授がProject “turned very hot due to the world-wide health threat from swine flu”(「ブタインフルエンザの世界的脅威で非常にホットになったプロジェクト」と言っているので特にプロジェクト名はない?)でテキサス大学のTACCのRangerスーパーコンピューターを使った緊急計算をしています。
・ Schulten教授といえばイリノイ大学にあるTheoretical and Computational Biophysics Group (TCBG) のリーダーの物理屋さんで、並列(!)分子動力学シミュレーター NAMDやビューアのVMDなどの開発に力を入れ、巨大分子系のモデリングの研究をしている科学者ですから、インフルエンザ・ウィルス計算にはうってつけのようです。
・タミフルに耐性を持ったA/H1N1ウィルスでメキシコに死亡者が発生したことが始めの段階でよく知られています。Schulten教授たちは、分子動力学シミュレーションをすることで薬がウィルスにどんなふうにくっつくのか、前に効いた薬に対してウィルスが耐性を持つ場合には何が生じているのか、ウィルスがどう変異しようが薬で永久的に不活性化するための弱点を発見することはできないか、といった質問に答えようとしています。
・A/H1N1ウイルスは、ひとの細胞内でたっぷりと増殖した後に細胞膜を切り開いて外に出て行くために必須の A/H1N1ノイラミニダーゼというキノコ状の道具を持っているわけですが、その表面にある深いくぼみを薬の分子でピッタリふさぐと道具が役にたたなくなるのでウイルスは万事休すとなります。要は、そういう状態が生じるかどうかを調べるためにNAMDコードでシミュレーションをするわけです。ただし、その前にノイラミニダーゼ自体が非常に速いスピードで進化する部分なのでトリインフルエンザ・ウィルスのゲノム配列データとホモロジー情報を組み合わせてA/H1N1ノイラミニダーゼの最初の原子モデルを作るというようなことをしています(詳しいことは不明)。
・計算モデルとしては、スペイン風邪のH1N1ウィルスで薬なしのモデル、トリインフルエンザ H5N1とタミフルが結合したモデル、ブタインフルエンザ A/H1N1とリレンザが結合したモデルの三種類を作り、TACCのRangerスーパーコンピューターの優先アクセス・キューに入れ、2,000〜3,000プロセッサーによる2週間連続の大規模な計算をしています。Schulten教授らの研究は始まったばかりのようですが、バイオフィジックスの格好のテーマとして、これから他にもいろいろなチームが取り組んでいくのではないでしょうか。
・最近では海底地震が起こるとすぐに津波シミュレーションの結果がTVに紹介されるようになりましたが、パンデミック対策も科学者をコアに、日本がリードしている地震災害対策のような自然災害対策の視点に立った学際的で科学的なアプローチを強化展開して世界をリードするというのがむしろ理にかなっている感じがしますが(極端かな?)。
・ もう少し何とかならないかというのが実感ですが、インフルエンザウィルスの変異とか伝染の進み具合をHPCを駆使して予想する研究は行われていて、その例が前に紹介したIBMのProject Checkmateなどです。さらに今回、イリノイ大学のKlaus Schulten教授がProject “turned very hot due to the world-wide health threat from swine flu”(「ブタインフルエンザの世界的脅威で非常にホットになったプロジェクト」と言っているので特にプロジェクト名はない?)でテキサス大学のTACCのRangerスーパーコンピューターを使った緊急計算をしています。
・ Schulten教授といえばイリノイ大学にあるTheoretical and Computational Biophysics Group (TCBG) のリーダーの物理屋さんで、並列(!)分子動力学シミュレーター NAMDやビューアのVMDなどの開発に力を入れ、巨大分子系のモデリングの研究をしている科学者ですから、インフルエンザ・ウィルス計算にはうってつけのようです。
・タミフルに耐性を持ったA/H1N1ウィルスでメキシコに死亡者が発生したことが始めの段階でよく知られています。Schulten教授たちは、分子動力学シミュレーションをすることで薬がウィルスにどんなふうにくっつくのか、前に効いた薬に対してウィルスが耐性を持つ場合には何が生じているのか、ウィルスがどう変異しようが薬で永久的に不活性化するための弱点を発見することはできないか、といった質問に答えようとしています。
・A/H1N1ウイルスは、ひとの細胞内でたっぷりと増殖した後に細胞膜を切り開いて外に出て行くために必須の A/H1N1ノイラミニダーゼというキノコ状の道具を持っているわけですが、その表面にある深いくぼみを薬の分子でピッタリふさぐと道具が役にたたなくなるのでウイルスは万事休すとなります。要は、そういう状態が生じるかどうかを調べるためにNAMDコードでシミュレーションをするわけです。ただし、その前にノイラミニダーゼ自体が非常に速いスピードで進化する部分なのでトリインフルエンザ・ウィルスのゲノム配列データとホモロジー情報を組み合わせてA/H1N1ノイラミニダーゼの最初の原子モデルを作るというようなことをしています(詳しいことは不明)。
・計算モデルとしては、スペイン風邪のH1N1ウィルスで薬なしのモデル、トリインフルエンザ H5N1とタミフルが結合したモデル、ブタインフルエンザ A/H1N1とリレンザが結合したモデルの三種類を作り、TACCのRangerスーパーコンピューターの優先アクセス・キューに入れ、2,000〜3,000プロセッサーによる2週間連続の大規模な計算をしています。Schulten教授らの研究は始まったばかりのようですが、バイオフィジックスの格好のテーマとして、これから他にもいろいろなチームが取り組んでいくのではないでしょうか。
・最近では海底地震が起こるとすぐに津波シミュレーションの結果がTVに紹介されるようになりましたが、パンデミック対策も科学者をコアに、日本がリードしている地震災害対策のような自然災害対策の視点に立った学際的で科学的なアプローチを強化展開して世界をリードするというのがむしろ理にかなっている感じがしますが(極端かな?)。
2009年06月04日
● ドイツのJUGENEが1ペタFLOPSに増強
・ ドイツのユーリッヒにあるガウス・センターのJUGENE (Juelicher BlueGene/P )がピーク性能1ペタFLOPSに増強され、先週の5月26日にお披露目されています。JUGENEはBlue Gene/Pの72ラック(初稿訂正: Blue Gene/Pは216ラックまで拡張可能でした)のシステムで水冷ラック(初稿訂正。"The roughly 72,000 processors in the new supercomputer will be accommodated in 72 water-cooled racks. " (http://www.fz-juelich.de/portal/index.php?index=1434)とあるので、単に水冷バックドアでラックを冷やしているだけ?)です。
・ Blue Gene/Pのプロセッサー・チップには4個のPowerPC450プロセッサーとIBMが強いembeddedDRAM 8MBと高速ネットワークが入っていますが、これと2GB DDR2メモリーから4-way SMPノードを構成し、1個のコンピュート・カードにしています。72ラック全体で73,728個のコンピュート・ノードになるのでプロセッサー数は4倍の294,912個に達します。
・ ヨーロッパ最大の貴重なシステムなだけにその利用は少数の科学的価値の高いプロジェクトやスケーラビリティの性能向上に貢献できるプロジェクトなどに絞られています。6月にはTop500スーパーコンピューター・リストの発表がありますが、いまのところ世界3位くらいの位置にいるのではないでしょうか。
・ 組み立て現場のスライドショーは見飽きませんが、水冷のせいかはたまたドイツというせいか建屋内はプレファブ風のそっけないものです。
・ JUGENEと同時にNehalem-EPプロセッサーを使用した100テラFLOPS級の二つのHPCシステム、Bull社ベースの汎用クラスター JUROPA (ピーク性能 207テラFLOPS)とITER核融合炉など核融合シミュレーション専用のHPC-FF (HPC For Fusion,ピーク性能 101テラFLOPS)のふたつが紹介されました。システム構成図を見るとファイル・システムにはLustreとIBM GPFS (General Parallel File System)が使用されています。
・ この三つのシステムはヨーロッパ全体の研究活動に利用されます。アメリカや日本の次世代スーパーコンピューター研究開発に触発されたこともあるのでしょう、ヨーロッパのHPCはこのところずいぶん元気になってきています。
・ Blue Gene/Pのプロセッサー・チップには4個のPowerPC450プロセッサーとIBMが強いembeddedDRAM 8MBと高速ネットワークが入っていますが、これと2GB DDR2メモリーから4-way SMPノードを構成し、1個のコンピュート・カードにしています。72ラック全体で73,728個のコンピュート・ノードになるのでプロセッサー数は4倍の294,912個に達します。
・ ヨーロッパ最大の貴重なシステムなだけにその利用は少数の科学的価値の高いプロジェクトやスケーラビリティの性能向上に貢献できるプロジェクトなどに絞られています。6月にはTop500スーパーコンピューター・リストの発表がありますが、いまのところ世界3位くらいの位置にいるのではないでしょうか。
・ 組み立て現場のスライドショーは見飽きませんが、水冷のせいかはたまたドイツというせいか建屋内はプレファブ風のそっけないものです。
・ JUGENEと同時にNehalem-EPプロセッサーを使用した100テラFLOPS級の二つのHPCシステム、Bull社ベースの汎用クラスター JUROPA (ピーク性能 207テラFLOPS)とITER核融合炉など核融合シミュレーション専用のHPC-FF (HPC For Fusion,ピーク性能 101テラFLOPS)のふたつが紹介されました。システム構成図を見るとファイル・システムにはLustreとIBM GPFS (General Parallel File System)が使用されています。
・ この三つのシステムはヨーロッパ全体の研究活動に利用されます。アメリカや日本の次世代スーパーコンピューター研究開発に触発されたこともあるのでしょう、ヨーロッパのHPCはこのところずいぶん元気になってきています。
2009年05月26日
● バイオにもクラウド・コンピューティングの動き
・ 豚インフルエンザ改め新型インフルエンザも落ち着いた感じで、豚肉が売れなくなったという話も聞きませんから、名称変更については作戦勝ちだったようです。一方で新型と言ったためにばくぜんとした不安をあおられた向きも増えたことでしょうから、名称の影響力は大です。
・ 5/15(金)は同志社大学京田辺校地の会場で、もう15年も続いている超並列計算研究会の50回目という記念すべき会が開かれ、東京方面からも私を入れて10人ほどの方が参加していました。次の日からの全校休校措置のニュースやマスク姿の映像といった変化にはびっくりしてしまいした。
・ こうした突然の対応にさほど合理性を感じないのは、医療に密接に関係しているバイオ分野で、コンピューター・シミュレーションなどを駆使して予測する(例えば前に触れたようなウィルスの変異予測とか感染予測など)ようなアプローチが現状では全く欠けていたのが理由のひとつかもしれません。
(もし予測できたのであればバイオ分野へのコンピューター投資が経済面でもたいへん効果的だったはずですが・・)
・ とは言えそれは主に大学や政府研究機関の役割で、世界の大手製薬企業を見ると売り上げに比べ新薬開発のコストは年々増加する一方。R&Dが新薬競争の生命線だとは言え、自社のR&D用のシステムを拡大するのには限りがあります。そこで処理の一部を自社システムからクラウド・コンピューティングに移行する試みがファイザー、イーライリリー、ジョンソン&ジョンソンなどで始まっています。
→ The New Computing Pioneers
製薬業界はR&Dのセキュリティ保持に特に敏感なだけに驚きです。
・ これらの企業はpay-as-you-go (使用した分に応じて支払う)ベースで クラウド・コンピューティングのサービスを利用します。利点はコストと時間の節約、短所は潜在的にひそむ管理の弱体化とセキュリティとしています。
・ AmazonのElastic Compute Cloud (EC2) サービスを利用したバイオインフォマティクス配列解析プロジェクトと、社内でリソースを新たに購入した場合をイーライリリーが比較した例が少し紹介されていて、クラウドの効果を数字をあげて実証しています。
・ 利点を最大に、短所を最小にするためにはどんな種類のデータをクラウド上のストレージやコンピューターに上げるのがよいか決める必要があります。当然ながら医薬品開発に直接結びつく化合物データをクラウド上で共有することになるとは思えませんが、疾病の複雑な生物学データであれば共有する価値があるはずです。
・ 「クラウドと言っているのはインターネットという意味。分散型ストレージとコンピュータ処理の洒落た名称」という言い方に従えば(?)、バイオ系で進んでいるゲノム情報などのデータベースはじめ疾病生物学データやスーパーコンピューターが近い将来クラウドの一部になり、共有するメリットを追求していくだろうことは目に見えています。
・ 最近では、Applied BiosystemsのSolid 3やIlluminaのGenome Analyzer IIxのように生体のゲノム配列を高速に読み取る次世代シーケンサーと呼ばれる装置が一日で数テラバイトの生画像データやテキストデータをはき出すようになりました。
・ 数テラバイトの生データは組み込まれたソフトウェアで分析・検査され、間引きされて数Gバイトまで縮小されるようですが、それもソフトウェアの性能しだいといったところのようです。(生データの)バックアップを考えると悪夢だとメルク社の専門家は言っています。
→ Next-Generation DNA Sequencing Raises The Bar In Laboratory Data Management
・ バイオ分野で特徴的なこれらの大量データを研究者がクラウド上で共有できるようにし、最先端の解析やシミュレーション手法で最初にあげたような問題解決に結びつけていくのが、これからのバイオ分野におけるHPCの主要な挑戦のひとつになるのでしょう。
・ 5/15(金)は同志社大学京田辺校地の会場で、もう15年も続いている超並列計算研究会の50回目という記念すべき会が開かれ、東京方面からも私を入れて10人ほどの方が参加していました。次の日からの全校休校措置のニュースやマスク姿の映像といった変化にはびっくりしてしまいした。
・ こうした突然の対応にさほど合理性を感じないのは、医療に密接に関係しているバイオ分野で、コンピューター・シミュレーションなどを駆使して予測する(例えば前に触れたようなウィルスの変異予測とか感染予測など)ようなアプローチが現状では全く欠けていたのが理由のひとつかもしれません。
(もし予測できたのであればバイオ分野へのコンピューター投資が経済面でもたいへん効果的だったはずですが・・)
・ とは言えそれは主に大学や政府研究機関の役割で、世界の大手製薬企業を見ると売り上げに比べ新薬開発のコストは年々増加する一方。R&Dが新薬競争の生命線だとは言え、自社のR&D用のシステムを拡大するのには限りがあります。そこで処理の一部を自社システムからクラウド・コンピューティングに移行する試みがファイザー、イーライリリー、ジョンソン&ジョンソンなどで始まっています。
→ The New Computing Pioneers
製薬業界はR&Dのセキュリティ保持に特に敏感なだけに驚きです。
・ これらの企業はpay-as-you-go (使用した分に応じて支払う)ベースで クラウド・コンピューティングのサービスを利用します。利点はコストと時間の節約、短所は潜在的にひそむ管理の弱体化とセキュリティとしています。
・ AmazonのElastic Compute Cloud (EC2) サービスを利用したバイオインフォマティクス配列解析プロジェクトと、社内でリソースを新たに購入した場合をイーライリリーが比較した例が少し紹介されていて、クラウドの効果を数字をあげて実証しています。
・ 利点を最大に、短所を最小にするためにはどんな種類のデータをクラウド上のストレージやコンピューターに上げるのがよいか決める必要があります。当然ながら医薬品開発に直接結びつく化合物データをクラウド上で共有することになるとは思えませんが、疾病の複雑な生物学データであれば共有する価値があるはずです。
・ 「クラウドと言っているのはインターネットという意味。分散型ストレージとコンピュータ処理の洒落た名称」という言い方に従えば(?)、バイオ系で進んでいるゲノム情報などのデータベースはじめ疾病生物学データやスーパーコンピューターが近い将来クラウドの一部になり、共有するメリットを追求していくだろうことは目に見えています。
・ 最近では、Applied BiosystemsのSolid 3やIlluminaのGenome Analyzer IIxのように生体のゲノム配列を高速に読み取る次世代シーケンサーと呼ばれる装置が一日で数テラバイトの生画像データやテキストデータをはき出すようになりました。
・ 数テラバイトの生データは組み込まれたソフトウェアで分析・検査され、間引きされて数Gバイトまで縮小されるようですが、それもソフトウェアの性能しだいといったところのようです。(生データの)バックアップを考えると悪夢だとメルク社の専門家は言っています。
→ Next-Generation DNA Sequencing Raises The Bar In Laboratory Data Management
・ バイオ分野で特徴的なこれらの大量データを研究者がクラウド上で共有できるようにし、最先端の解析やシミュレーション手法で最初にあげたような問題解決に結びつけていくのが、これからのバイオ分野におけるHPCの主要な挑戦のひとつになるのでしょう。
2009年05月17日
● 一社製造体制で、より強化されたのかもしれない日本の次世代スパコン開発
・理研とNECがそれぞれ発表した5/14の次世代スーパーコンピューター研究開発プロジェクト変更の突然のニュースには思わずのけぞってしまいました。
理研:「次世代スーパーコンピュータ・システムの構成を見直す」
NEC: 「文部科学省「次世代スーパーコンピュータ・プロジェクト」への参画形態の見直しについて」
・結局のところNECは(私が期待していたような)ベクトル機のイノベーションにめどがつかず、革新ではなく現状改善を選択したのでしょう。氷冷蔵庫の時代にはやっていた氷屋の最後の生き残りだけは、電気冷蔵庫の時代になっても数少ない固定客相手に競争なしにビジネスを続けられるそうです。ベクトル機ビジネスは、どうしてもこの「最後の氷屋」ビジネス・モデルに見えてしまうのが残念 (ないものねだりか?)。
・ところで、スーパーコンピューター開発競争は、たとえナショナル・プロジェクトの位置づけとは言え、政府ではなくメーカー間の研究開発競争というのが本質です。よく知られているように、アメリカでは政府機関は大ユーザーとしてアプリケーション・ニーズと購入資金を示し、発注から導入までのプロジェクト管理を行なって、メーカーの製品研究開発を加速させ、アプリケーションに必要なシステムを手に入れます。
・そういう観点では、10PetaFLOPSの一番乗り競争は、NECが脱落したいま(その結果として日立も脱落)、理研の次世代スーパーコンピューターを納入する富士通と、米国ローレンスリバモア国立研究所のセコイアを納入するIBMとの間で実質的に行われることになります。
・残る富士通は、理研/NECの発表の前日に次世代スーパーコンピューターに使う予定の新プロセッサーの試作品を公開(「富士通が最速CPU開発、10年ぶり日本メーカー首位」)し、プロセッサーのアーキテクチャーも3月に公表(「富士通、次期スパコン向けHPC-ACEアーキテクチャを公表」)するなど、積極さが目立っています。SPARCアーキテクチャー使用ということから、私のような門外漢にはOracleによるSunの買収の影響が気になりますが、このことは富士通はもちろん百も承知のうえでしょう。
・次世代スーパーコンピューター研究開発プロジェクトは国産三社が担当すると発表されたとき、IBMの知り合いの研究者が一社ではなく三社共同開発というのは信じられない。アメリカでは絶対うまくいかないというようなことを話していました (地球シミュレータはNEC 一社が開発製造を担当した)。
・ベクトル・アーキテクチャーを組み込むという日本らしさはなくなったものの、一社製造体制になったことで海外の競争相手からは、プロジェクトの性能目標の実現性が高まり、より強敵になったと見られるようになることだろうと私は思います。
・一方では情報が不十分なせいか、ベクトル部分の製造は台湾メーカーに頼む?(「NEC abandons Japan's 'next-gen' supercomputer」)と言った妙な海外記事も出たりしています。
ナショナル・プロジェクトとしての価値が最大限になるようにプロジェクトを進めていくためには、今回に限らず理研の次世代スーパーコンピューター研究開発プロジェクトから継続的に、タイミングよく正確な情報が公開されていくということもたいへん重要になってきます。
理研:「次世代スーパーコンピュータ・システムの構成を見直す」
NEC: 「文部科学省「次世代スーパーコンピュータ・プロジェクト」への参画形態の見直しについて」
・結局のところNECは(私が期待していたような)ベクトル機のイノベーションにめどがつかず、革新ではなく現状改善を選択したのでしょう。氷冷蔵庫の時代にはやっていた氷屋の最後の生き残りだけは、電気冷蔵庫の時代になっても数少ない固定客相手に競争なしにビジネスを続けられるそうです。ベクトル機ビジネスは、どうしてもこの「最後の氷屋」ビジネス・モデルに見えてしまうのが残念 (ないものねだりか?)。
・ところで、スーパーコンピューター開発競争は、たとえナショナル・プロジェクトの位置づけとは言え、政府ではなくメーカー間の研究開発競争というのが本質です。よく知られているように、アメリカでは政府機関は大ユーザーとしてアプリケーション・ニーズと購入資金を示し、発注から導入までのプロジェクト管理を行なって、メーカーの製品研究開発を加速させ、アプリケーションに必要なシステムを手に入れます。
・そういう観点では、10PetaFLOPSの一番乗り競争は、NECが脱落したいま(その結果として日立も脱落)、理研の次世代スーパーコンピューターを納入する富士通と、米国ローレンスリバモア国立研究所のセコイアを納入するIBMとの間で実質的に行われることになります。
・残る富士通は、理研/NECの発表の前日に次世代スーパーコンピューターに使う予定の新プロセッサーの試作品を公開(「富士通が最速CPU開発、10年ぶり日本メーカー首位」)し、プロセッサーのアーキテクチャーも3月に公表(「富士通、次期スパコン向けHPC-ACEアーキテクチャを公表」)するなど、積極さが目立っています。SPARCアーキテクチャー使用ということから、私のような門外漢にはOracleによるSunの買収の影響が気になりますが、このことは富士通はもちろん百も承知のうえでしょう。
・次世代スーパーコンピューター研究開発プロジェクトは国産三社が担当すると発表されたとき、IBMの知り合いの研究者が一社ではなく三社共同開発というのは信じられない。アメリカでは絶対うまくいかないというようなことを話していました (地球シミュレータはNEC 一社が開発製造を担当した)。
・ベクトル・アーキテクチャーを組み込むという日本らしさはなくなったものの、一社製造体制になったことで海外の競争相手からは、プロジェクトの性能目標の実現性が高まり、より強敵になったと見られるようになることだろうと私は思います。
・一方では情報が不十分なせいか、ベクトル部分の製造は台湾メーカーに頼む?(「NEC abandons Japan's 'next-gen' supercomputer」)と言った妙な海外記事も出たりしています。
ナショナル・プロジェクトとしての価値が最大限になるようにプロジェクトを進めていくためには、今回に限らず理研の次世代スーパーコンピューター研究開発プロジェクトから継続的に、タイミングよく正確な情報が公開されていくということもたいへん重要になってきます。
2009年05月04日
● インフルエンザとスーパーコンピューティング
・ ブタインフルエンザ (Swine Flu)ウィルスの感染が連日報じられています。この発生状況をインフルエンザ発生地図(2009 H1N1 Flu Outbreak Map)で見ると、交通網経由の感染伝播なことがよくわかります。感染国を塗りつぶした、よく見る地図よりもこの方が正確なイメージになっています。
・ インフルエンザのような感染症の空間分布が時間と共にどう変化していくかは、バイオテロリズム対策と表裏一体ということもあり各国で研究されていると思いますが、たとえば米国ではIBMが開発したSTEMプログラムがオープン・ソースコードとして公開されています。STEMはSpatiotemporal Epidemiological Modeler (時空間疫学モデラー)の略。
・ このSTEMは今年4月に米国エクリブス財団のトップレペル・テクノロジー・プロジェクトになりました。IBMアルマデン研究所の開発メンバーが中心になり大型モデルを作り、大型コンピューターで計算を続けているようです。
・ 始めからBlue Geneスーパーコンピューターを念頭にトリインフルエンザ(Avian Flu)ウィルスの時間とともに起こっていく巧妙な変異とそれへの免疫系モデルを研究しているのがProject Checkmateのスクリップス研究所(Scripps Research Institute)とIBMワトソン研究所の共同チームです。IBMはインフルエンザ(H5N1)ウィルスの巨大分子H(ヘマグルチニン。ウィルス粒子が宿主の細胞表面に強く吸着するための鉤の部分)の分子構造のシミュレーションをBlue Geneでおこなっています。
・ Project Checkmateはいまのところ目的や概要のみが知られています(動画)。詳細な内容については、おそらく今後発表されていくのだろうと思います。
・ インフルエンザのような感染症の空間分布が時間と共にどう変化していくかは、バイオテロリズム対策と表裏一体ということもあり各国で研究されていると思いますが、たとえば米国ではIBMが開発したSTEMプログラムがオープン・ソースコードとして公開されています。STEMはSpatiotemporal Epidemiological Modeler (時空間疫学モデラー)の略。
・ このSTEMは今年4月に米国エクリブス財団のトップレペル・テクノロジー・プロジェクトになりました。IBMアルマデン研究所の開発メンバーが中心になり大型モデルを作り、大型コンピューターで計算を続けているようです。
・ 始めからBlue Geneスーパーコンピューターを念頭にトリインフルエンザ(Avian Flu)ウィルスの時間とともに起こっていく巧妙な変異とそれへの免疫系モデルを研究しているのがProject Checkmateのスクリップス研究所(Scripps Research Institute)とIBMワトソン研究所の共同チームです。IBMはインフルエンザ(H5N1)ウィルスの巨大分子H(ヘマグルチニン。ウィルス粒子が宿主の細胞表面に強く吸着するための鉤の部分)の分子構造のシミュレーションをBlue Geneでおこなっています。
・ Project Checkmateはいまのところ目的や概要のみが知られています(動画)。詳細な内容については、おそらく今後発表されていくのだろうと思います。
2009年04月21日
● SGIはRackable Systemsへ、そしてSUNもOracleに
・4月1日にシリコンバレー出身のSGIが米国Chapter 11(連邦倒産法)を申請し、そのSGIをRackable Systems, Incがたったの$25M (約25億円弱)で買収する計画を発表したのにひき続き、昨日4月20日にはやはりシリコンバレー出身のSun MicrosystemsをOracleが$7.4B (7,400億円弱)で買収することでSunと合意しました。
・IBMへの買収提案が不首尾に終わった後の行方が懸念されていたSunですが、どうやら船に似合った船頭が見つかったという印象です。なぜ最初からOracleに買収を持ちかけなかったのかという気さえします。とはいえ、New York Timesの記事、 「In Sun, Oracle Sees a Software Gem (OracleはSunの中にソフトウェアの宝石を見ている)」によるとOracleの経営者はSunをModern technology companyではあるがHardware companyとは考えていないと話しているというのがひっかかります。
・Wall Street Journalの記事「Oracle Snatches Sun, Foiling IBM (OracleがSunを横取り、IBMをくじく)*」ではNew York Timesとはややニュアンスが違い、SunのHardware部門を利益の出る事業部門にしたいとCatz社長が話したと、Hardware部門への期待があるかのように報じています。
・いずれにしろOracleからは(IBMだったとしても)、買収後のSunには高収益を上げることが要求されている(いた)ので、継続的に金食い虫になる先進的なハードウェア開発の計画や人員については何らかの新しい判断が予想されます。Sunは4月14日にブレードサーバーやInfiniBandなどのネットワーク新ファミリー製品、ストレージ・システム、大型HPCシステムのコンステレーションなどHPC新製品群の大きな製品発表をしています。非常に理解しにくいのは、買収の成否がかかっているこの時期に、買収相手の意向に無頓着とも言えるような長期の製品開発コスト負担を強いる新製品群を発表したことです。
・はたして、Oracle経営者はSunを高収益にできると言い、業界アナリストはOracleがSunに対して大幅なコスト・セービングをするだろうとの予想を先のNY Timesが伝えています。Hardware部門の人間にとっては辛い状況になりそうです。
蛇足) * このWall Street Journalの記事のタイトルにはかなり違和感があります。実際、昨日のNew York Timesの記事「I.B.M. Affirms Earnings Goal Despite Sales Slide (売上下落もIBMは利益目標達成を確認)」の中でも、IBMのCFOのMark LoughridgeがSunの買収の件について、「a Sun deal did not pass muster (Sunの買収案件は合格レベルに達しなかった)」と示唆したとあり、IBMはすでに手を引いていたと見るのが理にかなっているのでは。
・IBMへの買収提案が不首尾に終わった後の行方が懸念されていたSunですが、どうやら船に似合った船頭が見つかったという印象です。なぜ最初からOracleに買収を持ちかけなかったのかという気さえします。とはいえ、New York Timesの記事、 「In Sun, Oracle Sees a Software Gem (OracleはSunの中にソフトウェアの宝石を見ている)」によるとOracleの経営者はSunをModern technology companyではあるがHardware companyとは考えていないと話しているというのがひっかかります。
・Wall Street Journalの記事「Oracle Snatches Sun, Foiling IBM (OracleがSunを横取り、IBMをくじく)*」ではNew York Timesとはややニュアンスが違い、SunのHardware部門を利益の出る事業部門にしたいとCatz社長が話したと、Hardware部門への期待があるかのように報じています。
・いずれにしろOracleからは(IBMだったとしても)、買収後のSunには高収益を上げることが要求されている(いた)ので、継続的に金食い虫になる先進的なハードウェア開発の計画や人員については何らかの新しい判断が予想されます。Sunは4月14日にブレードサーバーやInfiniBandなどのネットワーク新ファミリー製品、ストレージ・システム、大型HPCシステムのコンステレーションなどHPC新製品群の大きな製品発表をしています。非常に理解しにくいのは、買収の成否がかかっているこの時期に、買収相手の意向に無頓着とも言えるような長期の製品開発コスト負担を強いる新製品群を発表したことです。
・はたして、Oracle経営者はSunを高収益にできると言い、業界アナリストはOracleがSunに対して大幅なコスト・セービングをするだろうとの予想を先のNY Timesが伝えています。Hardware部門の人間にとっては辛い状況になりそうです。
蛇足) * このWall Street Journalの記事のタイトルにはかなり違和感があります。実際、昨日のNew York Timesの記事「I.B.M. Affirms Earnings Goal Despite Sales Slide (売上下落もIBMは利益目標達成を確認)」の中でも、IBMのCFOのMark LoughridgeがSunの買収の件について、「a Sun deal did not pass muster (Sunの買収案件は合格レベルに達しなかった)」と示唆したとあり、IBMはすでに手を引いていたと見るのが理にかなっているのでは。
2009年04月13日
●「脳科学の革新的な発展を目指して」東北大バイオフォーラム
2005年にBlue Brain Projectが引き金を引いたこともあって、脳科学研究へのHPCの利用への関心が一段と高まっていますが、脳科学そのものについては日頃詳しい内容を聞く機会もあまりなく、HPC研究者、技術者にとって脳科学研究分野での交流・協力がしにくい状況なのではないかと思います。
そうした中、「脳科学の革新的な発展を目指して」をテーマに東北大学が東京を会場にバイオフォーラムを開催しますので紹介します。東北大脳神経科学COE拠点のメンバーをはじめ、ブレインコンピューティング研究の矢野雅文通研所長やあの川島隆太教授など、東北大の組織を横断した講演者によるフォーラムになっていて力が入っています。
JAXAも共催していますが、これは「きぼう日本実験棟」利用による新しいバイオ研究が進められているためで、これについてはランチョンセミナーで聞くことができます。
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第2回 東北大学バイオフォーラム
「脳科学の革新的な発展を目指して」
→ http://www.dialogue2005.com/tohoku2/
日程: 2009年6月5日(金) 10:30〜18:30 バイオフォーラム(無料)
12:20〜13:20 ランチョンセミナー(無料)
18:40〜19:30 交流会(有料)
場所:東京ステーションコンファレンス(東京駅サピアタワービル6階)
主催:東北大学 共催:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
プログラム
→ http://www.dialogue2005.com/tohoku2/program.html
「東北大学の産学官連携への取組」
渡邉 誠 (理事:研究・教育研究基盤推進担当)
「基調講演 東北大学のライフサイエンス戦略」
飯島 敏夫 (副学長: ライフサイエンス担当)
「性行動の引き金を引く脳細胞を同定する
山元 大輔 (生命科学研究科・生命機能科学専攻教授)
「脳の設計図とその書き換えによる自在な脳の作り替え」
仲村 春和 (生命科学研究科・生命機能科学専攻教授)
「創薬研究の新地平:血液脳関門ファーマコプロテオミクス」
寺崎 哲也 (薬学研究科・医療薬科学専攻教授)
「筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する新規治療法の開発」
青木 正志 (医学系研究科・医科学専攻講師)
「脳と機械の融合を目指すニューロ・マシン融合デバイス(νBMD)の開発」
小柳 光正 (工学研究科・バイオロボティクス専攻教授)
「無限定環境に適応する脳の創発機能」
矢野 雅文 (電気通信研究所・ブレインウェア実験施設教授)
「経頭蓋磁気刺激による脳障害の治療と新たな刺激装置の開発」
出江 紳一 (医工学研究科 教授)
「脳科学と社会」 川島 隆太 (加齢医学研究所 教授)
ランチョンセミナー 『宇宙から地球へ:新しいバイオ研究の夜明け
〜きぼう日本実験棟利用の現状と将来〜』
”線虫の宇宙環境におけるRNA干渉とタンパク質リン酸化”
東谷 篤志 (生命科学研究科・生態システム生命科学専攻教授)
”微小重力下における根の水分屈性とオーキシン制御遺伝子の発現”
高橋 秀幸 (生命科学研究科・生態システム生命科学専攻教授)
交流会の事前登録および参加登録
→ http://www.dialogue2005.com/tohoku2/entry.html
世話人会:
代表 中山 啓子 (医学系研究科 教授)
河野 雅弘 (未来科学技術共同研究センター教授)
松浦 祐司 (医工学研究科 教授)
宮本 明 (工学研究科 教授)
西島 和三 (未来科学技術共同研究センター客員教授)
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そうした中、「脳科学の革新的な発展を目指して」をテーマに東北大学が東京を会場にバイオフォーラムを開催しますので紹介します。東北大脳神経科学COE拠点のメンバーをはじめ、ブレインコンピューティング研究の矢野雅文通研所長やあの川島隆太教授など、東北大の組織を横断した講演者によるフォーラムになっていて力が入っています。
JAXAも共催していますが、これは「きぼう日本実験棟」利用による新しいバイオ研究が進められているためで、これについてはランチョンセミナーで聞くことができます。
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第2回 東北大学バイオフォーラム
「脳科学の革新的な発展を目指して」
→ http://www.dialogue2005.com/tohoku2/
日程: 2009年6月5日(金) 10:30〜18:30 バイオフォーラム(無料)
12:20〜13:20 ランチョンセミナー(無料)
18:40〜19:30 交流会(有料)
場所:東京ステーションコンファレンス(東京駅サピアタワービル6階)
主催:東北大学 共催:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
プログラム
→ http://www.dialogue2005.com/tohoku2/program.html
「東北大学の産学官連携への取組」
渡邉 誠 (理事:研究・教育研究基盤推進担当)
「基調講演 東北大学のライフサイエンス戦略」
飯島 敏夫 (副学長: ライフサイエンス担当)
「性行動の引き金を引く脳細胞を同定する
山元 大輔 (生命科学研究科・生命機能科学専攻教授)
「脳の設計図とその書き換えによる自在な脳の作り替え」
仲村 春和 (生命科学研究科・生命機能科学専攻教授)
「創薬研究の新地平:血液脳関門ファーマコプロテオミクス」
寺崎 哲也 (薬学研究科・医療薬科学専攻教授)
「筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する新規治療法の開発」
青木 正志 (医学系研究科・医科学専攻講師)
「脳と機械の融合を目指すニューロ・マシン融合デバイス(νBMD)の開発」
小柳 光正 (工学研究科・バイオロボティクス専攻教授)
「無限定環境に適応する脳の創発機能」
矢野 雅文 (電気通信研究所・ブレインウェア実験施設教授)
「経頭蓋磁気刺激による脳障害の治療と新たな刺激装置の開発」
出江 紳一 (医工学研究科 教授)
「脳科学と社会」 川島 隆太 (加齢医学研究所 教授)
ランチョンセミナー 『宇宙から地球へ:新しいバイオ研究の夜明け
〜きぼう日本実験棟利用の現状と将来〜』
”線虫の宇宙環境におけるRNA干渉とタンパク質リン酸化”
東谷 篤志 (生命科学研究科・生態システム生命科学専攻教授)
”微小重力下における根の水分屈性とオーキシン制御遺伝子の発現”
高橋 秀幸 (生命科学研究科・生態システム生命科学専攻教授)
交流会の事前登録および参加登録
→ http://www.dialogue2005.com/tohoku2/entry.html
世話人会:
代表 中山 啓子 (医学系研究科 教授)
河野 雅弘 (未来科学技術共同研究センター教授)
松浦 祐司 (医工学研究科 教授)
宮本 明 (工学研究科 教授)
西島 和三 (未来科学技術共同研究センター客員教授)
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