2007年01月

2007年01月30日

●「シミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築」領域シンポジウム

・1月22日-23日にJSTの「シミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築」領域研究のCRESTさきがけの研究課題の報告会がありました。

・勉強のつもりで参加しましたが、内容が非常に面白かったのに加え、先進的な分野でずいぶん高いレベルの成果が出ているという印象を受けました。ここでCRESTとさきがけというのは「国が定めた戦略目標の達成に向けた目的志向型の基礎研究」という位置づけです。部外者から見て、そうした特長が生かされているといいたくなるほど、いずれも活気のある内容でした。

・シンポジウムの発表で目についたキーワードは、「統合化」「マルチスケール・マルチフィジックス」、そして「研究」ではなく「構築」「開発」でした。

使用しているコンピュータは、小がノートパソコン、大はスーパーコンピューターの上位クラスのシステムまでとバライエティに富んだものでした。

・もっとも、コンピューター・シミュレーションの基礎があらかた出つくした感のある1960-1970年代の超大型コンピューターの性能がせいぜい5MIPS(Million Instructions Per Second)程度、メモリーサイズも640Kバイト(*)程度だったわけですから、その数百倍以上ある現在のノートパソコンの性能をもってすれば何でも一通りはできるわけです。

Linuxクラスターをプラットホームにしての研究開発もポピュラーになりました。ラックマウント型やブレード・サーバーにすることで設置スペースはセーブできますが、一方電力消費はプロセッサー数に比例して増えていきます。研究棟の許容電力の大半を使ってしまう状況になって他に迷惑をかけてしまうので、やむなく民間工場の一部を借りてクラスター・システムを設置しているという苦労話も紹介されました。

・研究開発の対象分野は数値計算法、ナノデバイス、材料設計、宇宙、ライフサイエンスなど多岐にわたったものですが、発表された成果はいずれも高いレベルを感じさせるもので、個人的には40分の発表が短いくらいです。

・その中でも心臓を対象に細胞のFEMミクロモデルを経由して心臓全体のマクロなFEMモデルへ統合し、力学、化学、電気現象を考慮してモデル化した心臓シミュレータの開発についての発表(東大 久田俊明教授)が個人的にはきわめて刺激的でした。

(*)1971年に私が論文を書くとき使用したIBM S/360 model 75 (科学技術計算でベストセラーとも言える高性能大型システム) が640Kバイトのメモリー。仮想記憶になる前のシステムです。

2007年01月21日

● SC2006不参加報告 - 小柳レポート特別版(?!)が発行に.

・SC06の小柳レポートが小柳先生不参加のために発行されないのは何とも残念、という多数のファン(?)の声に応え、ついに出してくれました。

・名づけて"SC2006不参加報告"です。小柳先生曰く、

「筆者はこれまでこのシリーズの多くの会議に出席してレポートを書いてきたが、今年は工学院大学に転任して、ちょうど推薦入学の時期に当たってしまい、出席できなかった。そういうわけで参加報告は書けないが、継続性を保つために、入手した資料を使って、簡単な「不参加報告」を書くことにした。参加者の方などで、お気づきの点があればお教え下さい。」

・と謙遜気味ですが、実際の内容はとても"不参加報告"だとは思えない密な記述になっています。

「2007年のリノでのSCには是非とも参加したいと思う」と力強い宣言。ことしは期待大です。

2007年01月20日

● HPCS2007から

つくば国際会議場・今週の水・木と、つくば国際会議場で開催されたHPCS2007に行ってきました。つくばエクスプレスのおかげで、つくばも出張というよりは通勤に近い感覚で往復できるようになってきました。

・講演発表だけでなくポスター発表も内容がよかったHPCS2007でしたが、個人的に特に興味を引いたもののひとつは、4倍精度あるいは拡張精度についての発表で、いずれも現行の倍精度演算用のハードウェアをそのまま利用して、Real*16で変数を定義したときの演算速度にくらべ、独自のアルゴリズムを開発することではるかに高速に処理できることを示したものでした。

Cell BEの性能評価がさっそく二件(筑波大澤井さん他、東北大ワンさん他)も発表されていたのはちょっと驚きでしたが、CellのSPE数にスケーラブルになるように性能を引き出していてうまくCellを使いこなし始めているなという印象を持ちました。

・使用したCell BEのシステムは、それぞれ東芝提供のリファレンス用システムとソニーのPLAYSTATION3で、ユーザーが使用できるCell BE 1個あたりのSPEの数もMaxの8個ではなくそれぞれ7個、6個だったりし、高価なXDRメモリーのサイズも異なってはいましたが、ブログラミング・モデルがいままでと異なるというハードルを越えて、このような性能評価の発表が早々と出てくるのを見るとCell BEを使用したHPC事例がこれから増えてきそうな予感がします。

Gridの発表の中で、日本と海外のスーパー・コンピューター資源を利用し長期間にわたってフラグメント分子軌道法(FMO)による並列計算を実際におこなった産総研の池上さん他の発表がグローバル・スケジューリング等のメカニズムや経験談も含め、非常に具体的な内容で私はたいへんおもしろかったです。

初日の夕方にあった懇親会も盛会でした。Cell BEや4倍精度計算といった新しい話題も加わり今年もHPC分野は活発になりそうです。

2007年01月14日

● テラソフトがHPCコンソーシアムを立ち上げし、hack-a-thon開催。

・ コロラドにあるテラソフトが正月明けの10日に、HPCコンソーシアムを立ち上げました (ちなみにテラソフトのテラは単位のTeraではなく大地の意味のTerraの方)。

・ このテラソフト社というのは、Yellow Dog Linux for PLAYSTATION 3を提供したり、PS3で大型のクラスター・システム(ライフサイエンス向けなので名前は確かイーコライとアメーバとなっていました)を構築・販売すると発表するなど最近耳にする会社です。

・ さてこのHPCコンソーシアムが1月20日から一週間コロラド州デンバーでhack-a-thonというイベントをします。

hack-a-thonというのは、ハッカーとマラソンの合成語だそうですが、要はプログラムを持ち寄って朝から夜中までプロ仲間でコーディングに熱中することを指すようです。

・今回のhack-a-thonでは、Cell BEで高速にプログラムを走らせるようにするのが目的で、参加申込みもすでにArgonne National Lab, Los Alamos National Lab, Lawrence Livermore National Labや大学などからあるとのことです。IBM、マーキュリー、テラソフトからのプロももちろん参加するでしょう。

・カレンダーを見ると、スキーの日というのもありますが、hack-a-thonと言うだけにCode, code, code!という日も並んでいます。

・IBMやマーキュリー・コンピューター・システムズ、Power.ORGもスポンサーになっていて、hack-a-thonの参加者はPS3IBM QS20などをアクセスしてコーディングできるようになっています。余談ですが使用したPS3は$650で持ち帰れます。

その昔、並列コンピュータ(IBM SP1)が登場したときにべクトル・プロセッサーのコードを並列化するためのハンズオン・ワークショップを1〜2年ほどIBMのお客様対象に、IBM SP1が置けた川崎事業所で続けたことがありました。あれは今で言えば並列化hack-a-thonだったかも。

2007年01月10日

● 第2回「シミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築」領域シンポジウム

第2回 「シミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築」領域シンポジウムが都内で1月22日(月)〜23日(火)に開かれます。

・このシンポジウムは「医療・情報産業における原子・分子レベルの現象に基づく精密製品設計・高度治療実現のための次世代統合シミュレーション技術の確立」を戦略目標にした、科学技術振興機構CREST プログラム 戦略的創造研究推進事業「シミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築」研究領域の報告会です。

・1セッションが40分で2日間に渡り、全部で16の報告が予定されていますが、内容からは最近のこの分野のシミュレーションの進歩を知るためのうってつけの機会にも見えます

・平行してポスター発表もあります。

・参加費は無料で、研究交流会のみ会費3000円となっています。

● HPCS2007が来週つくば国際会議場で開催

2007年ハイパフォーマンスコンピューティングと計算科学シンポジウム (HPCS2007)が来週1月17日(水)-18日(木)につくば国際会議場(EPOCHAL TSUKUBA)で開催されます。

・今日1月10日(水)中に申し込みページから申し込むと参加費がかなり割安です。 

・ テーマは大きく次の三つから構成されています。
- 1. ハイパフォーマンスコンピューティングによる計算科学の各分野の成果と経験
- 2. 高速・高性能計算のための計算機システムの利用技術及び性能評価
- 3. 高速・高性能計算のためのソフトウェア技術

・ 二日間に渡るプログラムの中で、私はCell BEに関する2件の論文や、4倍精度計算についての論文などが目にとまりました。

2007年01月04日

● A Happy New Year!

みなさま、新年おめでとうございます。

門松・ 昨年9月の頭にスタートしたこのHPCブログですが、正月休みに訪問者の方の数をLivedoorからのデータで勘定したら延べ3,703人の方が見て下さっていました。ありがとうございます。

・ 2007年もぼちぼちエンジンをかけていきたいと思いますが、今日は新年ご挨拶の代わりに、IBMの営業拠点となっている箱崎事業所の正面玄関に飾ってあった門松をご紹介します。

・ 最近門松は近所でもあまり見かけませんが、IBMは多国籍企業ということなのでしょうか、正月松の内は門松を、12月にはクリスマスツリーを箱崎事業所に飾っています。

それでは2007年 Cheer! HPCをよろしくお願いいたします。

cheer_hpc at 23:33|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!一般  | 閑話休題