2007年05月

2007年05月23日

●POWER6搭載システムが日本でも発表

・おとといの米国IBMでの発表に続いて、日本でもPOWER6プロセッサー搭載システムが発表されました。

"世界最速かつ省電力な次世代プロセッサー搭載のUNIXサーバー"とあるとおり、クロックが最大4.7GHzのIBM System p モデル570です。

HPC系のベンチマーク性能もLINPACKで1-coreのときに15.53GFLOPS,最大の16-coreでは239.4GFLOPSと高性能です。

・SPECはSPEC2000ではなく、新しいSPEC2006になっていますがこれもLINPACK同様にBest-in-classとなっています。

発表によると、"前世代のPOWER5™に比べコアあたりで約2倍の性能向上を達成しました。一方でサーバーの動作や冷却に必要な電力消費量はPOWER5と同等に抑えられています。"とあり、国際会議などで技術発表されていたあたりはきちんと実現されているようです。


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2007年05月20日

●"ペタフロップス・コンピューティング"単行本紹介

・最近の読書離れで専門書の新刊が減っている中、最近ではまれな例になると思いますが、HPCの専門書が私が尊敬する日本の4人の共著者により発行されました。

ペタフロップス・著者は、谷啓二氏、奥田洋司氏、福井義成氏、上島豊氏、そして監修が矢川元基氏と、いずれもHPC分野に長年取り組まれ、開発経験も豊富な第一人者の方々ばかりです。

・タイトルは「ペタフロップス・コンピューティング」。表紙には地球シミュレータの絵が使われていますが、本書が地球シミュレータの発案者であり、プロジェクトリーダーの故三好甫先生に捧げられているということを除けば、ほとんど地球シミュレータについての記述はなく、タイトル通り次世代のペタフロップス・クラスのスーパーコンピューターについての技術的な内容になっています。

・ふだん利用する首都圏のデパートの中規模ブックストアにはなかったので、都心の大型書店でないと置いていないかもしれません。こういうときによく利用するamazonでは納品が3-5週間になっています。

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2007年05月09日

●先進的計算基盤システムシンポジウム

・5月23日(水)〜25日(金)に千代田区の学術総合センター講堂・会議室で情報処理学会等が主催する「第5回先進的計算基盤システムシンポジウム SACSIS 2007」が開かれます。

Advanced ComputingSystems and Infrastructuresの二つを対象にした講演やポスター発表、展示等が行われます。さらに、

・1日目に招待講演として,「次世代スーパーコンピュータ開発プロジェクトについて」(理化学研究所 横川三津夫氏)があります。横川さんは地球シミュレーター開発も過去手がけられ、現在はハードウェア開発チーム・リーダーというキーパーソンです。

次世代スーパーコンピュータの開発実施部門の理化学研究所次世代スーパーコンピュータ 開発実施本部のホームページには、予算規模が大きく国内外から注目されているプロジェクトのわりに、専門性の高い情報がまだ少ないので横川さんの講演は貴重です。

・2日目の基調講演には,HPCではいわずと知れたJack Dongarra 氏による「An Overview of High Performance Computing and Challenges for the Future」があります.

・また「Cellスピードチャレンジ2007」の発表もこの会場で2日目に予定されています。これはCell/B.E. を対象とするマルチコア・プログラミング・コンテストですが、すでに規定課題部門、自由課題部門ともに受賞チーム名などがホームページ上に発表されていました。

掲載されている参加チームのデータを見ると、プログラミングが難しかったかのようにも見えますが、本当のところはどうだったんでしょうか。(興味津々)

・今週 5月11日(金)まで早期申込割引が適用されて、当日申込みより1万円安くなっています。

それでも非会員の私の場合だと、早期申込割引でも35,000 円。かなり敷居が高い・・

●またまたインターネット転送速度の世界記録を更新し、完結へ

・10Gbpsインターネット・ネットワークの速度記録を塗り替えてきた東大 平木教授をはじめとする国際共同研究チームが、去年の暮れに実施した実験結果がInternet2 Spring Meetingで世界記録として認定されたという発表がWIDEプロジェクトから5月8日にされています。

・ここのところSCの展示会場での実証実験や、Bandwidth Challengeでの連続受賞などでHPC分野での名物となってしまった感がある10Gbpsインターネット・ネットワーク転送速度の世界記録更新ですが、ついに記録を30%アップし、完結ということです。

・シカゴ、ニューヨークを中継点に、東京-アムステルダム間往復32,372 kmの10Gbpsインターネット・ネットワークを使い、2台のPCサーバー間で事実上の上限である、ピーク値の99%を使い切ったということからIPv6による最終記録樹立としています。

・@ITが「DVD転送が5秒から4秒に、東大がネット最高速を更新」というたいへんわかりやすい解説をしています。

・この世界記録はIPv6 Internet Land Speed Recordといわれ、9つのルールにしたがって実験がおこなわれています。たとえば最低でも地上で100km以上離れた区間で10分間連続してデータ転送していること (ルール1)とか、普通に利用されている高性能研究教育用ネットワークを使用すること(ルール2)とかいろいろあります。

・特に面白いのはルール4の、使用するハードウェアとソフトウェアはすべて米国のInternet2コミュニティのメンバーが購入できるものまたは、オープンソースとして提供されているものに限るという点です。要は、記録認定後はだれでも今回の記録と同じ性能を共有できることを保障しているわけですね。

今回の内容については平木教授がリードしているData Reservoir Project / GRAPE-DR プロジェクトのサイトに詳細に載っています。

それにしても、ここまで実現してしまったエネルギーと情熱にはただ脱帽です。


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2007年05月04日

●5月連休とDeep Blue

・5月連休は遠出を控えたせいか、古いDVDや記録ビデオを思いつくまま見ることができました。

・その中に、NHKがBS特集として制作した、チェスの歴史の中で最強と言われる天才チェス・チャンピオンのカスパロフと1997当時のスーパーコンピューターDeep Blueのチェス・マッチを記録した番組「世紀の頭脳対決」に再び10年前の強烈なこの出来事を思い出しました。
さすがにNHKはすばらしくよい特集番組をこの時作っていました。

第一局目は、カスパロフが100年間の著名な序盤戦の定石すべてを記憶しているDeep Blueに対抗して意表をつき、ミスを誘う作戦が功を奏して、カスパロフが難なく勝ち、残りの試合も楽勝と感じさせたものでした。

第二局目は、Deep Blueが先手優勢で、中盤戦に決め手となるクインをカスパロフ陣地にポンと打てばDeep Blueが勝利と、どの観戦したグランドマスター達が思っていたところ、Deep Blueは制限時間いっぱいの6分の長考に入り、最後に全然別の駒を動かしたというのが勝負の分かれ目になったわけです。

・カスパロフがすごいのは、自分の次のランクのグランドマスター達がそう思っていた先を読んでいて、クインの手が来たら反撃して打ち取る手をすでに考えていた点です。

・にもかかわらず、Deep Blueがさらにその手を見破って勝てる手を打ってきたのでカスパロフはショックを受け、この試合に負け、その後もこのとき受けた精神的なショックから完全に立ち直れずに三引き分け、そして最後にたぶん彼のミスから一敗して9日間の勝負がついてしまいました。

・この歴史的二局目がちょうど今から10年前の今日(1997年5月4日)マンハッタンで行われました。

・Deep Blueはこのとき一秒間に2億手を読む演算能力を持っていたので、カスパロフ同様に(?)クインという決め手と思われる手を打った次の次へと読んでいきます。そして先へ行くにつれ評価関数のスコアが落ちていくので、これは危ないと判断し、他にもっとスコアの良くなる手がないかと制限時間いっぱいを使って調べ直し、11手先に発見できたよりよい手につながる手をそのとき打っていたのです。

・カスパロフがショックを受けた理由は、相手が金属の箱であれ、そこから極めて高度な知性をかいま見たからです。

・そういう意味では、ゲーテが知性を測る試金石と言ったチェスについて常人が及ばない最高の能力を持ったチャンピオンと、スーパーコンピューター(+プログラム+データペース)との試合はコンピューター・サイエンスの画期的な実験といえますし、いろいろ重い示唆を含んでいました。

・設計したIBM研究者側も、Deep Blueの打つ予想もしない手の理由を即座には理解できなくなっていたというのも興味深いところです。

・BS特集では、この複雑な思考過程を実にわかりやすくよく分析していてもう一度再放送したらいいのでは、と思うほどです。

このDeep Blue立役者の五人の研究者のひとり、Hsu博士とはサンノゼで開催されたSC1997の会場で次の研究テーマには何を考えているの等と、とりとめのない立ち話をしたことがありますが、気さくで温和な若手研究者という印象でした。


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