2007年06月

2007年06月27日

●Top500リストの2007年6月版がリリース

・ドレスデンで始まったISC07で恒例のTop500リストの2007年6月版が今日リリースされました。

Topは不動で、ローレンスリバモア国立研究所のBlue Gene/Lの280.6 TFLOPS。Blue GeneはTop10に4システム、Top500では勘定すると34システムがリスト入りしています。今日発表されたばかりのBlue Gene/Pの8,192プロセッサーのシステムも31位にいますが、これはIBMロチェスターとなっているのでロチェスター工場で測定したものでしょう。

Top10中IBMが、Blue Gene 4システムに加えてASCパープルとバルセロナ・スーパーコンピューティング・センターのMareNostrumブレード・システムの計6システムを占めています。

Cray Inc.が2位、3位、Dellが8位、SGIが10位を取ったというのがメーカー別の分類です。

Hewlett-PackardはTop50には一台もランク入りしてませんが、Top500全体で見るとシステム数では今回IBMを小差で抜いて1位でした。性能累計ではIBMがだんとつで1位という状況は変わっていません。

日本はというと、東工大のTSUBAMEグリッド・クラスターが14位、そして地球シミュレーターが20位と、前回とおなじ顔ぶれとなっていて超大型システム導入が最近なかったことがわかります。Top500リストには前回30システム入っていたのが今回はさらに減って23システムとなっています。

・この23システムの中には 5システムのBlue Geneが含まれていたりするので国産メーカー製はTSUBAMEを入れて13システムと激減します。

・異色なのは、国内23システムの中に三菱UFJ証券が193位でランクインしていることです。OSがWindows CCS2003。Xeon dual core(3 GHz)のIBM HS21ブレードによるクラスター・システムです。

Top500に表れたこうした日本のHPCシステムについてのシビアな状況を見ると、たとえばベクトル機全盛だった時のように、海外に一目おかれるほどの高度なHPCの活用を来るべきペタFLOPS時代に向けてうまく実現していけるのだろうかと考えてしまいます。

まずは焦点を絞ったHPC応用分野について学術的な高い成果をあげるための戦略を立て、それにそってTop500の上位にランク入りできるさまざまな最新システムを継続的に国内に設置していくのも案外よいのでないか、と個人的には思ったりしていますが、さてどうでしょうか。


●3ペタFLOPSでBlue Gene/Pが登場

Blue Gene/Lの次のモデルとして昨年のSC06会場でノードカードがさりげなく展示されていたBlue Gene/Pがきょう米国IBMから発表されました。(日本語訳もすぐ出ていました。)

・それによると、ピーク性能で3ペタFLOPSへスケールアップできるとあり、ペタFLOPSが手に届く時代に入ってきました。

・Blue Gene/Pが強いのは性能がスケールアップできるのに加えて、それを低電力・省スペースという方針で徹底している点ですが、この発表でも"A Green Design Ahead of its Time"と、いま最大関心事の環境面への影響を考えた設計ということを強調しています。

Blue Gene/Pチップ一個には850MHzのPowerPC 450プロセッサーが4個入っていてSMP構成をとります。チップあたりでは13.6GFLOPSのピーク性能になります。Blue Gene/Lではこれが5.6GFLOPSでした。このチップを32個積んで1枚のノードカードが出来上がり435GFLOPSになります。1ラックには32枚のノードカードが入るので、ラックあたり14テラFLOPSのピーク性能です。その結果72ラックで1ペタFLOPSのピーク性能に到達します。

・Top500の1位にあるローレンスリバモア国立研究所のBlue Gene/Lは最大構成の64ラックになっていますが、スペース的にはあと8ラック加えると1ペタFLOPSになる勘定です。設計上シビアなラックあたりの発熱量はBlue Gene/Lの場合と同程度に抑える必要があることを考えると、グリーンデザインとうたっている様に、性能あたりのシステム消費電力は大幅に改善されているはずです。

・Blue Gene/Lが最大で64ラックまで拡張できたのが、Blue Gene/Pは216ラックまで拡張できるので3ペタFLOPSがピーク性能の上限になります。

・Blue Geneへの期待と評価が定着してきた証拠でしょうが、Blue Gene/Pはすでにアルゴンヌ国立研究所ブルックヘブン国立研究所マックス・プランク・ソサイアティといった大研究所で導入を決めたとあります。



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2007年06月20日

●次世代スーパーコンピュータの概念設計に対する評価報告書

・「開発主体の理化学研究所が作成した次世代スーパーコンピュータの概念設計」に対する評価報告書(URLは http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/toushin/07061321/all.pdf )
が文科省の研究計画・評価分科会のサイトに掲載されているのをe-Blueridgeの広瀬氏に教えていただきました。

・評価は科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 情報科学技術委員会 次世代スーパーコンビュータ概念設計評価作業部会の14名の錚々たる委員が担当されていて、興味深い評価がなされています。

・この評価を辛口と感じるか甘口と感じるかはそれぞれでしょうが、日本の威信をかけた1100億円プロジェクトという位置づけから、こうした適切なタイミングでの情報発信はたいへん望ましいことです。

・アメリカ並みとはいかないまでも、世界中のHPCコミュニティに対しても隠すよりはこの種の情報発信を今からタイムリーにしていく方がいろいろな評価が積み重なっていって、高い信頼醸成へと結びついていくと考えるのが妥当でしょう。

というのも、日本メーカーがこのプロジェクトを通じてHPC分野での世界的な競争力を取り戻すことにならないと例え世界一のスーパーコンピュータが完成してもそれは片手落ちというもの、と個人的に思っているからですが、これは文科省でなく経産省の宿題? 結局はメーカー自身だというのが正論でしょうが。

cheer_hpc at 21:41|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!一般 

●筑波大・東大チームがQCDで「強い力」の起源解明

・またまたQCD(量子色力学)コンピューター・シミュレーションによる快挙です。

・筑波大学の今日の発表資料によると、湯川秀樹博士の中間子理論がクォークを基礎にその正しさを検証しただけでなく、強い力の起源も世界で初めて解明に成功したとあります。

・東海村に建設中のJ-PARC実験の理論的支柱を与えることにもなると、実験・理論・コンピューターシミュレーションが素粒子物理学の世界で不可欠な関係に成っていることがわかります。

・この計算にはKEK(高エネルギー加速器機構)のBlue Geneで3000時間(4ヶ月)かけたそうです。

・もちろん、コンピュータだけでなく頭脳による論理的飛躍が必要でした(発表資料から)

cheer_hpc at 20:14|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!ニュース 

●Webセミナ: HPC新時代におけるIBMのイノベーション

・日本IBMのWebサイトで、"大学イノベーション 〜ITとの連携〜"と銘打って五つのWebセミナーが行われています。その五番目が「HPC新時代におけるIBMのイノベーション」のWebセミナーで、Cell Broadband EngineやBlue Gene、そして最速が4.7GHzのPOWER6などについてロードマップ(開発の将来計画を時間軸に沿って示したもの)などが紹介されています。

・長いだけのWebセミナーは嫌われるのか、これは5-6分程度で要領よくまとめた紹介になっています。

・Cell/B.E.のロードマップが新しくなっているのがわかります。昨年のロードマッブにくらべて、HPC分野にとってもさらに魅力的になっていくことがはっきりしてきたという印象です。

ロードマップを積極的に示す態度は、もしかして最近の米国IT企業だけの特徴かもしれません。ユーザーに取っては好ましいわけですが、メーカーからみれば実現できなかったり遅れたりした場合の信頼感低下というリスクもありますから自信がないと厳しい世界です。そのモチベーションはなんと言っても競争に勝ちたいという意志にあるのでしょう。

2007年06月08日

●SPECはお好き?

ここでいうSPECというのは仕様のSpecではなく、ベンチマーク性能としてよく使われているSPEC_intとかSPEC_fpとかのSPEC CPUの方です。いまだに好きになれないベンチマーク指標ですが最近はあらゆるところで使われています。SPEC CPUがもともとミニコンの世界から出て来た指標で、大型システムの世界では使っていなくてなじみがなかったというのもありますが、どうもそれだけではないようです。その理由はたぶんコンセプトがすっきりしないということです。まずその点を四つあげると、

1. 呼び名(版)が次々に変わっていく ー SPEC CPU92、SPEC CPU95、SPEC CPU2000、そして今年からはSPEC CPU2006になりました。

2. 版が変わるたびにベンチマークの規格が変わる ー 簡単にいうとSPEC2000ではインテジャーについては12個のプログラム、フローティング・ポイントについては14個のプログラムで計算時間を測定していました。ところがSPEC2006になるとこれが変わって、インテジャーが別の12個のプログラム、フローティング・ポイントについては17個にプログラムが増えます。一事が万事で、これではSPEC CPUといいつつ版が違うベンチマーク間の性能データに互換性がありません。不便ですし、理解しにくいベンチマーク・コンセプトです。

3. 加えて、ペンチマーク性能値が相対値表示である ー これはよく知られていることですが、SPEC CPU92では5MHzのDEC Vax11/80というミニコンの性能値を1.0としたノーマライズ値を使いました。以降もノーマライズ値を使用するという方針は変わらず、SPEC CPU95では40MHzのSun Sparc Station 10/40、CPU2000では300MHzのSun Ultra 5/10、CPU2006では296MHzのSun Ultra Enterprise 2というように、これらの計算時間でノーマライズします。いわば校正原器が版ごとに変わるということで違和感があります。さらにCPU2000では上の基準機の性能を100.0にしたため、SPEC_int が1,345などびっくりする高い値に跳ね上がりました。CPU2006 では一転して元の1.0に戻しています。

4. SPEC CPU値は相対性能値の幾何学平均値 ー インテジャー、フローティング・ポイントそれぞれ10個以上のプログラムの測定値からどうやって一個のSPEC_intとSPEC_fp値をだせるかということですが、これはよくするように個々のプログラムの相対性能値の幾何学平均を取り、一つの値にしています。そのため同じSPEC CPU値でも元々の素性というか、29個のプログラムの性能分布は全然違うということもありえます。こういう決め方にもいかにも安直という印象を受けてしまいます。

こうしたややこしさと不透明さから私はSPEC CPU値は好きになれないのですが、それにしてもどうしてこういう気持ちの悪い仕様が続いてきているのでしょうか。

SPECと対局にあるのがLINPACKベンチマークです。こちらはFLOPSという絶対性能による評価な上にプログラムも一個かつ不変です。このためTop500リストにあるような1993年からのスーパー・コンピューターの長年の性能変遷もクリアに見えてきます。

物理出のSimple is Bestをよしとする気風なこともあってか、私はLINPACKの方がずっと好ましいですね。

cheer_hpc at 12:29|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!閑話休題  | 一般

2007年06月02日

●日本でも大規模金融計算グリッドシステムに着手

"野村證券の金融特化型グリッド基盤の構築プロジェクトを開始"のニュースが、日本アイ・ビー・エム株式会社とニイウス株式会社の連名で発表されています。

・金融業務においてよりリアルタイムに近い計算処理が必要になって来ているため、野村證券金融経済研究所 金融工学研究センターがそうしたニーズに対応するためブレードサーバーによるグリッド基盤構築の検証を開始するそうです。

・「すでに米国金融機関では金融グリッド基盤を用いたシステムの事例があり、構築期間は平均で2〜3年、数千台から多いところでは1万台以上のブレードサーバーを導入しています。」とのニュースを裏付けるかのように、おなじみTop500 Listの120位台にも金融機関の2,000プロセッサー前後のブレードサーバーが入っています。
HPCの分野としてふたたび金融工学分野が重要性を増すのは自然の流れに見えます。

・すでにIBMは2月の"IBM Unveils Initiatives to Propel High-Performance Computing Clusters Into Mid-Market"の発表の中で、ファイナンス分野をターゲットにMicrosoft Office Excel 2007をHPCクラスターのソリューションとしてマイクロソフトと協業すると発表しています。

Excel 2007ベースの巨大ファイナンス・アプリケーションが大型HPCクラスターを占拠して並列計算を行うとなると、これはちょっと予想しなかった光景です。

cheer_hpc at 10:56|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!ニュース