閑話休題
2008年06月28日
●並列プロセッサー数が増すと計算効率は低下するか?
・アムダールの法則からすれば、ベクトル計算機にしろ並列計算機にしろ、プロセッサー数が多くなればなるほど理論ピーク性能と実アプリケーション性能の差が広がりやすく、プロセッサー数を増やしたところで問題規模に依存したあるプロセッサー数で性能は飽和に達してしまうというのが常識です。
・にもかかわらずLINPACKベンチマーク問題によるTOP500の性能向上の多くがシステムのプロセッサー数拡大によって実現されてきていることも事実です。もちろんこれはLINPACKベンチマーク問題の大きさをプロセッサー数の拡大に合わせて大きくすることで可能になっているのですが、実際のところはどうかと、先日発表のTOP500のデータから理論ピーク性能RPeakに対する実効最大性能RMaxの比:RMax/RpeakをLINPACK計算効率とし、プロセッサー数を横軸にプロットしてみました。
・確かに最高値を横に見ていくと、1,664プロセッサーのAltix4700の93%から始まって、プロセッサーが増えていくにつれ RMax/RPeakは減少し、最大の212,992プロセッサー Blue Gene/Lでは80.2%となります。このことから最大値についてはプロセッサーが多くなるにつれてシステムの計算効率が低くなっていく傾向が見てとれます。これはいわば最先端の技術的挑戦の領域を示していると言えます。
・それと並んで、あるいはそれ以上に目立つのがシステムによるLINPACK計算効率のばらつきの幅の大きさです。プロットをよく見ると、TOP500は、計算効率80%前後の高並列計算向けのシステムと計算効率50%前後の大型クラスターシステム(いまやブレードサーバーが多数派)の二つの層から成り立っています。
・勘定すると58%のシステムがLINPACK計算効率60%以下のシステム。その理由はLINPACKプログラムを利用システム向けにうまくチューニングできなかったというよりは、大型クラスターシステムのネットワークにギガビット・イーサーネットを使用するなど、コストや利用目的から高並列計算向けの十分な性能を満たしていないシステム構成になっているのが支配的なように見て取れます。
・すなわちプロセッサー数1,000を越える大型クラスターシステムでも、その半数以上はまだ並列計算を主体にした大型計算が行われていない、あるいはそのための良好なシステム環境が提供されていないというのがわかります。
話は変わりますが、二階層のInfiniBandネットワークの上に、X86アーキテクチャ(LS21ブレード)を、さらにその上にPowerアーキテクチャ(QS22ブレード)をつなげるという、いかにも無駄がありそうなRoadrunnerが75%もの効率を実現して1PetaFLOPSに到達したことは驚きです。いっぽうTACCのRangerがSun製の巨大なフル-CLOS InfiniBandスイッチを使用したにもかかわらず65%のLINPACK計算効率に留まったこともまた別の驚きでした。
・にもかかわらずLINPACKベンチマーク問題によるTOP500の性能向上の多くがシステムのプロセッサー数拡大によって実現されてきていることも事実です。もちろんこれはLINPACKベンチマーク問題の大きさをプロセッサー数の拡大に合わせて大きくすることで可能になっているのですが、実際のところはどうかと、先日発表のTOP500のデータから理論ピーク性能RPeakに対する実効最大性能RMaxの比:RMax/RpeakをLINPACK計算効率とし、プロセッサー数を横軸にプロットしてみました。

・確かに最高値を横に見ていくと、1,664プロセッサーのAltix4700の93%から始まって、プロセッサーが増えていくにつれ RMax/RPeakは減少し、最大の212,992プロセッサー Blue Gene/Lでは80.2%となります。このことから最大値についてはプロセッサーが多くなるにつれてシステムの計算効率が低くなっていく傾向が見てとれます。これはいわば最先端の技術的挑戦の領域を示していると言えます。
・それと並んで、あるいはそれ以上に目立つのがシステムによるLINPACK計算効率のばらつきの幅の大きさです。プロットをよく見ると、TOP500は、計算効率80%前後の高並列計算向けのシステムと計算効率50%前後の大型クラスターシステム(いまやブレードサーバーが多数派)の二つの層から成り立っています。
・勘定すると58%のシステムがLINPACK計算効率60%以下のシステム。その理由はLINPACKプログラムを利用システム向けにうまくチューニングできなかったというよりは、大型クラスターシステムのネットワークにギガビット・イーサーネットを使用するなど、コストや利用目的から高並列計算向けの十分な性能を満たしていないシステム構成になっているのが支配的なように見て取れます。
・すなわちプロセッサー数1,000を越える大型クラスターシステムでも、その半数以上はまだ並列計算を主体にした大型計算が行われていない、あるいはそのための良好なシステム環境が提供されていないというのがわかります。
話は変わりますが、二階層のInfiniBandネットワークの上に、X86アーキテクチャ(LS21ブレード)を、さらにその上にPowerアーキテクチャ(QS22ブレード)をつなげるという、いかにも無駄がありそうなRoadrunnerが75%もの効率を実現して1PetaFLOPSに到達したことは驚きです。いっぽうTACCのRangerがSun製の巨大なフル-CLOS InfiniBandスイッチを使用したにもかかわらず65%のLINPACK計算効率に留まったこともまた別の驚きでした。
2008年04月27日
●CO2排出量削減の足を引っ張るHPCコンピューティングセンター?
・「伊藤洋一のビジネス・トレンド」というPodcastを毎週電車の中で聞いていますが、第134回 (4/21/'08)で面白い解説をしていました。
・伊藤洋一さんによると、例えばITで紙を減らせると言ったようにITは環境問題を助けてくれるというイメージを抱いていたが、実はものすごく電力食いで、CO2排出量に影響を与えるものである。
・現在国内電力消費の増加は工場ではなく、家庭、Office、店舗で起こっていて、PC、サーバー、ネットワーク機器といったITによる電力消費量によるものである。2006年に国内電力消費量の5%を占め(CO2排出換算で2800万トン。乗用車800万台相当とか)、これが2025年にはITの電力消費は全電力消費の20%になる。つまり2006年に約500億KW、2025年には約2,000億KWというのがITによる電力消費量。
・京都議定書では日本は2008年-2012年の5年間の平均で基準年の1990年の6%のCO2排出の削減が目標になっているので、ITの電力消費増加によっては京都議定書の目標すら達成できなくなるというような解説でした。これからはいろいろな場でITの電力消費の課題が取り上げられていきそうな雲行きです。
・電力消費の点から優れているのはPCならノートPC、サーバーでは旧製品よりは低電力消費を積極的に設計に取り入れている新製品ですが、これからはネットワーク機器やストレージはもとより、コンピューター・センター全体についても乾いたゾーキンを絞るように工場並みに緻密で徹底したエネルギー管理が要求されていくことになるのではないでしょうか。
・こうした社会ニーズに対応して、4月23日に米国IBMが発表したインターネット-スケール・データ・センター向けの新システム IBM System x iDataPlexはサーバーからデータ・センターまでの課題に対する解の一つと言えるでしょう。
・iDataPlexについての詳しい仕様などはこれから発表されていくと思われますが、電力大食いのWeb 2.0向けデータセンター市場とHPCのコンピューター・センター市場の二つをターゲットにしているようです。どちらもこれからのクラウド・コンピューティングに密接に関係しているところです。
・iDataPlexの特徴を見ると、1Uサーバーと比較して最大40%の電力を節約でき(計算上)、ラックの水冷リアドア熱交換機(IBM Rear Door Heat eXchanger)を使うと空調による冷却不要、床面積当たり最大5倍の計算能力を詰め込むことができる等とあります。iDataPlexは受注生産によるソリューションで、受注内容毎に工場でまとめ上げられ、プラグをさせば働く状態で出荷されるようです。HPCのコンピューター・センター市場でのiDataPlexについては英文ブローシャで紹介されています。
個人的には、ついせんだってわが家のCO2排出量を大きく減らしました。家庭の都合で二台必要としていたハイオク・ガソリン車を、その必要性が薄くなったこともあってエイヤッとトヨタ プリウス1台に統合。長年のドイツ車ユーザーからの転向でしたが、試しに乗ってみたら違和感をさほど感じなかったのが最大の理由。一週間経ってもまだ燃料計がフル・スケールのままというのはなんと言ってもよい気分です。
・伊藤洋一さんによると、例えばITで紙を減らせると言ったようにITは環境問題を助けてくれるというイメージを抱いていたが、実はものすごく電力食いで、CO2排出量に影響を与えるものである。
・現在国内電力消費の増加は工場ではなく、家庭、Office、店舗で起こっていて、PC、サーバー、ネットワーク機器といったITによる電力消費量によるものである。2006年に国内電力消費量の5%を占め(CO2排出換算で2800万トン。乗用車800万台相当とか)、これが2025年にはITの電力消費は全電力消費の20%になる。つまり2006年に約500億KW、2025年には約2,000億KWというのがITによる電力消費量。
・京都議定書では日本は2008年-2012年の5年間の平均で基準年の1990年の6%のCO2排出の削減が目標になっているので、ITの電力消費増加によっては京都議定書の目標すら達成できなくなるというような解説でした。これからはいろいろな場でITの電力消費の課題が取り上げられていきそうな雲行きです。
・電力消費の点から優れているのはPCならノートPC、サーバーでは旧製品よりは低電力消費を積極的に設計に取り入れている新製品ですが、これからはネットワーク機器やストレージはもとより、コンピューター・センター全体についても乾いたゾーキンを絞るように工場並みに緻密で徹底したエネルギー管理が要求されていくことになるのではないでしょうか。
・こうした社会ニーズに対応して、4月23日に米国IBMが発表したインターネット-スケール・データ・センター向けの新システム IBM System x iDataPlexはサーバーからデータ・センターまでの課題に対する解の一つと言えるでしょう。
・iDataPlexについての詳しい仕様などはこれから発表されていくと思われますが、電力大食いのWeb 2.0向けデータセンター市場とHPCのコンピューター・センター市場の二つをターゲットにしているようです。どちらもこれからのクラウド・コンピューティングに密接に関係しているところです。
・iDataPlexの特徴を見ると、1Uサーバーと比較して最大40%の電力を節約でき(計算上)、ラックの水冷リアドア熱交換機(IBM Rear Door Heat eXchanger)を使うと空調による冷却不要、床面積当たり最大5倍の計算能力を詰め込むことができる等とあります。iDataPlexは受注生産によるソリューションで、受注内容毎に工場でまとめ上げられ、プラグをさせば働く状態で出荷されるようです。HPCのコンピューター・センター市場でのiDataPlexについては英文ブローシャで紹介されています。
個人的には、ついせんだってわが家のCO2排出量を大きく減らしました。家庭の都合で二台必要としていたハイオク・ガソリン車を、その必要性が薄くなったこともあってエイヤッとトヨタ プリウス1台に統合。長年のドイツ車ユーザーからの転向でしたが、試しに乗ってみたら違和感をさほど感じなかったのが最大の理由。一週間経ってもまだ燃料計がフル・スケールのままというのはなんと言ってもよい気分です。
2008年03月24日
●HPCの教育
・「スパコン使いこなせ 神大が研究者養成講座」という神戸新聞の記事によると神戸大の「第一回シミュレーション・スクール」が3月17日から5日間の合宿形式でおこなわれ、神戸大のほか愛媛大、金沢大、九州大の院生計約60人が参加したそうです。
・詳しい中味はわかりませんが合宿形式とあるので相当ハードな内容で、参加者には大きな刺激になったと思います。参加者のレベルも様々で、主催者側も苦労されたと想像できますが、有意義な試みだと思います。
・日本のHPCの将来がこのところ心もとなく感じるようになってきた(?)こともあって、2/28に開催された多圏地球COEの「HPC教育に関するワークショップ」に出席したばかりですが、これは最近のHPC教育の試みについて知るよい機会になりました。
・このワークショップは、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻において,2003年度から開始された 「多圏地球COE」の中で、特に2004年度から開講した「並列プログラミング」など先端的な計算機環境利用のためのHPC(High-Performance Computing)教育に関するものです。
・3月末で終了するCOEですが、ここでのHPC教育はこれまでに無いチャレンジングな試みとして広く注目を集めるとともに,大きな効果をあげてきたと先のホームページで紹介されています。
。ワークショップでは、中島研吾先生(東大・理・地球惑星)が まとめと課題と題して「並列計算プログラミング」,「先端計算機演習」について、古村孝志先生(東大・地震研)が「先端計算地球科学」についてそれぞれフランクでわかりやすく話されていました。
・D1の院生をターゲットにしたせいか講義も充実した内容で、このHPC教育にどれだけ力をかけて高いレベルを維持してきたのか、努力のあとがうかがわれます。
・カリキュラム内容を狭い範囲に限定せず、中島先生が強調するSMASH(Science, Modeling, Algorithm, Software, Hardware)をカバーすることを念頭に、アプリケーション中心という方針のもと優れたソース・コードを読む能力を身につけさせることにも重点を置くなど、より実践的かつ幅広い視野に立った丁寧な教育がうかがわれて、いろいろと共感できる内容でした。
・講義のボリュームが多すぎたかもしれないとか、はじめの予想に比べて講義の受講者数が少なかった、ターゲットのD1よりM1の院生が多かったためレベル設定がしにくかった等々運営面で難しい点もあったようです。
・そうはいっても、受講者の大石さん(受講時にD3)と松村さん(D3)のHPC分野の研究発表については、招待講演者のMarques氏(LBNL)も感心していたので、少なくとも少数の受講生は確実に高いレベルに達していたと思います。
・COEのHPC教育のカリキュラム内容が充実していただけに、e-ラーニングなどを利用して全国的な規模で講義や実習が出来たらいいなと思いましたが、冒頭の神戸の例を見ても、縦割りプロジェクトが普通という現状では、一朝一夕にはできないのでしょう。
上の例は大学の若手研究者(または研究者候補)を対象にしたHPC教育のアプローチですが、アプローチの両極としては
A) HPCを基礎から時間をかけてたたき込んでいくアプローチと
B) HPCのおもしろさや有用さを短期間に感じとらせ、後は本人やグループの努力にまかせるアプローチ、のふたつの方法が考えられます。「多圏地球COE」のカリキュラムは1)に近く、「シミュレーション・スクール」はもっと2)に近いように見えます。
・ 私個人のコンピュータ教育を受けた経験 ― (1) 院生時代には実験三昧、大型計算機センターにはほとんど近づかなかった。(2) それが日本IBMの新入社員教育でアセンブラー中心に連続16ヶ月ほど(技術教育だけではないが約3,000時間)詰込み教育に曝された。(3) その後On the Job Trainingと称する実務経験で先輩の指導を1-2年受けて、いちおう専門家の卵としての業務をすることを許された― から言えば、A)を最初におこない、その後でB)に入るのが自然な流れに思えます。ただこれは専門家育成を目的とする教育ですから、大学にはもっと柔軟な形があってもいいとは思います。
・HPCでよく言われる課題のひとつに、PCやワークステーション、あるいは小型SMPサーバーを使用したシミュレーションで満足している大多数のユーザー層のボトムアップ (HPCのスキルと使用システムの両面で)というのがあります。ただ、画一的なボトムアップの必要性は小さいのではないでしょうか。
・いまスーパーコンピューターを対象に、大学や研究機関でのHPCの活性化と成果を拡大することを重視するのであれば、まず研究者が自分の研究にHPCを応用できる可能性を発見できるようなHPC教育を行ない、次にはそうした中から実際にHPCに取り組む活動的な研究者が並列プログラミング、チューニングといった具体的なインプリメンテーションへと進めるように、SMASH全体について総合的に指導・支援できる、層の厚いプロフェッショナル(研究者レベル)が控えているというような、大学や研究機関を横断して存在するバーチュアルなHPC教育・指導システムが今の時代に合致していると思います。
・詳しい中味はわかりませんが合宿形式とあるので相当ハードな内容で、参加者には大きな刺激になったと思います。参加者のレベルも様々で、主催者側も苦労されたと想像できますが、有意義な試みだと思います。
・日本のHPCの将来がこのところ心もとなく感じるようになってきた(?)こともあって、2/28に開催された多圏地球COEの「HPC教育に関するワークショップ」に出席したばかりですが、これは最近のHPC教育の試みについて知るよい機会になりました。
・このワークショップは、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻において,2003年度から開始された 「多圏地球COE」の中で、特に2004年度から開講した「並列プログラミング」など先端的な計算機環境利用のためのHPC(High-Performance Computing)教育に関するものです。
・3月末で終了するCOEですが、ここでのHPC教育はこれまでに無いチャレンジングな試みとして広く注目を集めるとともに,大きな効果をあげてきたと先のホームページで紹介されています。
。ワークショップでは、中島研吾先生(東大・理・地球惑星)が まとめと課題と題して「並列計算プログラミング」,「先端計算機演習」について、古村孝志先生(東大・地震研)が「先端計算地球科学」についてそれぞれフランクでわかりやすく話されていました。
・D1の院生をターゲットにしたせいか講義も充実した内容で、このHPC教育にどれだけ力をかけて高いレベルを維持してきたのか、努力のあとがうかがわれます。
・カリキュラム内容を狭い範囲に限定せず、中島先生が強調するSMASH(Science, Modeling, Algorithm, Software, Hardware)をカバーすることを念頭に、アプリケーション中心という方針のもと優れたソース・コードを読む能力を身につけさせることにも重点を置くなど、より実践的かつ幅広い視野に立った丁寧な教育がうかがわれて、いろいろと共感できる内容でした。
・講義のボリュームが多すぎたかもしれないとか、はじめの予想に比べて講義の受講者数が少なかった、ターゲットのD1よりM1の院生が多かったためレベル設定がしにくかった等々運営面で難しい点もあったようです。
・そうはいっても、受講者の大石さん(受講時にD3)と松村さん(D3)のHPC分野の研究発表については、招待講演者のMarques氏(LBNL)も感心していたので、少なくとも少数の受講生は確実に高いレベルに達していたと思います。
・COEのHPC教育のカリキュラム内容が充実していただけに、e-ラーニングなどを利用して全国的な規模で講義や実習が出来たらいいなと思いましたが、冒頭の神戸の例を見ても、縦割りプロジェクトが普通という現状では、一朝一夕にはできないのでしょう。
上の例は大学の若手研究者(または研究者候補)を対象にしたHPC教育のアプローチですが、アプローチの両極としては
A) HPCを基礎から時間をかけてたたき込んでいくアプローチと
B) HPCのおもしろさや有用さを短期間に感じとらせ、後は本人やグループの努力にまかせるアプローチ、のふたつの方法が考えられます。「多圏地球COE」のカリキュラムは1)に近く、「シミュレーション・スクール」はもっと2)に近いように見えます。
・ 私個人のコンピュータ教育を受けた経験 ― (1) 院生時代には実験三昧、大型計算機センターにはほとんど近づかなかった。(2) それが日本IBMの新入社員教育でアセンブラー中心に連続16ヶ月ほど(技術教育だけではないが約3,000時間)詰込み教育に曝された。(3) その後On the Job Trainingと称する実務経験で先輩の指導を1-2年受けて、いちおう専門家の卵としての業務をすることを許された― から言えば、A)を最初におこない、その後でB)に入るのが自然な流れに思えます。ただこれは専門家育成を目的とする教育ですから、大学にはもっと柔軟な形があってもいいとは思います。
・HPCでよく言われる課題のひとつに、PCやワークステーション、あるいは小型SMPサーバーを使用したシミュレーションで満足している大多数のユーザー層のボトムアップ (HPCのスキルと使用システムの両面で)というのがあります。ただ、画一的なボトムアップの必要性は小さいのではないでしょうか。
・いまスーパーコンピューターを対象に、大学や研究機関でのHPCの活性化と成果を拡大することを重視するのであれば、まず研究者が自分の研究にHPCを応用できる可能性を発見できるようなHPC教育を行ない、次にはそうした中から実際にHPCに取り組む活動的な研究者が並列プログラミング、チューニングといった具体的なインプリメンテーションへと進めるように、SMASH全体について総合的に指導・支援できる、層の厚いプロフェッショナル(研究者レベル)が控えているというような、大学や研究機関を横断して存在するバーチュアルなHPC教育・指導システムが今の時代に合致していると思います。
2008年02月11日
● 脳の研究とHPC
・ 日本の脳科学研究は世界のトップを走っていると聞いたことはあるものの、専門家でもない私にとって、脳科学はまったく未知の分野です。
・とはいえ、脳については養老孟司著の「脳の見方」(ちくま文庫1997.11.20 第11版、養老孟司著、筑摩書房 (1986.10.20))と「からだの見方」(ちくま文庫 1995.7.5 第3版、養老孟司著、筑摩書房 (1988.7))を読んで鮮烈な印象を受けた記憶があります。( )内は最初の発行日(文庫以外)です。ところで養老先生の書かれたものは今のベストセラーよりもこの頃の方が私にはずっと面白く感じられます。たとえば視覚系についての考えはその最たるものですが、著者は異なるものの、ほぼ20年後に書かれた「進化しすぎた脳」でも、どこか共通した考えが感じられるのは私の脳がそう解釈したいからなのでしょうか。
・ 「進化しすぎた脳」(ブルーバックス B-1538 2007.11.8 第9版、池谷裕二著、講談社)はこの連休にたまたま駅前の三省堂書店で買って読みました。専門家でない私には情報量がやや多く、すべて消化しきれたわけではないですが、2003年頃のアメリカ留学中にニューヨークの日本人高校生8人を相手にした脳科学講義ということもあってでしょうか、知的活気にあふれた第一章から四章までの講義と高校生との質疑応答がなかなかいい雰囲気です。やはり異環境で挑んだ30代前半の試みというのはとびっきりの勢いを持っています。
・「進化しすぎた脳」から思ったのは、脳の物理モデル・シミュレーションにそろそろ力を入れていい時期になってきたのではないかということです。たぶん脳科学の専門家ほど脳はコンピューター・シミュレーションには複雑過ぎると思われているでしょうから、ブレークするためには最初から異分野の専門家との協力が必要かも知れません。
・ スイスのBlue Brain Projectでは、Blue Geneの巨大なコンピュータ・パワーを前提に、実際の神経細胞をもとにしたNeocortical column(NCC)(大脳新皮質カラム)のシミュレーションに挑戦し、昨年11月に第1フェーズを完了しています。
・ 最先端を走っていると言われている日本の脳科学研究がベースにあれば、こうした先端的なシミュレーション分野でも日本ならではの優れた研究成果がでる可能性は高いと個人的には思っています。
・とはいえ、脳については養老孟司著の「脳の見方」(ちくま文庫1997.11.20 第11版、養老孟司著、筑摩書房 (1986.10.20))と「からだの見方」(ちくま文庫 1995.7.5 第3版、養老孟司著、筑摩書房 (1988.7))を読んで鮮烈な印象を受けた記憶があります。( )内は最初の発行日(文庫以外)です。ところで養老先生の書かれたものは今のベストセラーよりもこの頃の方が私にはずっと面白く感じられます。たとえば視覚系についての考えはその最たるものですが、著者は異なるものの、ほぼ20年後に書かれた「進化しすぎた脳」でも、どこか共通した考えが感じられるのは私の脳がそう解釈したいからなのでしょうか。
・ 「進化しすぎた脳」(ブルーバックス B-1538 2007.11.8 第9版、池谷裕二著、講談社)はこの連休にたまたま駅前の三省堂書店で買って読みました。専門家でない私には情報量がやや多く、すべて消化しきれたわけではないですが、2003年頃のアメリカ留学中にニューヨークの日本人高校生8人を相手にした脳科学講義ということもあってでしょうか、知的活気にあふれた第一章から四章までの講義と高校生との質疑応答がなかなかいい雰囲気です。やはり異環境で挑んだ30代前半の試みというのはとびっきりの勢いを持っています。
・「進化しすぎた脳」から思ったのは、脳の物理モデル・シミュレーションにそろそろ力を入れていい時期になってきたのではないかということです。たぶん脳科学の専門家ほど脳はコンピューター・シミュレーションには複雑過ぎると思われているでしょうから、ブレークするためには最初から異分野の専門家との協力が必要かも知れません。
・ スイスのBlue Brain Projectでは、Blue Geneの巨大なコンピュータ・パワーを前提に、実際の神経細胞をもとにしたNeocortical column(NCC)(大脳新皮質カラム)のシミュレーションに挑戦し、昨年11月に第1フェーズを完了しています。
・ 最先端を走っていると言われている日本の脳科学研究がベースにあれば、こうした先端的なシミュレーション分野でも日本ならではの優れた研究成果がでる可能性は高いと個人的には思っています。
2007年12月28日
●専用システムか、それとも汎用システムか?
・次世代生命体統合シミュレーション研究開発プロジェクトのシンポジウムの続きになりますが、医薬品メーカーの方がMO(Molecular Orbital Method)専用機(Special Purpose Computer)もあるといいなというコメントをしていました。その心は、MO計算が超高速かつ少ないコストでできるようになると創薬研究におおいに役立つということだったと思います。MD(Molecular Dynamics)専用機 MDGRAPE-3の開発者の泰地さんに直接うかがったところではMO専用機も技術的には可能ということでした。
・このように専用機というのは圧倒的高性能とコスト・パフォーマンスとが両立するので常に引きつける魅力があります。
・対する汎用機(General Purpose Computer)ですが、その代名詞が360度オールラウンドに使えるコンピューターとして1960年代に発表されたIBM System/360です。それ以前は科学技術計算向けのコンピューターと、商用向けのコンピューターが別々に開発されてきましたが、S/360があっという間にシェアを獲得し、科学技術計算向け、商用向けともに汎用機に吸収されてしまいました。
・その後もアレイ・プロセッサーのような実験的なシステムやQCD専用機などが企画・製作されたものの専用機の大半が短寿命で衰退してしまったのは、やはりある程度汎用性のあるものでないと開発投資が続けられず、そのうちに専用機としての競争力が失なわれてしまったという現実があるのでしょう。
・その中でも比較的長い間生き残ってきたのがベクトル型コンピューターですが、これも2007年11月のTop500リストによるとシェア0.8%へと衰退してしまいました。
一方、汎用機の代名詞だったメインフレームも、絶対に故障してはならない基幹システムのためのプラットフォームへ進化したものの、科学技術計算分野では使われなくなってしまいました。一回りして1950-60年代当時と同じ状況になってしまったとも言えます。
・それではいま先を争って開発が進められている超並列型コンピューターはどうなのでしょうか。ここで少し強引にIBM Blue Geneを引き合いに出してみます。
・もともとBlue Geneはタンパク質の折りたたみ現象のシミュレーション 1ケースを1年で完了できる性能(1ペタFLOPS)の専用機として、設計がスタートしたものです。自己修復機能を備えるなどいくつかの革新的なアイデアがその中から生まれましたが、実際のシステムは当初描いていた先鋭的専用機にはならず、プログラム開発環境やI/OノードにLinux OSを採用するなど相当に汎用性を持たせたものになりました。性能の方も約1/3と控えめです。しかし最初のタンパク折りたたみ計算専用機のイメージが強いために、いまだに専用機(Special Purpose Computer)と思われているふしがあります。
・ちょうどIBM Journal of Research and Developmentの最新号が"Applications of Massively Parallel Systems" 特集ですので、これを参考に、進化を続けるためにはある程度の汎用性がないと難しいという視点からBlue Geneを見てみます。
・この号には、Blue Gene/Lのアプリケーション・ユーザーの16編の論文で埋まっています。それらのアプリケーションは、
1) タンパク構造の予測
2) MDシミュレーション
3) 大脳新皮質コラムのシミュレーション
4) 同上
5) リガンド発見のための並列計算
6) 創薬のための分子のドッキング・シミュレーション
7) 3-D 地震探査計算
8) 炭化水素の電気伝導度計算
9) 閉じこめプラズマ乱流の粒子シミュレーション
10) 気象シミュレーション
11) 弱圧縮性乱流のシミュレーション
12) 第一原理によるMD計算
13) N-体分子シミュレーション
14) ab initio MD計算
15) スケーラブルMD計算
16) QCD計算
ですが、個人的にはこれらに
17) 携帯電話の3-D落下衝撃解析 ((株)アライドエンジニアリング 秋葉博氏他)というSC06でゴードン・ベル賞のファイナリストに残った論文を加えたいと思います。
・これらを眺めてわかるとおり、隣接相互作用の計算が得意なBlue Geneらしく粒子系シミュレーションがやや目立ちますが、それだけにとどまらない様々な分野のアプリケーションに適用されています。
・最新のBlue Gene/Pでは、低消費電力を維持しつつ7万2千ノードで1ペタ・ピークFLOPS性能を実現するというだけではなく、ノードの4-way SMP化、メモリー倍増(2GB、オプションで4GB)、ネットワークの性能アップ(バンド幅拡大と遅延短縮)というように、アプリケーションに対してより制約の少ない方向(より汎用化)に進化しているように見えます。Blue Geneはなるほどすごいなと思いました。
・もうひとつ注目の超並列型コンピューターが、複合汎用システムとして理研が開発を進めている次世代スーパーコンピューターです。性能目標10ペタFLOPSを実現するテクノロジーには非常に興味がもたれます。
・このように専用機というのは圧倒的高性能とコスト・パフォーマンスとが両立するので常に引きつける魅力があります。
・対する汎用機(General Purpose Computer)ですが、その代名詞が360度オールラウンドに使えるコンピューターとして1960年代に発表されたIBM System/360です。それ以前は科学技術計算向けのコンピューターと、商用向けのコンピューターが別々に開発されてきましたが、S/360があっという間にシェアを獲得し、科学技術計算向け、商用向けともに汎用機に吸収されてしまいました。
・その後もアレイ・プロセッサーのような実験的なシステムやQCD専用機などが企画・製作されたものの専用機の大半が短寿命で衰退してしまったのは、やはりある程度汎用性のあるものでないと開発投資が続けられず、そのうちに専用機としての競争力が失なわれてしまったという現実があるのでしょう。
・その中でも比較的長い間生き残ってきたのがベクトル型コンピューターですが、これも2007年11月のTop500リストによるとシェア0.8%へと衰退してしまいました。
一方、汎用機の代名詞だったメインフレームも、絶対に故障してはならない基幹システムのためのプラットフォームへ進化したものの、科学技術計算分野では使われなくなってしまいました。一回りして1950-60年代当時と同じ状況になってしまったとも言えます。
・それではいま先を争って開発が進められている超並列型コンピューターはどうなのでしょうか。ここで少し強引にIBM Blue Geneを引き合いに出してみます。
・もともとBlue Geneはタンパク質の折りたたみ現象のシミュレーション 1ケースを1年で完了できる性能(1ペタFLOPS)の専用機として、設計がスタートしたものです。自己修復機能を備えるなどいくつかの革新的なアイデアがその中から生まれましたが、実際のシステムは当初描いていた先鋭的専用機にはならず、プログラム開発環境やI/OノードにLinux OSを採用するなど相当に汎用性を持たせたものになりました。性能の方も約1/3と控えめです。しかし最初のタンパク折りたたみ計算専用機のイメージが強いために、いまだに専用機(Special Purpose Computer)と思われているふしがあります。
・ちょうどIBM Journal of Research and Developmentの最新号が"Applications of Massively Parallel Systems" 特集ですので、これを参考に、進化を続けるためにはある程度の汎用性がないと難しいという視点からBlue Geneを見てみます。
・この号には、Blue Gene/Lのアプリケーション・ユーザーの16編の論文で埋まっています。それらのアプリケーションは、
1) タンパク構造の予測
2) MDシミュレーション
3) 大脳新皮質コラムのシミュレーション
4) 同上
5) リガンド発見のための並列計算
6) 創薬のための分子のドッキング・シミュレーション
7) 3-D 地震探査計算
8) 炭化水素の電気伝導度計算
9) 閉じこめプラズマ乱流の粒子シミュレーション
10) 気象シミュレーション
11) 弱圧縮性乱流のシミュレーション
12) 第一原理によるMD計算
13) N-体分子シミュレーション
14) ab initio MD計算
15) スケーラブルMD計算
16) QCD計算
ですが、個人的にはこれらに
17) 携帯電話の3-D落下衝撃解析 ((株)アライドエンジニアリング 秋葉博氏他)というSC06でゴードン・ベル賞のファイナリストに残った論文を加えたいと思います。
・これらを眺めてわかるとおり、隣接相互作用の計算が得意なBlue Geneらしく粒子系シミュレーションがやや目立ちますが、それだけにとどまらない様々な分野のアプリケーションに適用されています。
・最新のBlue Gene/Pでは、低消費電力を維持しつつ7万2千ノードで1ペタ・ピークFLOPS性能を実現するというだけではなく、ノードの4-way SMP化、メモリー倍増(2GB、オプションで4GB)、ネットワークの性能アップ(バンド幅拡大と遅延短縮)というように、アプリケーションに対してより制約の少ない方向(より汎用化)に進化しているように見えます。Blue Geneはなるほどすごいなと思いました。
・もうひとつ注目の超並列型コンピューターが、複合汎用システムとして理研が開発を進めている次世代スーパーコンピューターです。性能目標10ペタFLOPSを実現するテクノロジーには非常に興味がもたれます。
2007年12月14日
●スーパーコンピューターも立体構造に?
・もう12月半ばとなると、近い将来に期待したいものがいろいろ浮かんできますが、その中で最たるもののひとつが三次元回路集積技術の実用化です。
・現在のチップは平面上に配線しているため線幅がミクロン以下の超極細で、想像を超えた長さ(初期のIBM POWERプロセッサーでもチップ内配線は全長1kmくらいあったと記憶)の配線が必要となります。このため、熱やリーク電流、信号遅延が大きな問題になっています。しかしこれらは配線を立体的におこなう三次元配線にすることで劇的に改善できます。
・たとえば今年発表になったIBMの研究成果では、回路を作ったシリコン・ウエハーを複数重ねたものに数千の貫通孔を空けてその中を金属で満たす"Through-Silicon Via"という方法で積層チップ内の三次元配線を実用化しています。この結果、配線長は1/1000になるそうです。この量産が2008年に始まります。
・三次元配線の技術も、アナロジーで言うと、初期はあたかも上下階の連絡をするために建物の外壁に外階段をつける方法しか取れなかったのが、TSVによってエレベーター方式で信号が行き来できるようになったわけです。
・これができると、現在平面上に展開しているプロセッサー・チップ自体を立体的に作る技術も必要になります。
・2006年9月にMany-coreの実験チップとしてインテルが8x10コア(簡単な処理エンジンとルータの組み合わせのタイルと呼ばれる小規模コア)の二次元構造を持ったチップを発表していますし、
Cell/B.E.も9コアの二次元構造のチップでできています。東大のGRAPE-DRプロジェクトでは実に1024コアのチップの研究開発に成功しています。
・これらはすべて平面状に回路を展開している二次元チップですが、もしチップの三次元化が可能になれば、サンドイッチのように下をCPUコア、中をメモリー、その上にインターコネクト・スイッチと重ね、このサンドイッチを16層重ねた三次元ICチップにするといったことも夢でなくなります。
・そうした微小インターコネクト・スイッチの研究開発では、この12月にIBMが発表したブレークスルーに、電気信号を光パルスに変換するモジュレータを従来の1/100〜1/1000の大きさにできたという“Ultra-compact, low RF power, 10 Gb/s silicon Mach-Zehnder modulator”があります。
・この技術は高性能と低電力消費を兼ね備えた"Tiny Supercomputers-on-a-chip"の実現をめざす上で、大きな影響を与えると思います。
・ついこの前まで90nmテクノロジーだったのがみるみるうちに小さくなって今は32nmテクノロジーも話題になっています。たいへんな速さで微小化が進行してきたわけですが、これはCPUチップだけの話。コンピューター・システムを見ればわかるように、(<100nmの世界から見ると)はるか遠く離れた場所にメモリーやインターコネクト・スイッチが配置され、システム全体が教室〜体育館程度の平面に分散配置されているというのが実際です。こうしただれが見ても異常なほどのアンバランスを解消するテクノロジーの研究開発は時代の要請ですから、今後さらに急速に進んでいくはずです。
・オン・チップ・メモリーも微小化、高速化、低電力化の研究開発が進んでいます。従来のSRAMに比べて1/3の大きさと1/4の電力の世界最速組み込みDRAM(embedded DRAM)です。
・最新のBlue Gene/Pのチップには、このeDRAMとプロセッサーが三次元積層されたチップを使います。
・さて、技術の粋とも言える地球シミュレーターでは合計2,400kmというノード間インターコネクトの太いケーブルが床下を這っています。地球シミュレーターよりも大食いの、巨大なモンスターへとばく進しているスーパーコンピューターが、このようにプロセッサー・チップやシステムが三次元的に集積統合されていくことで、一転して羊になるのも夢ではないかもしれません。
・ということで、ここからは半分夢物語ですが、いま1チップが16x16x16 コア(大メモリー、インターコネクト付き)のサイコロ形状の三次元プロセッサーができたとすると1チップのコア数は4,096です。このコアの性能をBlue Gene/Pと同じ14GFLOPSとします。
・このサイコロ・チップをルービック・キューブのように4x4x4 (=64)の立方体に組み立てると全体のコア数は262,144個になり、2007年にTop500で首位のBlue Gene/L(596ピークTFLOPS)のコア数106,496の倍以上になる勘定です。
・このときのピーク性能は3,670TFLOS(3.7ペタFLOPS)になります。
・最速スーパーコンピューターのひとつ、Blue Gene/Pの性能がルービック・キューブくらいの大きさで実現するという妄想でしたが、いままでの経験から見てさほど遠くない時期に実現しても驚きません。
・ルービック・キューブには熱除去のための強力な冷却装置が取り付けられ、さらに宇宙線や自然放射能からの回路の誤動作から護るため、鉛の分厚い放射線シールド容器の中に鎮座していて、現在のスーパーコンピューターの姿とはだいぶ異なっているでしょうが。
・現在のチップは平面上に配線しているため線幅がミクロン以下の超極細で、想像を超えた長さ(初期のIBM POWERプロセッサーでもチップ内配線は全長1kmくらいあったと記憶)の配線が必要となります。このため、熱やリーク電流、信号遅延が大きな問題になっています。しかしこれらは配線を立体的におこなう三次元配線にすることで劇的に改善できます。
・たとえば今年発表になったIBMの研究成果では、回路を作ったシリコン・ウエハーを複数重ねたものに数千の貫通孔を空けてその中を金属で満たす"Through-Silicon Via"という方法で積層チップ内の三次元配線を実用化しています。この結果、配線長は1/1000になるそうです。この量産が2008年に始まります。
・三次元配線の技術も、アナロジーで言うと、初期はあたかも上下階の連絡をするために建物の外壁に外階段をつける方法しか取れなかったのが、TSVによってエレベーター方式で信号が行き来できるようになったわけです。
・これができると、現在平面上に展開しているプロセッサー・チップ自体を立体的に作る技術も必要になります。
・2006年9月にMany-coreの実験チップとしてインテルが8x10コア(簡単な処理エンジンとルータの組み合わせのタイルと呼ばれる小規模コア)の二次元構造を持ったチップを発表していますし、
Cell/B.E.も9コアの二次元構造のチップでできています。東大のGRAPE-DRプロジェクトでは実に1024コアのチップの研究開発に成功しています。
・これらはすべて平面状に回路を展開している二次元チップですが、もしチップの三次元化が可能になれば、サンドイッチのように下をCPUコア、中をメモリー、その上にインターコネクト・スイッチと重ね、このサンドイッチを16層重ねた三次元ICチップにするといったことも夢でなくなります。
・そうした微小インターコネクト・スイッチの研究開発では、この12月にIBMが発表したブレークスルーに、電気信号を光パルスに変換するモジュレータを従来の1/100〜1/1000の大きさにできたという“Ultra-compact, low RF power, 10 Gb/s silicon Mach-Zehnder modulator”があります。
・この技術は高性能と低電力消費を兼ね備えた"Tiny Supercomputers-on-a-chip"の実現をめざす上で、大きな影響を与えると思います。
・ついこの前まで90nmテクノロジーだったのがみるみるうちに小さくなって今は32nmテクノロジーも話題になっています。たいへんな速さで微小化が進行してきたわけですが、これはCPUチップだけの話。コンピューター・システムを見ればわかるように、(<100nmの世界から見ると)はるか遠く離れた場所にメモリーやインターコネクト・スイッチが配置され、システム全体が教室〜体育館程度の平面に分散配置されているというのが実際です。こうしただれが見ても異常なほどのアンバランスを解消するテクノロジーの研究開発は時代の要請ですから、今後さらに急速に進んでいくはずです。
・オン・チップ・メモリーも微小化、高速化、低電力化の研究開発が進んでいます。従来のSRAMに比べて1/3の大きさと1/4の電力の世界最速組み込みDRAM(embedded DRAM)です。
・最新のBlue Gene/Pのチップには、このeDRAMとプロセッサーが三次元積層されたチップを使います。
・さて、技術の粋とも言える地球シミュレーターでは合計2,400kmというノード間インターコネクトの太いケーブルが床下を這っています。地球シミュレーターよりも大食いの、巨大なモンスターへとばく進しているスーパーコンピューターが、このようにプロセッサー・チップやシステムが三次元的に集積統合されていくことで、一転して羊になるのも夢ではないかもしれません。
・ということで、ここからは半分夢物語ですが、いま1チップが16x16x16 コア(大メモリー、インターコネクト付き)のサイコロ形状の三次元プロセッサーができたとすると1チップのコア数は4,096です。このコアの性能をBlue Gene/Pと同じ14GFLOPSとします。
・このサイコロ・チップをルービック・キューブのように4x4x4 (=64)の立方体に組み立てると全体のコア数は262,144個になり、2007年にTop500で首位のBlue Gene/L(596ピークTFLOPS)のコア数106,496の倍以上になる勘定です。
・このときのピーク性能は3,670TFLOS(3.7ペタFLOPS)になります。
・最速スーパーコンピューターのひとつ、Blue Gene/Pの性能がルービック・キューブくらいの大きさで実現するという妄想でしたが、いままでの経験から見てさほど遠くない時期に実現しても驚きません。
・ルービック・キューブには熱除去のための強力な冷却装置が取り付けられ、さらに宇宙線や自然放射能からの回路の誤動作から護るため、鉛の分厚い放射線シールド容器の中に鎮座していて、現在のスーパーコンピューターの姿とはだいぶ異なっているでしょうが。
2007年11月28日
●SC07 (番外)
・SC07から帰ってほぼ10日、どうにか疲労感が取れつつあるところですが、IBMブースの様々な展示とデモのムービーが公開されています。説明者の話の英文スクリプトもついています。ただ会場でのライブ収録なことから勘違いもあったりするようで100%正確とは思わない方がよさそうです(さっそくひとつ誤りを見つけました)。この辺はおおらかなものです。
・テクニカル・コンファレンスの参加者にバッグと一緒に配布しているいつものコンファレンスCDが入っていないと思っていたら、今年はなんとUSB (1GB)に変わっていました。小さくて入っていたのに気がつかなかっただけでした。もっとも論文のpdfが入っているわけでもなく、単にSC07のウェブ・サイトにリンクさせているだけなので、合理的とはいえ会場受付で受け取るありがたみの方は年々減っていく感じです。
・さて、今年初めて海外に携帯電話を持って行ったわけですが、予想以上に便利なことがわかりました。写真のNOKIAのE61というスマートフォンに、ソフトバンクのSIMカードを入れ、国際ローミングの手続きをして持っていったところ、ロスアンゼルスの空港で電源を入れたら、何もしなくても現地の電話会社の電波をつかまえ、いきなり現地時間を表示してくれたのにはびっくりしました。最近は腕時計を持たなくなったので終始重宝しました。そのほか空港やSC07会場の無線LANにつなげて気軽にWebをチェックしたりと海外旅行にはことの他便利でした。
・ついでにその他の携帯品を紹介してしまうと、もちろんThinkPadは必須で、その上のE61の手前にあるのが時差ぼけ解消にうそのように効くメラトニン錠剤。私にとっては今や必須の持参薬になっていますが、それまでの日本の明け方に当たるアメリカの午後になると体全体が眠気に襲われていた現象を感じなくなりました。その右が大変気に入っている広角23mmのKodak製のカメラ。ただし、軽いせいで手ぶれしやすく、暗い会場でスライドをメモ代わりに撮影するのには全く向いていません。それと長いフライトで退屈しないためのiPod nanoと言ったところです。もっともiPodのイヤホンは密閉性のよいもの(シュア E5C)に変えましたが。
・この程度に荷物をおさえ、衣類を加えた程度のハンドキャリー用鞄一個を持っての海外旅行は軽快で極めて快適です。
・テクニカル・コンファレンスの参加者にバッグと一緒に配布しているいつものコンファレンスCDが入っていないと思っていたら、今年はなんとUSB (1GB)に変わっていました。小さくて入っていたのに気がつかなかっただけでした。もっとも論文のpdfが入っているわけでもなく、単にSC07のウェブ・サイトにリンクさせているだけなので、合理的とはいえ会場受付で受け取るありがたみの方は年々減っていく感じです。
・ついでにその他の携帯品を紹介してしまうと、もちろんThinkPadは必須で、その上のE61の手前にあるのが時差ぼけ解消にうそのように効くメラトニン錠剤。私にとっては今や必須の持参薬になっていますが、それまでの日本の明け方に当たるアメリカの午後になると体全体が眠気に襲われていた現象を感じなくなりました。その右が大変気に入っている広角23mmのKodak製のカメラ。ただし、軽いせいで手ぶれしやすく、暗い会場でスライドをメモ代わりに撮影するのには全く向いていません。それと長いフライトで退屈しないためのiPod nanoと言ったところです。もっともiPodのイヤホンは密閉性のよいもの(シュア E5C)に変えましたが。
・この程度に荷物をおさえ、衣類を加えた程度のハンドキャリー用鞄一個を持っての海外旅行は軽快で極めて快適です。
2007年11月08日
●SC07 展示ブースでのことしの賞品は?
・SC07がいよいよ11/10から始まるので、SC07参加登録をした私にも各社から展示ブースへの案内eメールがどんどん届いているところです。
・ただ去年にくらべてブース訪問者へ賞品をだすところが減った印象です。
・Visual Numerics社のiPod Shuffle
・ LSI Corporation社のクイズ解答者全員にStarbucks card
・ RapidMind社のPLAYSTATION3 三台
・ ADVA Optical Networking社は招待メールのプリントアウトを持参すれば1 GB USB flash drive (気前がよい)
・ SGI社が25周年記念ということでApple iPod iTouch
といったところでしょうか。
・ただ去年にくらべてブース訪問者へ賞品をだすところが減った印象です。
・Visual Numerics社のiPod Shuffle
・ LSI Corporation社のクイズ解答者全員にStarbucks card
・ RapidMind社のPLAYSTATION3 三台
・ ADVA Optical Networking社は招待メールのプリントアウトを持参すれば1 GB USB flash drive (気前がよい)
・ SGI社が25周年記念ということでApple iPod iTouch
といったところでしょうか。
2007年10月03日
●理研GSC10周年記念の講演会から
・理研Genomic Sciences Center (ゲノム科学総合研究センター)の創立10周年を記念した講演会が都内経団連ホールで先週9月26日に開催されましたが、中でも和田昭允前センター所長の「GSCの歩み」と題した講演は非常に面白い内容でした。
・和田先生は、「批判なきところに進歩なし」ー 将来に向けての建設的な批判を歓迎する ー としていますが、一方ゲノム科学分野をビッグサイエンスと捉えて短期間で世界をリードするプロジェクトの研究成果をGSCが示すことができたことは事実であり、さまざまな立場にとっても多いに参考になることが多いはずです。昨年に続きSC07のゴードン・ベル賞のFinalistになったMDGRAPE-3プロジェクトもこの理研GSCのプロジェクトです。
・当日いただいた和田先生の著書「物理学は越境する ー ゲノムへの道 ー」にはハーパード大留学時代にハーバード大が開発した真空管時代の電子計算機マーク4(Mark IV)、MITのコアメモリーの電子計算機ホワールウィンド(Whirlwind)を見てたいへんなショックを受け、将来の科学研究を制するものは計算の速度・精度・量であることを叩き込まれ、この刷り込みがその後の研究に大きな影響を与えることになったとあります。1954年頃に今で言うHPCの科学分野における価値を的確に感じ取られていたということでしょうか。この本には他にも"「小柴カミオカンデと」と「和田DNA」の違い ー 衆議院での証言"などなど、内容が全編に渡り極めて含蓄に富んだものになっています。この10年間のGSCのプロジェクトの成果は和田先生のこうした経験・思考をベースにした戦略によって強く支えられてきたのだろうということが容易にうかがわれます。非常に面白い本です。
・理研GSCには10年間で総額1,260億円の研究費が投下されたとあるので、HPCの分野における7年間で約1,150億円の予定の次世代スーパーコンピューター開発の国家プロジェクトと、偶然でしょうが、期間と予算がほぼ同規模です。
・GSCの設立にあたって尽力されたのが当時科学技術庁のライフサイエンス課長だったという藤木完治氏で、この講演会での挨拶では実に楽しそうにこのころのことを紹介していました。現在は文部科学省の審議官として、スーパーコンピューター整備推進本部長という次世代スーパーコンピューター・プロジェクトの要の任です。
同じふたつの国家プロジェクトー10年前にスタートしたGSCと、昨年スタートしたぱかりの次世代スーパーコンピューター・プロジェクトをいろいろな方向から比較し思考実験してみるのも興味深いものです。
・和田先生は、「批判なきところに進歩なし」ー 将来に向けての建設的な批判を歓迎する ー としていますが、一方ゲノム科学分野をビッグサイエンスと捉えて短期間で世界をリードするプロジェクトの研究成果をGSCが示すことができたことは事実であり、さまざまな立場にとっても多いに参考になることが多いはずです。昨年に続きSC07のゴードン・ベル賞のFinalistになったMDGRAPE-3プロジェクトもこの理研GSCのプロジェクトです。
・当日いただいた和田先生の著書「物理学は越境する ー ゲノムへの道 ー」にはハーパード大留学時代にハーバード大が開発した真空管時代の電子計算機マーク4(Mark IV)、MITのコアメモリーの電子計算機ホワールウィンド(Whirlwind)を見てたいへんなショックを受け、将来の科学研究を制するものは計算の速度・精度・量であることを叩き込まれ、この刷り込みがその後の研究に大きな影響を与えることになったとあります。1954年頃に今で言うHPCの科学分野における価値を的確に感じ取られていたということでしょうか。この本には他にも"「小柴カミオカンデと」と「和田DNA」の違い ー 衆議院での証言"などなど、内容が全編に渡り極めて含蓄に富んだものになっています。この10年間のGSCのプロジェクトの成果は和田先生のこうした経験・思考をベースにした戦略によって強く支えられてきたのだろうということが容易にうかがわれます。非常に面白い本です。・理研GSCには10年間で総額1,260億円の研究費が投下されたとあるので、HPCの分野における7年間で約1,150億円の予定の次世代スーパーコンピューター開発の国家プロジェクトと、偶然でしょうが、期間と予算がほぼ同規模です。
・GSCの設立にあたって尽力されたのが当時科学技術庁のライフサイエンス課長だったという藤木完治氏で、この講演会での挨拶では実に楽しそうにこのころのことを紹介していました。現在は文部科学省の審議官として、スーパーコンピューター整備推進本部長という次世代スーパーコンピューター・プロジェクトの要の任です。
同じふたつの国家プロジェクトー10年前にスタートしたGSCと、昨年スタートしたぱかりの次世代スーパーコンピューター・プロジェクトをいろいろな方向から比較し思考実験してみるのも興味深いものです。
2007年09月16日
●スーパーコンピューターを20万円で創る
・友人の霜田さんが面白いと言って貸してくれたのがこの新書です。
スーパーコンピューターを20万円で創る
伊藤智義著 集英社新書(2007.6)
・いまではゴードン・ベル賞の常連となっている宇宙シミュレーション専用超高速コンピューターGrapeですが、その開発プロジェクト開始時、1989年に東大杉本研究室の大学院生(M1)として参加し、それ以来ハードウェアの開発を担当してGrape-1、Grape-2の成功をもたらした中核の一人、伊藤智義氏(現千葉大教授)による本です
・Grapeも発展してGrape-7が稼動するまでになり、さらに分子動力学専用のMD-Grapeへと枝分かれし、こちらもMDGRAPE-3へと進化して理研で稼動を始めています。そして今年のゴードン・ベル賞ファイナリストにもなっています。
より汎用目的のGRAPE-DRプロジェクトも進行中です。
・この本のユニークなところは、なんといってもプロジェクトの主要当事者である伊藤智義氏が執筆し当時のリーダーの杉本教授始め全員が実名で登場していることで、日本の出版物としてはめずらしいのではないでしょうか。文章は平易でたいへん読みやすいものです。
HPC関係者にとっても貴重な一冊になることは間違いありません。
この本から連想したのは、ステルスの開発者が書いた「ステルス戦闘機―スカンク・ワークスの秘密 」Ben R. Rich (原著), 増田 興司 (翻訳) 講談社 (1997/01) です。これも非常に面白い本でしたが、Grapeプロジェクトは、もしかして日本風にアレンジされたスカンク・ワークスだったのかも知れません。
スーパーコンピューターを20万円で創る
伊藤智義著 集英社新書(2007.6)
・いまではゴードン・ベル賞の常連となっている宇宙シミュレーション専用超高速コンピューターGrapeですが、その開発プロジェクト開始時、1989年に東大杉本研究室の大学院生(M1)として参加し、それ以来ハードウェアの開発を担当してGrape-1、Grape-2の成功をもたらした中核の一人、伊藤智義氏(現千葉大教授)による本です
・Grapeも発展してGrape-7が稼動するまでになり、さらに分子動力学専用のMD-Grapeへと枝分かれし、こちらもMDGRAPE-3へと進化して理研で稼動を始めています。そして今年のゴードン・ベル賞ファイナリストにもなっています。
より汎用目的のGRAPE-DRプロジェクトも進行中です。
・この本のユニークなところは、なんといってもプロジェクトの主要当事者である伊藤智義氏が執筆し当時のリーダーの杉本教授始め全員が実名で登場していることで、日本の出版物としてはめずらしいのではないでしょうか。文章は平易でたいへん読みやすいものです。
HPC関係者にとっても貴重な一冊になることは間違いありません。
この本から連想したのは、ステルスの開発者が書いた「ステルス戦闘機―スカンク・ワークスの秘密 」Ben R. Rich (原著), 増田 興司 (翻訳) 講談社 (1997/01) です。これも非常に面白い本でしたが、Grapeプロジェクトは、もしかして日本風にアレンジされたスカンク・ワークスだったのかも知れません。
2007年08月19日
●太陽系で最も多用途なコンピュータ・アーキテクチャは?
・記憶に残っているかも知れませんが、8月初旬に火星の北極に向けて飛び立ったNASAのフェニックス・マースランダーにはBAEシステムズ社ベースのRAND6000というコンピュータが載っていて飛行中はもちろん火星着陸後もいろいろな制御を行います。
・初代の火星着陸機マース・パスファインダー以来、宇宙空間の強烈な放射線への対策が取られたプロセッサーが米国で開発され火星探査機に搭載されてきましたが、これらにはIBMのPower Architectureが用いられています。
・ということで、IBMのプレスリリース「IBM Power Architectureが火星の未踏の地へ」には誇り高く、「Power Architectureベースのプロセッサーは、3大ゲーム機のすべて、世界中の自動車モデルの50%、世界最速のコンピューターの60%、そして火星上のシステムの100%に使われています。Powerこそ、太陽系において真の意味でもっとも多用途のコンピューティング・プラットフォームと言えます。」と宣言しています。
・3大ゲーム機というのは、Wii、Play Station 3、Xboxを指しています。世界最速のコンピューター60%というのはTop500からの計算値を言っています。
・HPC用途ではなんと言っても世界最速の4.7GHzで走るPOWER6プロセッサーのインパクトが強いですし、Blue Gene/PもPowerプロセッサーを搭載しますが、ゲーム機にも大量に使われているのでした。
Wii、Play Station 3、Xboxだけで8月までの今年の全世界の販売台数が約2,500万台(VG-Chartsによる)ですから、3大ゲーム機へのPower Architectureベースのプロセッサー数はふだん想像しているよりも意外に多いですね。ちなみに今年のパソコンの全世界販売台数の予測は約二億五千万台だそうです(Gartnerによる)。
・初代の火星着陸機マース・パスファインダー以来、宇宙空間の強烈な放射線への対策が取られたプロセッサーが米国で開発され火星探査機に搭載されてきましたが、これらにはIBMのPower Architectureが用いられています。
・ということで、IBMのプレスリリース「IBM Power Architectureが火星の未踏の地へ」には誇り高く、「Power Architectureベースのプロセッサーは、3大ゲーム機のすべて、世界中の自動車モデルの50%、世界最速のコンピューターの60%、そして火星上のシステムの100%に使われています。Powerこそ、太陽系において真の意味でもっとも多用途のコンピューティング・プラットフォームと言えます。」と宣言しています。
・3大ゲーム機というのは、Wii、Play Station 3、Xboxを指しています。世界最速のコンピューター60%というのはTop500からの計算値を言っています。
・HPC用途ではなんと言っても世界最速の4.7GHzで走るPOWER6プロセッサーのインパクトが強いですし、Blue Gene/PもPowerプロセッサーを搭載しますが、ゲーム機にも大量に使われているのでした。
Wii、Play Station 3、Xboxだけで8月までの今年の全世界の販売台数が約2,500万台(VG-Chartsによる)ですから、3大ゲーム機へのPower Architectureベースのプロセッサー数はふだん想像しているよりも意外に多いですね。ちなみに今年のパソコンの全世界販売台数の予測は約二億五千万台だそうです(Gartnerによる)。
2007年07月19日
●原子力発電プラントとHPC
・原子力発電プラント設計開発とHPCとは1980年代までは車の両輪のように、前者がニーズを作り後者がそれに答えるという形で共に発展して来ました。その後、スリーマイルアイランド(TMI)原子力発電所の炉心溶融事故を発端に米国がしだいに原子力発電から撤収して、今では新規の原子力発電所の建設は日本でもまれになってしまいました。
・ところがフランスは電力の80%を原子力発電から供給しているように、それほどは不活発でなさそうで、IBMも原子力産業へのコンサルティングやITシステム設計に長年の経験を蓄積してきたようです。
・日本と設置場所誘致で激しく争って勝った国際核融合プロジェクトITER(International Thermo Nuclear Experimental Reactor) も、たぶんそうした原子力開発戦略の上に立ってカダラッシェへの誘致に競り勝ったのだと思いますが、こんどIBMが「原子力発電のための国際拠点センター(Global Center of Excellence for Nuclear Power)」をカダラッシェのそばでニースに近いラ・ゴードに設立しています。そこではHPCについても研究所と協力して行います。
・さて月曜の中越沖の地震で、東電の柏崎刈羽原子力発電所の大小さまざまな課題について新聞、TVを通して報道されていますが、これも蕁麻疹程度のものからもしかして重病になるかもしれない活断層上の原発の安全性と色々です。
・もともと地震と原子炉構造物の耐震設計とか、地盤を含めた震源地から原子炉建屋への地震波伝播の解析などはHPCの対象分野だったところですから、難しい活断層についてもHPCをふんだんに利用した設計手法をあらたに開発していってほしいところです。
・現在稼働中の原子力発電所が設計された頃とはくらべものにならないほどバワフルなHPC環境をいま活用し、設計だけでなく再処理や廃棄物処理すべてにわたって安全性実現の画期的な方法をあみだすために、フランスだけでなく日本でもふたたび原子力分野にHPCの出番がやってくるといいですね。
新聞等では柏崎刈羽原子力発電所で地震によりトラブルが50件も見つかったというように、数を強調した記事がいまは目につきます。それとは別に、原子力発電所の設計者や安全性の専門家は、設計時の最大想定マグニチュード(直下でM6.5)を超えたと言われる大型地震(M6.8)での原子力発電プラントの今回の挙動についてどう評価しているでしょうか。技術的には興味深いです。
・ところがフランスは電力の80%を原子力発電から供給しているように、それほどは不活発でなさそうで、IBMも原子力産業へのコンサルティングやITシステム設計に長年の経験を蓄積してきたようです。
・日本と設置場所誘致で激しく争って勝った国際核融合プロジェクトITER(International Thermo Nuclear Experimental Reactor) も、たぶんそうした原子力開発戦略の上に立ってカダラッシェへの誘致に競り勝ったのだと思いますが、こんどIBMが「原子力発電のための国際拠点センター(Global Center of Excellence for Nuclear Power)」をカダラッシェのそばでニースに近いラ・ゴードに設立しています。そこではHPCについても研究所と協力して行います。
・さて月曜の中越沖の地震で、東電の柏崎刈羽原子力発電所の大小さまざまな課題について新聞、TVを通して報道されていますが、これも蕁麻疹程度のものからもしかして重病になるかもしれない活断層上の原発の安全性と色々です。
・もともと地震と原子炉構造物の耐震設計とか、地盤を含めた震源地から原子炉建屋への地震波伝播の解析などはHPCの対象分野だったところですから、難しい活断層についてもHPCをふんだんに利用した設計手法をあらたに開発していってほしいところです。
・現在稼働中の原子力発電所が設計された頃とはくらべものにならないほどバワフルなHPC環境をいま活用し、設計だけでなく再処理や廃棄物処理すべてにわたって安全性実現の画期的な方法をあみだすために、フランスだけでなく日本でもふたたび原子力分野にHPCの出番がやってくるといいですね。
新聞等では柏崎刈羽原子力発電所で地震によりトラブルが50件も見つかったというように、数を強調した記事がいまは目につきます。それとは別に、原子力発電所の設計者や安全性の専門家は、設計時の最大想定マグニチュード(直下でM6.5)を超えたと言われる大型地震(M6.8)での原子力発電プラントの今回の挙動についてどう評価しているでしょうか。技術的には興味深いです。
2007年06月08日
●SPECはお好き?
ここでいうSPECというのは仕様のSpecではなく、ベンチマーク性能としてよく使われているSPEC_intとかSPEC_fpとかのSPEC CPUの方です。いまだに好きになれないベンチマーク指標ですが最近はあらゆるところで使われています。SPEC CPUがもともとミニコンの世界から出て来た指標で、大型システムの世界では使っていなくてなじみがなかったというのもありますが、どうもそれだけではないようです。その理由はたぶんコンセプトがすっきりしないということです。まずその点を四つあげると、
1. 呼び名(版)が次々に変わっていく ー SPEC CPU92、SPEC CPU95、SPEC CPU2000、そして今年からはSPEC CPU2006になりました。
2. 版が変わるたびにベンチマークの規格が変わる ー 簡単にいうとSPEC2000ではインテジャーについては12個のプログラム、フローティング・ポイントについては14個のプログラムで計算時間を測定していました。ところがSPEC2006になるとこれが変わって、インテジャーが別の12個のプログラム、フローティング・ポイントについては17個にプログラムが増えます。一事が万事で、これではSPEC CPUといいつつ版が違うベンチマーク間の性能データに互換性がありません。不便ですし、理解しにくいベンチマーク・コンセプトです。
3. 加えて、ペンチマーク性能値が相対値表示である ー これはよく知られていることですが、SPEC CPU92では5MHzのDEC Vax11/80というミニコンの性能値を1.0としたノーマライズ値を使いました。以降もノーマライズ値を使用するという方針は変わらず、SPEC CPU95では40MHzのSun Sparc Station 10/40、CPU2000では300MHzのSun Ultra 5/10、CPU2006では296MHzのSun Ultra Enterprise 2というように、これらの計算時間でノーマライズします。いわば校正原器が版ごとに変わるということで違和感があります。さらにCPU2000では上の基準機の性能を100.0にしたため、SPEC_int が1,345などびっくりする高い値に跳ね上がりました。CPU2006 では一転して元の1.0に戻しています。
4. SPEC CPU値は相対性能値の幾何学平均値 ー インテジャー、フローティング・ポイントそれぞれ10個以上のプログラムの測定値からどうやって一個のSPEC_intとSPEC_fp値をだせるかということですが、これはよくするように個々のプログラムの相対性能値の幾何学平均を取り、一つの値にしています。そのため同じSPEC CPU値でも元々の素性というか、29個のプログラムの性能分布は全然違うということもありえます。こういう決め方にもいかにも安直という印象を受けてしまいます。
こうしたややこしさと不透明さから私はSPEC CPU値は好きになれないのですが、それにしてもどうしてこういう気持ちの悪い仕様が続いてきているのでしょうか。
SPECと対局にあるのがLINPACKベンチマークです。こちらはFLOPSという絶対性能による評価な上にプログラムも一個かつ不変です。このためTop500リストにあるような1993年からのスーパー・コンピューターの長年の性能変遷もクリアに見えてきます。
物理出のSimple is Bestをよしとする気風なこともあってか、私はLINPACKの方がずっと好ましいですね。
1. 呼び名(版)が次々に変わっていく ー SPEC CPU92、SPEC CPU95、SPEC CPU2000、そして今年からはSPEC CPU2006になりました。
2. 版が変わるたびにベンチマークの規格が変わる ー 簡単にいうとSPEC2000ではインテジャーについては12個のプログラム、フローティング・ポイントについては14個のプログラムで計算時間を測定していました。ところがSPEC2006になるとこれが変わって、インテジャーが別の12個のプログラム、フローティング・ポイントについては17個にプログラムが増えます。一事が万事で、これではSPEC CPUといいつつ版が違うベンチマーク間の性能データに互換性がありません。不便ですし、理解しにくいベンチマーク・コンセプトです。
3. 加えて、ペンチマーク性能値が相対値表示である ー これはよく知られていることですが、SPEC CPU92では5MHzのDEC Vax11/80というミニコンの性能値を1.0としたノーマライズ値を使いました。以降もノーマライズ値を使用するという方針は変わらず、SPEC CPU95では40MHzのSun Sparc Station 10/40、CPU2000では300MHzのSun Ultra 5/10、CPU2006では296MHzのSun Ultra Enterprise 2というように、これらの計算時間でノーマライズします。いわば校正原器が版ごとに変わるということで違和感があります。さらにCPU2000では上の基準機の性能を100.0にしたため、SPEC_int が1,345などびっくりする高い値に跳ね上がりました。CPU2006 では一転して元の1.0に戻しています。
4. SPEC CPU値は相対性能値の幾何学平均値 ー インテジャー、フローティング・ポイントそれぞれ10個以上のプログラムの測定値からどうやって一個のSPEC_intとSPEC_fp値をだせるかということですが、これはよくするように個々のプログラムの相対性能値の幾何学平均を取り、一つの値にしています。そのため同じSPEC CPU値でも元々の素性というか、29個のプログラムの性能分布は全然違うということもありえます。こういう決め方にもいかにも安直という印象を受けてしまいます。
こうしたややこしさと不透明さから私はSPEC CPU値は好きになれないのですが、それにしてもどうしてこういう気持ちの悪い仕様が続いてきているのでしょうか。
SPECと対局にあるのがLINPACKベンチマークです。こちらはFLOPSという絶対性能による評価な上にプログラムも一個かつ不変です。このためTop500リストにあるような1993年からのスーパー・コンピューターの長年の性能変遷もクリアに見えてきます。
物理出のSimple is Bestをよしとする気風なこともあってか、私はLINPACKの方がずっと好ましいですね。
2007年04月09日
●中井直男著「IT立国とわがPM記」
・いつもの話題を変えて新刊書「IT立国とわがPM」の紹介です。
・最近は研究者の方でも、多かれ少なかれ研究プロジェクトのプロジェクト・マネージャー(PM)の役割を果たす必要が生じているようにも見受けられます。
・プロジェクト・マネージャー(PM)のPは、Pressure(圧力、働きかけ)のPでありまたPeople(人材集めと活用)のPである。この二つのPこそが特別な意味を持っているというのが著者中井直男氏の一貫した見識です。
・実を言うと著者は私の上司だった方で、IBMでスーパーコンピューターを手がける拠点を米国キングストン、パロアルト、ローマに続き1988年日本アイ・ビー・エム (Tokyo Numerical-Intensive Computing Center)に最初に作っています。
・日本アイ・ビー・エムでは、もともと中井氏はシステム・エンジニア部門の大ボスとして企業のSEとはどうあるべきかを常に考えてきただけでなく、チャレンジングなプロジェクトを次々に手がけた人としてよく知られています。
・名著となった杉山隆男著「メディアの興亡」(文芸春秋社)で知られているJPS ― コンピューターで新聞をすべて制作するシステムの日米共同開発プロジェクトに1969年頃からPMとして挑戦しています。そのときのことをいわば裏側から語っていますが、どのような苦労と日米折衝があったか等は時の経た今でないと書けない話かもしれません。
・ともかく日本アイ・ビー・エムのなかでも、大プロジェクト・マネージャーとしてのたぐいまれな著者の経験と見識にふれられただけでもたいへん面白い読書でした。
日本固有の以心伝心や本音と建前が主流だった中で、今考えると未曾有の困難なプロジェクト・マネージャーをやりとおした著者が綴る言葉は、むしろ今のはるかに複雑な環境下でのPMの骨太な道しるべでしょう。
・プロジェクト・マネージャー(PM)のPは、Pressure(圧力、働きかけ)のPでありまたPeople(人材集めと活用)のPである。この二つのPこそが特別な意味を持っているというのが著者中井直男氏の一貫した見識です。
・実を言うと著者は私の上司だった方で、IBMでスーパーコンピューターを手がける拠点を米国キングストン、パロアルト、ローマに続き1988年日本アイ・ビー・エム (Tokyo Numerical-Intensive Computing Center)に最初に作っています。
・日本アイ・ビー・エムでは、もともと中井氏はシステム・エンジニア部門の大ボスとして企業のSEとはどうあるべきかを常に考えてきただけでなく、チャレンジングなプロジェクトを次々に手がけた人としてよく知られています。
・名著となった杉山隆男著「メディアの興亡」(文芸春秋社)で知られているJPS ― コンピューターで新聞をすべて制作するシステムの日米共同開発プロジェクトに1969年頃からPMとして挑戦しています。そのときのことをいわば裏側から語っていますが、どのような苦労と日米折衝があったか等は時の経た今でないと書けない話かもしれません。
・ともかく日本アイ・ビー・エムのなかでも、大プロジェクト・マネージャーとしてのたぐいまれな著者の経験と見識にふれられただけでもたいへん面白い読書でした。
日本固有の以心伝心や本音と建前が主流だった中で、今考えると未曾有の困難なプロジェクト・マネージャーをやりとおした著者が綴る言葉は、むしろ今のはるかに複雑な環境下でのPMの骨太な道しるべでしょう。
2007年03月17日
● 35年前のスーパーコンピューター
・先週ある20代の方から、5年前のサーバーを新機種に変えたら、その性能の違いに思わず感激したという話を聞きました。では私が同年代の35年前のときはどうだったかと考えてみると、キーパンチャーという職種の人にカードをキーパンチしてもらい、それを大型計算センターの受付に運んで、やっとコンピューターに仕事をさせたという状況でした。数千枚のカードを誤って廊下に落として順番がばらばらになって途方にくれるという光景も時たま見られた頃です。

・この時のスーパー・コンピューターというとIBM System/360 モデル195とCDC 7600の二つの大型システムでした。ベクトル・コンピューター Cray-1が発売される前です。
・IBM S/360モデル195は日本ではスーパー・コンピューターとして余り取り上げられませんが、一台だけ使われていました。写真(*)のようにランプが並ぶコントロール・パネルがタタミ一畳はあろうかという、いかにも超大型コンピューター・システムという魅力的なシステムでした。そのせいか発表当初は世界にモデル195が10台あればすべての計算をまかなえると言った人がいたとか。
・とはいえ、クロック・サイクルが54ナノ秒、メモリーは最大でもたったの4,096Kバイト(4MB)です。

記憶違いかと思って当時の資料(Functional Characteristicsの手書き訳(**))を見ると確かにそのとおりです。ただしアーキテクチャは革新的で、今で言うキャッシュ・メモリーが本格的に実装(バッファー・ストレージ 32Kバイトというのがそれ)され、最近話題になってきた4倍精度浮動小数点演算も考慮した、掛けねなく革新的で高い性能のシステムになっていました。
・IBM製のシステムには、この時の革新的なアーキテクチャが人を通じて有形無形で延々と受け継がれて来ているように見えます。
・ドッグ・イヤーといわれる現在ですから過去の35年間はこれからの6年―まあ10年だとして、その時にはどこまで進んでいるのでしょうか。
* IBM System/360 Model 195 Operation Procedures, Order No. GC28-6540
** IBM System/360 Model 195 Functional Characteristics (日本語訳ノート)
・この時のスーパー・コンピューターというとIBM System/360 モデル195とCDC 7600の二つの大型システムでした。ベクトル・コンピューター Cray-1が発売される前です。
・IBM S/360モデル195は日本ではスーパー・コンピューターとして余り取り上げられませんが、一台だけ使われていました。写真(*)のようにランプが並ぶコントロール・パネルがタタミ一畳はあろうかという、いかにも超大型コンピューター・システムという魅力的なシステムでした。そのせいか発表当初は世界にモデル195が10台あればすべての計算をまかなえると言った人がいたとか。
・とはいえ、クロック・サイクルが54ナノ秒、メモリーは最大でもたったの4,096Kバイト(4MB)です。
記憶違いかと思って当時の資料(Functional Characteristicsの手書き訳(**))を見ると確かにそのとおりです。ただしアーキテクチャは革新的で、今で言うキャッシュ・メモリーが本格的に実装(バッファー・ストレージ 32Kバイトというのがそれ)され、最近話題になってきた4倍精度浮動小数点演算も考慮した、掛けねなく革新的で高い性能のシステムになっていました。
・IBM製のシステムには、この時の革新的なアーキテクチャが人を通じて有形無形で延々と受け継がれて来ているように見えます。
・ドッグ・イヤーといわれる現在ですから過去の35年間はこれからの6年―まあ10年だとして、その時にはどこまで進んでいるのでしょうか。
* IBM System/360 Model 195 Operation Procedures, Order No. GC28-6540
** IBM System/360 Model 195 Functional Characteristics (日本語訳ノート)
2007年02月27日
●女性初のチューリング賞受賞
・はじめて女性がチューリング賞受賞をしたということでいろいろニュースになっています。女性だからという枕ことばで話題になるというのも意外な感じです。米国も例外ではないということでしょう。先日もハーバード大の学長が「女性学長ではなく学長です」と言ったとかで話題を提供していました。
・さて今年の受賞者のフランセス・アレンは江崎玲於奈氏と同じようにIBMフェローだった方で、長年IBMワトソン・リサーチ・センターでHPCの基盤であるコンパイラー設計やマシン・アーキテクチャの分野で功績をあげてきた研究者です。
・ソウルで1991年の厳冬の時期に開催されたSUPERCOM'91というワークショップで、お互い講演者としてお会いする機会がありました。そのときの写真がこれですが、周りのIBM研究者からたいへん慕われているおば様という雰囲気でした。推察するにこの時すでに60才近かったのではないかと思います(女性の年を尋ねるのはご法度なので)。ちなみに右端がIBM Fortran H-Extendedコンパイラーという最適化コンパイラーの開発で名をはせたスカボローです。
・さて今年の受賞者のフランセス・アレンは江崎玲於奈氏と同じようにIBMフェローだった方で、長年IBMワトソン・リサーチ・センターでHPCの基盤であるコンパイラー設計やマシン・アーキテクチャの分野で功績をあげてきた研究者です。
・ソウルで1991年の厳冬の時期に開催されたSUPERCOM'91というワークショップで、お互い講演者としてお会いする機会がありました。そのときの写真がこれですが、周りのIBM研究者からたいへん慕われているおば様という雰囲気でした。推察するにこの時すでに60才近かったのではないかと思います(女性の年を尋ねるのはご法度なので)。ちなみに右端がIBM Fortran H-Extendedコンパイラーという最適化コンパイラーの開発で名をはせたスカボローです。
2007年02月14日
●HPCはライフサイエンスにどこまで貢献できるか?
・12月に続いて、先週の建国記念日の3連休はライフサイエンスをテーマに30人ほどで天城高原にこもって来ました。前回とは一変、絶好の天気となり富士も見えハッピーな三日間でした。

・ライフサイエンス、ライフサイエンスと世界中で言われるようになって早6-7年以上が経っています。Blue Geneや次世代スーパーコンピューターでもわかるようにHPCからの大きな貢献が期待されている分野ですが、生命現象がわかってくるにつれますます理解への道のりが遠くなってきているというのが私の実感です。それはさておき、
・その天城で、大手製薬企業のR&D担当役員氏からは、あるブロックバスター薬(年間売上高10億ドル―約1000億円以上の医薬品のことを言います)の開発実例を引かれて、つぎの4点で貢献できるようにならないと本当にHPCが創薬に役立つとは言えないと具体的かつ貴重な指摘です。
1) 創薬ターゲットの構造から、薬となる低分子化合物のデザインと最適化ができること
2) ねずみや犬などの特定の動物を選んで薬理作用のシミュレーションができるようになること
3) 特定のブロックバスター薬をさらに強力にするための要件が抽出できるようになること。たとえば薬物の体内での代謝、薬物の標的となる臓器での薬物滞留性がシミュレーションなどから推定できるようになること
4) 特定のブロックバスター薬によって副作用を起こす患者かどうかをPharmacoGenomics(PGx)から判定できること。
私はこの分野に精通した専門家ではありませんが、現状としては:
- 1)については一般にドッキング・シミュレーションと言われ、いま急ピッチで研究が進められている分野が答えになります。今はまだ計算量を配慮しての比較的簡単なシミュレーション・モデルによるものが中心ですが、今からでも最もHPCが役立ちそうな分野です。
- 2)は体内の代謝ネットワークが絡む問題で、非常に複雑な問題になることが想像されます。細胞レベルに限ったこの種のアプローチとしてはE-CELLが世界的に有名ですが、体が対象となるとまだこれからです。
- 3)は、2)の人間版といった内容のため、人体の代謝などについての十分なデータ・ペースがどれだけ確立できるかがカギになってきます。
- 4)は、今回のメインテーマだったものですが、いわば研究開発の初期段階にあります。
単にライフサイエンスとHPCというようにひとくくりに言うのではなく、この4点で示されるような創薬研究現場の問題提示からHPCの貢献度を時々考えることも大事だと再認識させられた山ごもりでした。
・ライフサイエンス、ライフサイエンスと世界中で言われるようになって早6-7年以上が経っています。Blue Geneや次世代スーパーコンピューターでもわかるようにHPCからの大きな貢献が期待されている分野ですが、生命現象がわかってくるにつれますます理解への道のりが遠くなってきているというのが私の実感です。それはさておき、
・その天城で、大手製薬企業のR&D担当役員氏からは、あるブロックバスター薬(年間売上高10億ドル―約1000億円以上の医薬品のことを言います)の開発実例を引かれて、つぎの4点で貢献できるようにならないと本当にHPCが創薬に役立つとは言えないと具体的かつ貴重な指摘です。
1) 創薬ターゲットの構造から、薬となる低分子化合物のデザインと最適化ができること
2) ねずみや犬などの特定の動物を選んで薬理作用のシミュレーションができるようになること
3) 特定のブロックバスター薬をさらに強力にするための要件が抽出できるようになること。たとえば薬物の体内での代謝、薬物の標的となる臓器での薬物滞留性がシミュレーションなどから推定できるようになること
4) 特定のブロックバスター薬によって副作用を起こす患者かどうかをPharmacoGenomics(PGx)から判定できること。
私はこの分野に精通した専門家ではありませんが、現状としては:
- 1)については一般にドッキング・シミュレーションと言われ、いま急ピッチで研究が進められている分野が答えになります。今はまだ計算量を配慮しての比較的簡単なシミュレーション・モデルによるものが中心ですが、今からでも最もHPCが役立ちそうな分野です。
- 2)は体内の代謝ネットワークが絡む問題で、非常に複雑な問題になることが想像されます。細胞レベルに限ったこの種のアプローチとしてはE-CELLが世界的に有名ですが、体が対象となるとまだこれからです。
- 3)は、2)の人間版といった内容のため、人体の代謝などについての十分なデータ・ペースがどれだけ確立できるかがカギになってきます。
- 4)は、今回のメインテーマだったものですが、いわば研究開発の初期段階にあります。
単にライフサイエンスとHPCというようにひとくくりに言うのではなく、この4点で示されるような創薬研究現場の問題提示からHPCの貢献度を時々考えることも大事だと再認識させられた山ごもりでした。
2007年01月04日
● A Happy New Year!
みなさま、新年おめでとうございます。
・ 昨年9月の頭にスタートしたこのHPCブログですが、正月休みに訪問者の方の数をLivedoorからのデータで勘定したら延べ3,703人の方が見て下さっていました。ありがとうございます。
・ 2007年もぼちぼちエンジンをかけていきたいと思いますが、今日は新年ご挨拶の代わりに、IBMの営業拠点となっている箱崎事業所の正面玄関に飾ってあった門松をご紹介します。
・ 最近門松は近所でもあまり見かけませんが、IBMは多国籍企業ということなのでしょうか、正月松の内は門松を、12月にはクリスマスツリーを箱崎事業所に飾っています。
それでは2007年 Cheer! HPCをよろしくお願いいたします。
・ 2007年もぼちぼちエンジンをかけていきたいと思いますが、今日は新年ご挨拶の代わりに、IBMの営業拠点となっている箱崎事業所の正面玄関に飾ってあった門松をご紹介します。
・ 最近門松は近所でもあまり見かけませんが、IBMは多国籍企業ということなのでしょうか、正月松の内は門松を、12月にはクリスマスツリーを箱崎事業所に飾っています。
それでは2007年 Cheer! HPCをよろしくお願いいたします。
2006年12月14日
● 週末の天城高原は雨でした
・ 標高800mの伊豆は天城高原にこもり、明るいうちはHPCの講義、日が暮れたら温泉で一風呂浴びて食事、そして夜10時過ぎまで議論を続けるという二泊三日のセミナーを週末にしてきました。
・ 中国から2人、アメリカから5人、日本から13人総勢20名の多士済々の方々が参加してくれました。 たまに海水パンツで温泉に入ろうとする海外からの参加者がいたりしますが、今回はそんなこともなく、一緒に温泉に入って和気あいあいになるなど予想以上によい雰囲気になりました。
・ そうなると日米(それにちょっぴり中国)からの参加者との会話から、それぞれのお国柄やHPCの取り組み方の実情を断片的とは言え、感じとることができます。
・ たとえば日本はHPCに大変真面目に取り組んでいますが、アプリケーションやソフトウェア・ツールが重要だという認識とそのための開発努力・投資については、総合的にバランスの取れた米国に比べるとやはり見劣りする面があります。
・ 一方、米国はSC06でも感じましたが、Weapon Scienceの研究という言葉を使い国立研究所がペタ・スケール規模のHPCシステム実現のために投資を続けています。またそうした目的意識の強い国立研究所は大学のスーパーコンピュータ・センターとは予算や活動方針について一線を画しています。 反面、産業界の競争力強化のためにHPCを役立たせるという意識は全体的に日本よりも低そうです。
・ 中国は国が広く農業や環境問題に関心があるせいか、気象予測がHPC分野で力が入っているように見うけられます。 IBMも中国のこの分野に進出しています。
・ 余談ですが、米国研究機関からの参加者に「What is Weapon Science?」と質問をしても、むにゃむにゃとあまり具体的には話してくれません (NIKE-3Dで代表される古くからのアプリケーション ― 爆発・衝撃解析、材料の経年変化予測や破壊解析等が含まれることは言うまでもないでしょうが)。
・ 日本はそのかわりと言うか、次世代スーパーコンピュータでも強く唄われているように、自動車、エレクトロニクス、化学、材料、ライフサイエンスなど産業界の様々な分野へもHPCを活用するということがコンセンサスとして明確になっていますし、やはりこの分野で顕著な成果を出すのが国際的にも日本が一段と評価される要素なのは間違いありません。 ただ、かなりの挑戦課題です。
・ 去年は朝起きると一面の雪景色で富士も真正面によく見えていましたが、今年はほとんど雨。 はっきりしない天候の中、天城高原を降りてきました。
・ 中国から2人、アメリカから5人、日本から13人総勢20名の多士済々の方々が参加してくれました。 たまに海水パンツで温泉に入ろうとする海外からの参加者がいたりしますが、今回はそんなこともなく、一緒に温泉に入って和気あいあいになるなど予想以上によい雰囲気になりました。
・ そうなると日米(それにちょっぴり中国)からの参加者との会話から、それぞれのお国柄やHPCの取り組み方の実情を断片的とは言え、感じとることができます。
・ たとえば日本はHPCに大変真面目に取り組んでいますが、アプリケーションやソフトウェア・ツールが重要だという認識とそのための開発努力・投資については、総合的にバランスの取れた米国に比べるとやはり見劣りする面があります。
・ 一方、米国はSC06でも感じましたが、Weapon Scienceの研究という言葉を使い国立研究所がペタ・スケール規模のHPCシステム実現のために投資を続けています。またそうした目的意識の強い国立研究所は大学のスーパーコンピュータ・センターとは予算や活動方針について一線を画しています。 反面、産業界の競争力強化のためにHPCを役立たせるという意識は全体的に日本よりも低そうです。
・ 中国は国が広く農業や環境問題に関心があるせいか、気象予測がHPC分野で力が入っているように見うけられます。 IBMも中国のこの分野に進出しています。
・ 余談ですが、米国研究機関からの参加者に「What is Weapon Science?」と質問をしても、むにゃむにゃとあまり具体的には話してくれません (NIKE-3Dで代表される古くからのアプリケーション ― 爆発・衝撃解析、材料の経年変化予測や破壊解析等が含まれることは言うまでもないでしょうが)。
・ 日本はそのかわりと言うか、次世代スーパーコンピュータでも強く唄われているように、自動車、エレクトロニクス、化学、材料、ライフサイエンスなど産業界の様々な分野へもHPCを活用するということがコンセンサスとして明確になっていますし、やはりこの分野で顕著な成果を出すのが国際的にも日本が一段と評価される要素なのは間違いありません。 ただ、かなりの挑戦課題です。
・ 去年は朝起きると一面の雪景色で富士も真正面によく見えていましたが、今年はほとんど雨。 はっきりしない天候の中、天城高原を降りてきました。
2006年11月25日
●DARPAのHPCSがPhase IIIへ
・米国の国防のための2010年のハイエンド・コンピューティングの目標に対し、テクノロジーと能力のギャップを埋めるというのが、国防省DARPAのHigh Productivity Computing Sytems(HPCS)イニシャティブのビジョンです。
・このプログラムは、Phase I, Phase IIと進み、そのたびに参加メーカーが絞り込まれ、11月21日の発表では、Phase IIIにはIBMとCrayが選ばれ、引き続き開発資金が提供されることになりました。
CNET Japan記事→ DARPAのスパコンプロジェクト、IBMとクレイに引き続き資金を援助へ。原文は→ Sun knocked out of DARPA supercomputer project
・上の原文が示すように、参加メーカーが2002年のPhase Iの時にはHP, SGI, SUNそしてIBM, Cray、2003年からのPhase IIではSUNとIBM, Crayのみ、Phase IIIではIBM, Crayと厳しい勝ち抜き戦が延々と続いてきました。
・その間には、CrayのHPCSを担当していた有名なBurton Smithが昨年SC05直後にマイクロソフトに移ると報道され話題になり、またCrayの社長にはIBMのDeep Computing営業部門の責任者で、たびたび日本にも来ていたPeter Ungaroが就任しています。
・AMDのプレスリリースによると、Cray製HPCSにはAMDのロードマップにあるプロセッサを使うことで進めていくようです。
・IBMは長年HPCSのためにPERCS - Productive, Easy-to-use, Reliable Computing Systemというシステムを研究してきましたが、これの成果とPOWERプロセッサーのロードマップへの信頼が最終選抜の決め手として大きかったのだろうと個人的に思っています。
POWERプロセッサーは現在POWER5+がIBM System p5サーバーなどに使用されていますが、IBMのプレスリリースによるとHPCSには二世代後のPOWER7を使用するとなっています。これに加えて革新的なPERCSの研究成果がソフトウェア/ハードウェア両面にどのように反映されていくのか興味深いところです。
プロセッサーの開発・変遷を長年見ていると、この二社(+AMD)がHPCSの現実的な解だったというのも自然なことでしょうか。
これで2010年に実現しているだろう米国のペタFLOPS級(サステインド性能)システムは、少なくともBlue Gene/P, RoadRunner, HPCSの三種類のシステム、そしてそのメーカーはIBM、CRAY(+AMD)へと絞られてしまいました。
・このプログラムは、Phase I, Phase IIと進み、そのたびに参加メーカーが絞り込まれ、11月21日の発表では、Phase IIIにはIBMとCrayが選ばれ、引き続き開発資金が提供されることになりました。
CNET Japan記事→ DARPAのスパコンプロジェクト、IBMとクレイに引き続き資金を援助へ。原文は→ Sun knocked out of DARPA supercomputer project
・上の原文が示すように、参加メーカーが2002年のPhase Iの時にはHP, SGI, SUNそしてIBM, Cray、2003年からのPhase IIではSUNとIBM, Crayのみ、Phase IIIではIBM, Crayと厳しい勝ち抜き戦が延々と続いてきました。
・その間には、CrayのHPCSを担当していた有名なBurton Smithが昨年SC05直後にマイクロソフトに移ると報道され話題になり、またCrayの社長にはIBMのDeep Computing営業部門の責任者で、たびたび日本にも来ていたPeter Ungaroが就任しています。
・AMDのプレスリリースによると、Cray製HPCSにはAMDのロードマップにあるプロセッサを使うことで進めていくようです。
・IBMは長年HPCSのためにPERCS - Productive, Easy-to-use, Reliable Computing Systemというシステムを研究してきましたが、これの成果とPOWERプロセッサーのロードマップへの信頼が最終選抜の決め手として大きかったのだろうと個人的に思っています。
POWERプロセッサーは現在POWER5+がIBM System p5サーバーなどに使用されていますが、IBMのプレスリリースによるとHPCSには二世代後のPOWER7を使用するとなっています。これに加えて革新的なPERCSの研究成果がソフトウェア/ハードウェア両面にどのように反映されていくのか興味深いところです。
プロセッサーの開発・変遷を長年見ていると、この二社(+AMD)がHPCSの現実的な解だったというのも自然なことでしょうか。
これで2010年に実現しているだろう米国のペタFLOPS級(サステインド性能)システムは、少なくともBlue Gene/P, RoadRunner, HPCSの三種類のシステム、そしてそのメーカーはIBM、CRAY(+AMD)へと絞られてしまいました。
2006年11月19日
● SC06スナップ
・行きと違って、シカゴ経由の帰りの飛行機は予定よりも30分以上も早く成田に到着。フロリダ帰りには寒気が一段と感じられた成田でした。
・タンパで開催されたSC06はホテルが会場のタンパ・コンベンション・センターの遠くに分散したため、シャトルバスが朝から7:00PMまで15分間隔で往復するシステムで、これがなかなかちょうほうでした。
バスも大型のリムジンバスです(写真)。
バスの後ろに見えるのがSC06会場のタンパ・コンベンション センターでダウンタウンの川岸に位置しています。
・SC06のオープニングとキーノートは、会場のボールルームを全部つないだ横長のスペースで行われました(写真)。そのため7セットのスクリーンをセットして講演者の顔とスライドを映しています。キーノートは発明家のRay Kurzweil氏が"The Coming Merger of Biological and Non Biological Intelligence"の題で話しました。25分も時間を超過した饒舌さでしたが、日本人の参加者にも大いに受けたかというとちょっと疑問かも知れません。
・お昼はだいたいの人がコンベンションセンターのロビーやテラスのあちこちにあるコーヒーショップなどで取ってました。写真は川べりのテラスで、ハンバーガーか何かの肉を焼いているいいにおいの煙がショップからたなびいていました。
講演や展示会で疲れたときに、このようなところで一休みできると時差ぼけからまたリフレッシュできるというものです。よい天気でした。
・写真はSC06のテクニカルセッションに登録するといただけるカンファレンス・バッグの中身です。
真ん中のCDがプロシーディングスで、紙の分厚いプロシーディングスを配らなくなってからもうだいぶ経ちました。
手前がRenoで開催されるSC07の案内、左の漂着ビンもどきにはマイクロソフトからのディナー招待状が入っていました。こうした遊びが見えるのもアメリカのコンファレンスらしくて楽しくなります。
さて来年はネバダ州のRenoです。小柳レポートによると第二回(1989年)がRenoだったので先祖がえりです。私個人はなぜか1986年6月に何かの国際会議でRenoに滞在しています。20年前の会議の内容はすっかり忘れてしまいましたが、山の上の狭い空港に飛行機が滑り込むまでのスリルだけはしっかりと覚えています。いまもそうなんでしょうか。
バスも大型のリムジンバスです(写真)。
バスの後ろに見えるのがSC06会場のタンパ・コンベンション センターでダウンタウンの川岸に位置しています。
講演や展示会で疲れたときに、このようなところで一休みできると時差ぼけからまたリフレッシュできるというものです。よい天気でした。
真ん中のCDがプロシーディングスで、紙の分厚いプロシーディングスを配らなくなってからもうだいぶ経ちました。
手前がRenoで開催されるSC07の案内、左の漂着ビンもどきにはマイクロソフトからのディナー招待状が入っていました。こうした遊びが見えるのもアメリカのコンファレンスらしくて楽しくなります。
さて来年はネバダ州のRenoです。小柳レポートによると第二回(1989年)がRenoだったので先祖がえりです。私個人はなぜか1986年6月に何かの国際会議でRenoに滞在しています。20年前の会議の内容はすっかり忘れてしまいましたが、山の上の狭い空港に飛行機が滑り込むまでのスリルだけはしっかりと覚えています。いまもそうなんでしょうか。
2006年11月04日
● 活断層地震の究明をシミュレーションで
・ 秋晴れの連休はのんびり読書で、朝永振一郎の「科学者の自由な楽園」(岩波文庫)などを気分にまかせて拾い読みです。
・ 知的好奇心ということについてもいろいろ触れられていますが、今読んでもたいへんおもしろいです。
たとえば「情報過多の中での好奇心」のところでは、情報の洪水の中では、くだらない間食をすると食欲がなくなってしまうので本当の意味の知的好奇心は出てこないとか、「野次馬」―大勢のひとがやるから俺もやろうという態度と、研究者に必要な「知的好奇心」とを混同してはいけないなど、今の情報量とは比較にならない1972年当時、すでにそうした懸念があったことがわかります。
・個人的には、空気や水にたとえた父親の暗黙の影響を語ったところが印象に残ります。
・さて、つくばにある独立行政法人 産業技術総合研究所
活断層研究センター(左写真)による地震のメカニズム解明と予測研究で、若手研究者がコンピュータ・シミュレーションに取り組んでいます。
・若手の研究者が一生懸命に研究に取り組んでいるのを拝見すると、いまホットな分野では(早稲田大の例や、ライフサイエンス分野なども含めて)俗にいわれる理科系ばなれは特に感じません。
・このインタビューのときは、私も立会いのために都内からつくばエクスプレスに乗ってしばらくぶりに訪れましたが、快速で45分でつくば駅に到着ですから便利になりました。
・「活断層地震の究明をシミュレーションで」として、IBM HPCのサイトに掲載されましたのでお知らせします。
余談ですが、理科系好きというのは、蜂が蜜に集まるように、どう見ても幼児のときからの持って生まれた強い性質ではないかというのが、家族や友人を見て私が抱く感覚です。
・ 知的好奇心ということについてもいろいろ触れられていますが、今読んでもたいへんおもしろいです。
たとえば「情報過多の中での好奇心」のところでは、情報の洪水の中では、くだらない間食をすると食欲がなくなってしまうので本当の意味の知的好奇心は出てこないとか、「野次馬」―大勢のひとがやるから俺もやろうという態度と、研究者に必要な「知的好奇心」とを混同してはいけないなど、今の情報量とは比較にならない1972年当時、すでにそうした懸念があったことがわかります。
・個人的には、空気や水にたとえた父親の暗黙の影響を語ったところが印象に残ります。
・さて、つくばにある独立行政法人 産業技術総合研究所
活断層研究センター(左写真)による地震のメカニズム解明と予測研究で、若手研究者がコンピュータ・シミュレーションに取り組んでいます。・若手の研究者が一生懸命に研究に取り組んでいるのを拝見すると、いまホットな分野では(早稲田大の例や、ライフサイエンス分野なども含めて)俗にいわれる理科系ばなれは特に感じません。
・このインタビューのときは、私も立会いのために都内からつくばエクスプレスに乗ってしばらくぶりに訪れましたが、快速で45分でつくば駅に到着ですから便利になりました。
・「活断層地震の究明をシミュレーションで」として、IBM HPCのサイトに掲載されましたのでお知らせします。
余談ですが、理科系好きというのは、蜂が蜜に集まるように、どう見ても幼児のときからの持って生まれた強い性質ではないかというのが、家族や友人を見て私が抱く感覚です。
2006年10月20日
● I blog. You blog. Weblog.
・このタイトルは今米国IBMサイトのトップ・ページに現れるコピーです。
・副題は、"Communicating, collaborating, and changing the face of business"となっています。
・HPCな方は特に違和感はないと思いますが、米国では研究所や工場勤務を除けば、専門家は転居はあまりせずに、むしろ週末以外は国中を飛び回る方を好みますし、IBM社員でもオフィスが自宅という人もめずらしくありません。自宅をオフィスにしていた米国IBMの知人が、税金もホームオフィスが得になるようになっているというのを聞いてなるほどと思いました。
・特に必要もないのに頻繁に顔を合わせて、いかにも汗をかいているのを見せないとビジネスに結びつかないといった例もまだまだあるでしょうが、最近は過度のFace-to-faceは談合・癒着のイメージ、それになによりお互い忙しくてオフィスにいないことも多いためにe-mailの方が便利になったりと、コミュニケーションの方法も変わってきました。
・いま米国では大企業がblogの急速な広がりやコミュニケーションへの影響力を理解してきていて、たとえばHP社のように役員blogを中心に掲載したり、米国IBMのようにWebのトップページで取り上げて多数のIBM bloggerを顔写真入りで掲載したりと積極的です。これはユーモアなのか大真面目なのかよくわかりませんが、IBMではEditor's choiceを紹介しています。ちなみにEditor's choiceには、HPCで知る人ぞ知るーSP1を開発したIrvingが選ばれています。
確かにcommunicationの方法としてblogはWebよりずっと負担(時間、費用)が少なく、いろんなフィードバックも得られやすいなというのがblog開始1ヶ月半の実感です。
・副題は、"Communicating, collaborating, and changing the face of business"となっています。
・HPCな方は特に違和感はないと思いますが、米国では研究所や工場勤務を除けば、専門家は転居はあまりせずに、むしろ週末以外は国中を飛び回る方を好みますし、IBM社員でもオフィスが自宅という人もめずらしくありません。自宅をオフィスにしていた米国IBMの知人が、税金もホームオフィスが得になるようになっているというのを聞いてなるほどと思いました。
・特に必要もないのに頻繁に顔を合わせて、いかにも汗をかいているのを見せないとビジネスに結びつかないといった例もまだまだあるでしょうが、最近は過度のFace-to-faceは談合・癒着のイメージ、それになによりお互い忙しくてオフィスにいないことも多いためにe-mailの方が便利になったりと、コミュニケーションの方法も変わってきました。
・いま米国では大企業がblogの急速な広がりやコミュニケーションへの影響力を理解してきていて、たとえばHP社のように役員blogを中心に掲載したり、米国IBMのようにWebのトップページで取り上げて多数のIBM bloggerを顔写真入りで掲載したりと積極的です。これはユーモアなのか大真面目なのかよくわかりませんが、IBMではEditor's choiceを紹介しています。ちなみにEditor's choiceには、HPCで知る人ぞ知るーSP1を開発したIrvingが選ばれています。
確かにcommunicationの方法としてblogはWebよりずっと負担(時間、費用)が少なく、いろんなフィードバックも得られやすいなというのがblog開始1ヶ月半の実感です。
2006年10月14日
● サーバーも省エネが重要課題に
・世の中がエネルギー消費に敏感になってきたことから、性能が高いから電力消費は大目に見ようということが世界的にも認められなくなりつつあります。
・特にHPC分野ではクラスター・システムやグリッド・コンピューティングのような大規模システムも多く、省エネはシステム設計上さけては通れない考慮点になっていきます。
・PCの例をあげるまでもなく、性能あたりのコンピューター価格が毎年低下していっているのに、電力使用量の方は増加していく現象は、大型システムであればあるほどTotal Cost of Ownershipの面からも耐えられないことです。
・コンピューター・メーカーの目から見れば、"ギガヘルツは去り、次はワットか?"というわけで、IBMがこの夏に発表した“Cool Blue”のようなテクノロジーに、ビジネス競争の差別化の重要な要素として力が入っていくことが予想できます。
・HPC分野に限れば、(ピーク性能/ピーク消費電力)をインデックスにすればほぼ十分という考えもありそうですが、一般には性能、消費電力をどう評価するか案外ややこしい問題のようです。
・評価方法については標準化のための非営利団体SPECも、いまメンバー企業が参加してSPEC Powerというベンチマークを検討しています。
・IBMもホワイトペーパーでこんな議論をしています。→ Power Benchmarking: A New Methodology for Analyzing Performance by Applying Energy Efficiency Metrics (June 2, 2006)
コンピューターも自動車並みに環境に影響する地位になってきたとも言えます。ますます注目されるテーマです。
・特にHPC分野ではクラスター・システムやグリッド・コンピューティングのような大規模システムも多く、省エネはシステム設計上さけては通れない考慮点になっていきます。
・PCの例をあげるまでもなく、性能あたりのコンピューター価格が毎年低下していっているのに、電力使用量の方は増加していく現象は、大型システムであればあるほどTotal Cost of Ownershipの面からも耐えられないことです。
・コンピューター・メーカーの目から見れば、"ギガヘルツは去り、次はワットか?"というわけで、IBMがこの夏に発表した“Cool Blue”のようなテクノロジーに、ビジネス競争の差別化の重要な要素として力が入っていくことが予想できます。
・HPC分野に限れば、(ピーク性能/ピーク消費電力)をインデックスにすればほぼ十分という考えもありそうですが、一般には性能、消費電力をどう評価するか案外ややこしい問題のようです。
・評価方法については標準化のための非営利団体SPECも、いまメンバー企業が参加してSPEC Powerというベンチマークを検討しています。
・IBMもホワイトペーパーでこんな議論をしています。→ Power Benchmarking: A New Methodology for Analyzing Performance by Applying Energy Efficiency Metrics (June 2, 2006)
コンピューターも自動車並みに環境に影響する地位になってきたとも言えます。ますます注目されるテーマです。
2006年09月29日
● ThinkPad バッテリー自主回収のお知らせ
バッテリー自主回収のお知らせが出ています。
なんと、ThinkPadのソニー製バッテリーもリコール対象になってしまいました。
・2005年2月から2006年9月の期間に販売いたしました。以下のいずれかのシステムを購入されたお客様は、今回の自主回収対象のバッテリーをご使用になられている場合がございます。
* ThinkPad R シリーズ (R51e、R52、R60、R60e)
* ThinkPad T シリーズ (T43、T43p、T60)
* ThinkPad X シリーズ (X60、X60s)
ということで、私の持っているX30とX41は対象外になっていました。
・ 念のためレノポのサイトにある"自動ソリューション"で確認すると、
と出てまず一安心。
なんと、ThinkPadのソニー製バッテリーもリコール対象になってしまいました。
・2005年2月から2006年9月の期間に販売いたしました。以下のいずれかのシステムを購入されたお客様は、今回の自主回収対象のバッテリーをご使用になられている場合がございます。
* ThinkPad R シリーズ (R51e、R52、R60、R60e)
* ThinkPad T シリーズ (T43、T43p、T60)
* ThinkPad X シリーズ (X60、X60s)
ということで、私の持っているX30とX41は対象外になっていました。
・ 念のためレノポのサイトにある"自動ソリューション"で確認すると、

と出てまず一安心。
2006年09月12日
● ロスアラモスとRoadrunner
RoadrunnerというとTVアニメの「ワイリーとロードランナー」の主役の一匹、砂漠の中を砂煙をあげて走りまくるあのキャラクター鳥、ロードランナーが有名です。この鳥はロスアラモスのあるニューメキシコ州ではよく知られた鳥のようです。

ニューメキシコ州の州都アルバカーキのAlbuquerque High Performance Computing Centerは、スーパークラスター開発の草分けとして知られています。ここに元祖(?)ロードランナーがあります。これはそのクラスター上に置いてあったロードランナーのマスコット人形。
ロードランナーの猛疾走をあの手この手でさえぎるコヨーテのワイリーのキャラクターの方も何とも楽しいものです。ただ郊外では家の窓をあけておくとコヨーテが入ってくることがあるので赤ちゃんがいる家では要注意とか。
ニューメキシコ州の州都アルバカーキのAlbuquerque High Performance Computing Centerは、スーパークラスター開発の草分けとして知られています。ここに元祖(?)ロードランナーがあります。これはそのクラスター上に置いてあったロードランナーのマスコット人形。
ロードランナーの猛疾走をあの手この手でさえぎるコヨーテのワイリーのキャラクターの方も何とも楽しいものです。ただ郊外では家の窓をあけておくとコヨーテが入ってくることがあるので赤ちゃんがいる家では要注意とか。

